初恋のギャルに無慈悲に捨てられた俺、傷心していると学年で一番の美少女に拾われてお持ち帰りされた

砂乃一希

第1話 別れは突然に

「それで話って一体なんだ?」


「……翔吾」


ある日の昼休み、俺こと大瀬良おおせら翔吾しょうごは付き合っている彼女の白津しらつ杏奈あんなに呼び出されていた。

杏奈はいわゆるギャルというやつで髪を金髪に染めていて、制服も校則に引っかかってるとよく注意されるくらい着崩しているしお洒落にも気を使っている。

そしてクラスでもかなりの美少女だった。


「単刀直入に言うよ。別れたいんだけど」


「は……?」


別れるだって?

俺達はまだ付き合って一週間ほどしか経っていなかった。

しかも特に喧嘩のようなものはした記憶がない。


「急にどうしてそんな話になったんだよ」


「だってあんたのこと好きじゃないし。新しいカレシ出来たからさっさと別れたいの」


「は……?俺に告白してきたのは杏奈だろ!?」


付き合うことになったきっかけは杏奈の告白だった。

それなのに新しい彼氏が出来たって?

本当に意味が分からない……


「あーあれ罰ゲームなんだよね。あたしがあんたみたいな冴えない陰キャを好きになるわけないじゃない。あたしは付き合うならイケメンじゃないと嫌なの」


「おま……何言って……」


罰ゲーム……だって?

じゃあ舞い上がってたのは俺だけだったってことか……?

杏奈の言葉が深く俺の心に突き刺さる。


「そんなわけで、早くあたしら別れよ」


「……あ、ああ」


震える声でなんとか絞り出す。

目の前が真っ暗になった。


「きゃはは!やっと別れられる!嘘でも陰キャと付き合うのはしんどかったわ!あんたみたいな奴が嘘とはいえあたしと付き合えたんだから感謝してよね」


「…………」


もはや言葉すら出ない。

俺が呆然としていると後ろから甲高い笑い声が複数聞こえてきた。

振り返るとそこにいたのは杏奈の仲の良いグループだった。


「あー陰キャくん捨てられれてるじゃーん!カワイそー」


「いやいや、杏奈と付き合えたんだからラッキーっしょ」


「ちょっと付き合ったくらいで名前呼びとか、きしょすぎ!」


「まじウケる〜!」


甲高い声と共に周りを取り囲まれる。

明らかに向けられる嘲笑の笑みと侮蔑。

その一つ一つが俺の心の何かを壊していく。


「あ!あれ音取くんじゃない?」


「え?本当だ……亮くーん!」


杏奈が嬉しそうに叫ぶ。

杏奈に呼ばれやってきたのはクラスメイトの音取ねとりりょうだった。

いわゆる陽キャイケメンで勉強も運動もトップクラス。

クラス内だけでなく学校でも確かな地位を築いている人だった。


「どーした?杏奈。ん?こいつは……確か杏奈の元カレだっけ?」


「もう亮くんたったらこんなやつ元カレなんかじゃないってば!罰ゲームでだけのただの他人だよ!」


もはや散々な言われようだ。

でも俺に言い返すだけの余裕は残っていなかった。

心が完全に折れてしまったのだ。


杏奈の無茶苦茶な主張に音取は笑う。

こちらを覗く音取の顔は笑っていて目には嗜虐心しぎゃくしんあざけりで満ちていた。


「はは、そっか。おい、クソ陰キャ。もう二度と杏奈に近づくんじゃねえぞ」


「きゃはは!亮君ってば言い過ぎ〜!」


俺は膝から崩れ落ちうなだれることしか出来なかった。

耳には杏奈達の笑い声と去っていく足音だけが鳴り響いた────


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