第7話 プレク城館(前編)
荘厳な景観が視界を覆い尽くしている。
門を通った先に現れたのは、プレク城館。
煌びやかな装飾と物々しい雰囲気を兼ね備えた、第一城壁都市の中枢だ。
これほど立派な城館でも、首都ではなく地方の一部だ。
アルタフェルドという国が、どれほどの規模であるかを物語っている。
「最終ダンジョン……?」
「いやいや。まだ序盤だよ。これ」
「最近のゲームはこんなにすげえのか……?」
瞠目するカリナに応じながらも、フミカも驚いている。
エレブレ3の時でもボリュームや作り込みすげえなんて思っていたが、4でさらなる進化を果たしていた。
この規模のダンジョンがいくつもあると考えると、ワクワクが止まらない。
「早速入ってみようか」
フミカが正面の、重厚な扉に手を触れる。
が、開かない。
目の前にポップアップ画面が現れた。
「内側から鍵がかかってるみたい」
「ここまで来て入れないの?」
ミリルが鍵穴を覗き込んでいる。
「こういう時は迂回ルートがあるんだよ。必ずね」
「だったらちんたらしてないで早く行こうぜ」
「あ、待ってよ!」
フミカの制止を聞かずに、カリナが走り出す。
プレク城館の側面には、騎士を象った石像が並べられている。
「そんなに急ぐと」
「はっ、敵のこと心配してんのか? 何が出たってあたしの魔法でイチコロ――」
ぐしゃり、という音で返答が遮られる。
カリナが石像の振り下ろした剣に、叩き潰されていた。
「……これ、どうなるの?」
通常のマルチプレイでは、協力者が死んだ場合、元の世界へと帰還――メタ的に言えば、ホストとのマルチプレイが終了する。
しかしミリルは、世界を同期したと言っていた。
途中まで枝分かれしていたフミカとカリナの世界を、一つに纏めたと。
「すぐ戻ってくると思うよ」
とミリルが言った直後、
「くそがああああ!」
キレながらカリナが走ってきた。
楔の花でリスポーンして、戻ってきたのだ。
「ったく、なんだよあの石像! いきなり襲ってきやがって!」
誰かが死んでも、世界の進行は止まらないらしい。
例え協力者が死んでも、ホストが生存しているなら、同じ状態のまま協力者を再召喚できる。その省略化バージョンとでも考えればいいか。
これはこれで攻略に使えるかもしれない……なんて考えている間に、カリナがまたダッシュしていた。
「あ、カリナ!」
「あの石像のことはわかった。もう引っ掛からねえぜ!」
宣言通り、カリナは石像トラップを見事に躱した。
横並びの石像からランダムで繰り出される攻撃を、完全に見切って。
迂回ルートと思しき扉の前で、上から降ってきた巨大なカエルに潰されて死んだ。
「あちゃー……」
フミカが頭を抱え、ミリルが笑った。
カエルを魔法で蹴散らした後も、バリエーション豊かな死がカリナを襲い続けた。
扉の先にあった、地下階段の一部が抜けたことによる転落死。
降りた先にいた、デカい盾持ちのホブゴブリンに壁へと押し付けられた圧死。
通路の途中で湧いて出た、骸骨兵士による暴行死。
通路終わりに仁王立ちしていた、騎士に叩き斬られた斬撃死。
「なんでこんなに死にまくらなきゃなんねえんだよ!」
二人で連携して倒した騎士の傍で、カリナが憤慨している。
「だって明らかに怪しいところを突っ込んでいくんだもの」
怒り心頭のカリナを、フミカは不思議に思う。
あれだけバレバレなのにわからないものか? と。
「そんな兆候どこにもなかったろ!」
「いやちょっと考えればわかると思うけど……」
このぐらいなら、一目見ただけでわかるレベルだ。
石像がいきなり動き出すことも、カエルが降ってくることも。
階段が崩れることも、突然敵が湧いてくることも。
通路出口に強敵が配置されていることも、フミカは察知していた。
数多の死にゲーによって鍛えられた経験によって。
「お前は、あたしが考えなしのバカだって言いてえのか?」
カリナの鋭い視線を、フミカは受け流す。
「そんなことない……よ?」
目は水を得た魚のように泳いでいた。
「お前は嘘が下手なんだよ、昔からな」
「うっ」
確かにそうだ。
昔からよく言われていた。
糾弾を誤魔化すため、フミカはカリナをおだてた。
「よく覚えてたよね、そんな昔のことをさ」
いくら幼馴染だったとはいえ、親交が途絶えた人間のことなど忘れてしまうのが普通だ。
カリナの記憶力を褒めると、なぜか彼女は背を向けた。
「……」
謎の無言タイムを挟んだ後、提案してくる。
「だったら、お前が先導しろ。あたしより賢いって言うんだろ?」
「じゃあ見せてあげよう。私のゲーマーとしてのすごさをね!」
フミカは胸を張って、先を歩き始めた。
※※※
大言壮語かとも思ったが、正直感心させられた。
カリナは、先行するフミカを少しだけ頼もしく思えている。
彼女が突然足を止め、手で制してきた。
「ストップ」
「なんでだ? 何もなさそうなのに」
「何もないから怖いんだよ。だいたいこういう時は――」
フミカは通路の上を見上げて、
「ほらね、いた!」
天井に、スライムが張り付いているのを発見した。
杖を構えたカリナを止めて、フミカは所持品から石を選択、投擲。
石が命中したスライムが落ちてきて、棍棒で絶命させられた。
先程からこんな感じで、初見殺しを回避できている。
「よくわかったな」
「これもゲーマーとしての経験の賜物だよ」
得意げなフミカの横顔を見て、懐かしい気分になる。
遊んでいたおもちゃをなくしてしまい、途方に暮れていたあの時も、フミカは笑顔で見つけ出してくれた。
忘れていた……忘れようとしていた記憶がとめどなく溢れてくる。
(ホント、こいつは昔から……)
「あ、毒だまりだ」
フミカの足が止まる。部屋全体に毒々しげな、紫の液体が敷き詰められている。
遠くに宝箱が見えるが、行けそうにない。
幸いにして道自体は存在しているので、行き止まりというわけではなさそうだ。
「今はまだ取れないんだな。先に行こう」
カリナは惜しむことなく先へ進もうとして、
「よいしょっと」
躊躇いもなく毒だまりへ足を入れたフミカに、狼狽する。
「ふ、フミカ!? 何やってんだ!?」
「何って、宝箱があるじゃん」
「で、でも毒なんだろ!?」
フミカの頭上に表示されているライフゲージが減っていく。
宝箱へ辿り着くよりも早く、ライフが尽きることは明白。
しかし怖じる様子もなく、フミカは毒だまりを進んでいく。
「お、おい――そのままじゃ!」
「ん、そろそろかな」
あろうことかフミカは立ち止まり、ポーチを探る。
そして、瓶を取り出した。花蜜の瓶だ。
それをごくごくと飲む。毒だまりの真ん中で、平然と。
「ぷはぁ! スリップダメージを受けながら飲む花蜜はたまらないねぇ!」
「頼もしくなりすぎだろ……」
下水に浸かりながら水を飲むようなものだ。正気の沙汰とは思えない。
唖然とするカリナの前で、フミカは見事に宝箱を回収。
毒のダメージを受けながらも、死なずに戻ってきた。
※※※
「戦利品、戦利品っと」
じっくり見る暇がなかった回収物を、フミカは見分していた。
なぜかカリナがショッキングな表情をしている。
中身が欲しかったのだろうか。
もちろん、カリナ向きであれば進呈するつもりではいた。
が、これは戦士向きの装備だ。
近接メインの、フミカ向きの鎧。
「おー、いい装備だ。ようやくこの服とおさらばできるよ」
フミカの衣装は案内人の服一式と、頭部に被っている雑兵の兜。
道中いろいろな装備を拾ったが、どれもしっくりこない性能だった。
だが、このアーマーは違う。重量と防御力のバランスがいい。
装備が重ければ重いほど防御力は増すが、機動力が犠牲になる。
紙装甲の機動型、重装甲の防御型。
どちらもメリットとデメリットがある。
フミカは、その折衷案……機動力と防御力を両立したバランス型が好みだった。
「装備、変えるのか?」
「うん。いい装備が手に入ったからね」
「そっか……」
なぜかカリナはしょんぼりしている。
仲間の装備が強くなるのは、喜ばしいはずなのに。
疑問符を浮かべながらも装備を変更しようとして、
「シミラールック……」
という呟きが耳に入る。
そこで気付いた。
案内人のみすぼらしい服と、カリナの魔法少女チックな衣装のカラーリングが同じことに。
合点がいったフミカは、装備画面を閉じた。
「どうしたんだ?」
「いや、カリナが何を考えてるかわかってね」
「え?」
びっくりするカリナ。
そうだろうそうだろう。ゲーマーの推理力を舐めないで欲しい。
フミカは胸を張って答える。
「パーティーの統一感を出したかったんだよね!」
「……は?」
チームや部隊でカラーリングを合わせることで、統一感を出す。
あらゆる共同体においてよく使われる手法だ。
もちろん、ゲームとて例外ではない。チームカラーを決めて、独自色を出しながら遊んでいる人も多いだろう。
フミカはそういう連帯感とは無縁だったため、気付くのが遅れてしまった。
しかしカリナは陽キャ的ヤンキーだ。
そういうことを大事にするタイプなのだ。
「いや、そういうわけじゃ……」
「いいよいいよ。どうせ機動力落ちちゃうしさ。強敵の前で着替えればそれでいいし」
今のところ、装備のせいで詰まったことはない。
さっきの毒だまりを難なく突破できたのも、装備が軽かったおかげだ。
通常のゲームであれば防御力は大切だが、死にゲーにおいて事情が異なる。
雑魚敵の一撃すら無視できないダメージ量なのだ。
ならば、最初から防御など捨ててしまおう、という発想のプレイヤーも存在する。
慌てて装着する必要もないだろう。
装備はいつでも変えられるのだから。
「まぁ、お前がそれでいいならあたしも言うことないけど」
「こういう機会はなかなかなかったからさ、楽しいよ」
「た、楽しい……? そっかぁ」
初心者の面倒を見ながら、進んでいくのはとても楽しい。
仲間と連携しながら冒険するのも。
ルンルン気分で歩くフミカと、満更でもない表情のカリナ。
「あー、これが噂の鈍感系って奴? 都合は良さそうだからいいけど」
二人の様子を見て、ミリルが呆れていた。
途中で出会った敵を倒し、罠を回避し、時には死亡しながらも、フミカたちは中継の楔の花まで辿り着いた。
プレク城館客間。
経験値をレベルへと変換し、手に入れたポイントでステータスを強化する。
レベル14のフミカと、レベル10のカリナは廊下の先を見つめていた。
「中も豪華なんだな」
「うん。けど荒廃してるね」
豪奢だが、退廃的。高級そうなカーペットは色あせて、壁も剥がれかけている。
地下通路から薄々感じていたことだが、プレク城館内部は多数の魔物に占領されていた。
警備に回っている兵士たちが、魔物を駆除する様子もない。
ただただ侵入者である自分たちを狙ってくるだけだ。
「あのおっさんが言ってた通りだな。身体は不滅でも、心は違うって」
「案内人のこと?」
「ああ。せっかくいい国だったのに、とても残念だって。お前も聞いたんだろ?」
「それがその……」
撲殺しちゃっているので、聞いていないとは言い辛い。
いや、それ自体はいいのだが、その理由を話すのはちょっと。
「そういやお前の服、あの案内人と――」
「とーにかく、ここの人たちは正気じゃないってことだから、なおさら気を引き締めて行こう!」
カリナの背中を押す形で進んでいく
「お前もだいぶヤバかったけどな……」
「何のこと?」
「いやなんでも。早速お出ましだぞ」
綺麗で汚い廊下を歩いていると、先を進む数人の兵士を発見した。
「じゃあ試すとしようか」
「了解」
フミカは盾を取り出し、カリナはショートソードを取り出した。
「おらあああ!」
フミカが突撃。死にゲーでは、例え雑魚敵が相手でも慎重な戦闘が要求される。
が、それは単身での話だ。
仲間がいるなら、話は変わる。
振り返ろうとした敵へ一撃食らわせて、防御しながら後退する。
先制攻撃をしたフミカに、ヘイトが集中している。
四体から放たれる乱雑な斬撃を、フミカは盾で受け続けた。
タイミングよく力を抜いて、攻撃の合間にスタミナを回復させながら。
「今だよ!」
「わかったぜ!」
兵士たちの背後へ回り込んだカリナが剣で一突き。
暗殺だ。
無防備な背中であれば、戦闘状態でも暗殺ができる。
一体、二体、三体。
連続で暗殺したカリナへと、最後の一体が狙いを変える。
「終わりッ!」
フミカはその脳天へと棍棒を振り下ろし、暗殺。
「いよっし、作戦通り!」
「こんなスムーズに行くもんなんだな」
小剣を持ったカリナが驚いている。
実践したのは、あらゆるゲームで使われるオーソドックスな戦術だ。
一人が敵を引き付けている間に、もう一人が攻撃する。
防御するタンク役と攻撃するアタッカー役が、それぞれの役割を全うするのだ。
「こういう、死にやすいゲームでは結構大事なんだよ」
見知った場所ならともかく、初見のダンジョンでの共闘は、慎重を期すに越したことはない。
本来のマルチプレイでは、協力者がボス撃破前に死亡してしまうと、撃破報酬が貰えなくなる。
ゆえに、他ジャンルのゲームに比べて、妙な緊張感があったりするのだ。
極稀に、ものすごく上手なプレイヤーが敵をちぎっては投げの無双状態になることもあるのだが。
「やっぱりお前はすごいな」
「え? ゲーム好きなら誰でも知ってる初歩だよ」
謙遜しながらも、フミカは褒められて嬉しかった。
いや、カリナと……友達と遊ぶのがとても楽しい。
もちろんソロはソロなりの楽しさがあるが、マルチのそれはご無沙汰だった。
しかもゲーム世界に閉じ込められた現状では、テーマパークで遊んでいるようなものだ。
本当なら今頃、学校で退屈な勉強をしているところなのに。
(――本当に、楽しい)
にこやかな笑顔で歩くフミカを、別種の笑みでミリルは見つめている。
「エンジョイしてるねえ」
「うん。普通に感謝したいぐらい」
「うんうん。いいよ、とてもいい」
ミリルとの会話を終えると、談話室が目に入った。
扉を開けた先には、ドレスを着た金髪の少女がいる。
「こんな敵もいるのか?」
「いや、ロックオンできないっぽいから、NPCだと思うけど」
注視してもゲージが出てこない。
フミカたちに気付いたのか、少女が微笑んできた。
にこり、と。
「かわいっ」
「……どこが?」
カリナの琴線には触れなかったらしい。
だが、紛うことなき美少女だ。
城館の姫だろうか。
今頃ネットでは、城館の姫が可愛すぎる件とか言って盛り上がっているだろう。
純白の、豪華なドレスに身を包んだ、推定お姫様が手招きしてくる。
フミカは誘われるまま、ふらふらと近づいた。
「ホントカワイイ。何この子。スクショ機能が使えないのが惜しいわ」
この子の画像がSNSに出回っていることは想像に難くない。
「そんな子のどこがいいんだよ」
不思議とカリナが苛立っている。
フミカはすっと姫の前に立ち、柔らかな髪へそっと触れる。
現実ではセクハラだが、ゲーム内ではセーフだ。
「このきめ細やかな金髪を見てよ。美しいにも程があるよ」
「……あたしだって、手入れは欠かしてねえし」
小声でよく聞こえないが、どうにもカリナの好みではないらしい。
名残惜しいが、手早く会話を済ませた方が良さそうだ。
フミカは姫に声を掛ける。
「こんにちは!」
「あらあら、可愛らしいお嬢さん。プレクへようこそ。どういった御用向きでしょうか?」
「あー、えっと、お散歩です!」
「……本当ですか? もっと違う、大事な使命があるのでは?」
ずい、と姫が踏み込んでくる。
密着する寸前ぐらいの近さで、姫が耳元へと顔を近づけてきた。
「どうか、お教えくださいな、旅のお方。何をしに来たのか、本当のところを」
「く、楔を壊しに来ました」
「おいなにデレデレしてんだ!」
囁きに抗えず、正直に目的を白状する。
まぁ、と姫は愛らしく手を叩き、
「それはとても、素晴らしいお考えですわ。そのように崇高な使命を持って旅をするなど、わたくしにはとても真似できません。あなた様のような偉大なお方と出会えて、ミラは光栄ですわ」
「ミラちゃんか。素敵な名前だね」
「どこがだよ」
外野がうるさいが気にならない。
ミラ姫の蠱惑的な癒しボイスと、その麗しい容姿に夢中で。
「偉大なあなた様に一つ、お願いしたいことが。どうか、お聞き頂けますか」
上目遣いでお願いしてくるミラ姫。どうやら友好的なNPCらしい。
聞かない理由はなかった。
イベント的な意味でも。欲望的な意味でも。
「何かな?」
「抱擁を交わさせて頂きたく」
「抱擁……? ハグってこと?」
「ええ。あなた様の勇気を、わたくしに分けて欲しいのです。はしたないでしょうか……」
「ああっ!? んなこと許すわけ――」
「もちろん、構わないよ」
努めてイケメンなボイスを、フミカは喉の奥から捻り出す。
「おいバカフミカ何言ってんだ!」
「では、遠慮なく――」
花のようないい香りが鼻腔をくすぐる。
しなやかな腕が背中へと回される。
何よりアレの感触がヤバい。
学術的な言い回しをすれば胸部が。
アホな言い方ならおっぱいが。
うはー、とその柔らかで心地の良い感触を堪能していると、ミラ姫が囁いてくる。
「ところで、あなた様にお伝えしたいことがあります」
「何かなミラちゃん」
「楔はわたくしのもの、ですので」
「え――うっ!?」
どすっという音と共に、腹部へ痛みが迸る。
口から血がこぼれて、ミラ姫の純白のドレスを汚した。
ゲームナイズされた痛みだ。激痛というわけではない。
吹き出た血も、ただの演出に過ぎない。
それでも、かなりの衝撃だった。
自分の腹部を、ミラ姫が隠し持っていたナイフに刺されたという事実は。
「ぐかっ……」
声にならない叫び声を上げながら、膝をつく。
ライフゲージが尽きているので、回復しても間に合わない。
「てめえ何しやがった!」
カリナが杖を構える。
唐突にミラが消え失せた。
次の瞬間には、カリナの背後へと回り込んでいる。
ミラにカリナの首が折られるのを目撃しながら。
フミカは出血多量で死亡した。
――楔はわたくしのもの。わたくしだけのもの。
他の誰にも渡しません。邪魔をする者には、等しく死を与えましょう。
何度でも、何度でも。
命は無限にあるのですから。楔が、ある限り。
「……」
楔の花の傍でフミカは寝転がっていた。
隣では、同じようにカリナが仰向けになっている。
しばらく放心していると、カリナが沈黙を破った。
「なぁ、このゲームって実はクソゲーだったりするか?」
「断じてクソゲーではないけど、さっきの殺し方はだいぶクソだと思う」
まさかのハニートラップだとは。
今頃、鼻の下を伸ばしたプレイヤーたちの悲鳴が、飛び交っているに違いない。
「何やってんだか」
二人を見比べて、ミリルが呆れ返った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます