お前は誰なんだ?
俺は結局あれから二日間も寝ていた。完璧な風邪だった…クソっ。
俺が二日ぶりに投稿すると、クラスの雰囲気がなんだかおかしかった。
「あぁ?なんだ?エリー嬢は一人か?ファルはどうした?きてねぇのか?」
珍しく一人で席に座り本を読んでいるエリー嬢に俺が声をかけると、周りがざわついた。
「あら、レント様。ちょっと此方にきていただきますか?」
「ん?おう、わかった」
俺はなんだか居心地が悪いクラスから、エリー嬢と一緒に出て行った。
雑談室へと到着した俺たちは入り口のドアを少し開いたまま向かい合って着席した。
着席と同時に俺は 防音魔法 を発動させる。多分聞かれたくねぇことなんだろうからな。
「ご配慮ありがとうございますわ。」
「いや、いいんだけどよ…ありゃなんだ?ざわついてたけどよ」
「あれは…わたくしも理解できてないことが多いのです。」
エリー嬢はそう言い、俺にここ二日にあったことを話し始めた。
…うーん。皆が馬鹿だった。
話を聞いた俺は、終始呆れることしかできなかった。
だってよ?エリー嬢がファルに言ってることって至極真っ当なことじゃねーか?
子供扱いされてるように思うのか、ただ鬱陶しいのかは知らねーが…それに対してエリーが悪女っておかしくねーか?
うーん…なんかもっとあるような気がすんだよな。
「なぁ、ほかになんか心当たりとかってねーのかよ?」
「いえ…わたくしにはそれしか心当たりがなくて」
「でもそれって周りがそう言ってるからそう思ったんだよな?」
「えぇ、まぁ。近づいて来る人達が皆、これ見よがしに話してゆきますので」
エリー嬢のそばにわざわざ近づき、いろいろな話をしてくれる奴がいるらしい。
まるで鳥だな。耳元でピーチクパーチク…いや、これは鳥に申し訳ないか。あいつらは最高に綺麗な声で鳴くからな。
『王子に対して偉そうだから嫌われるんですのよね』
『王子も辟易してると聞きましたわ』
『毎回毎回陳言ばかりで一緒に居たくないとも聞きましたわ』
『常に微笑んで居るなんて人間には出来ないと思うので人じゃないのかも知れないわ』
そんな言葉をここ最近特に言われるらしい。
ファルやバルはその話を聞いても反応しないし、反応する時はこぞってエリー嬢に対し説教をしだすらしい。
「んー。ファルってそんな人間だったけなぁ?」
「『人間誰しも変わるものだ』とわたくしは言われましたわ」
「まぁ、間違っちゃいねーけどよ…何か変じゃね?」
「変…ですか?」
ただ俺はファルがそんな男になったと信じたくなかったのかもしれない。
婚約者のエリー嬢に嫌な思いをさせるような男だったと思いたくなかった。
「だってよ、聖女様と関わってからファルがおかしくなってんだろ?でも、あのファルだぜ?聖女様を選ぶ理由がわかんねーんだよ」
「まぁ、それもそうなんですけど…」
「今のファルはまるで子供じゃねーか、脳みそがおかしくなった以外で退行理由って無くねーか?」
「わたくししか聞いていないからと言ってあまりそう言った事を言うのはどうかと思いますわ。」
「いや、だって今のファルおかしいだろ」
俺は思うんだ。
冷静沈着だったファルが最近、多動的になってきたなと。
いつも微笑んでいたファルが怒りっぽくなったなと。
俺はその変わり様は病気か薬でしか見たことがなかった。
『なぁ、エリー嬢。ファルを治癒士にみせたほうがいいんじゃねぇか?』
エリー嬢が俺に相談している内容と、全く違う話をしても良いのか俺は悩む。
そもそも、ファルと聖女がお似合いだと噂がたってるのを放置してんのもどうなんだ?
ファルは何考えてんだ?
あれは 本当に ファル なのか?
エリー嬢には俺もファルと話してみると言い、別れた。
エリー嬢の話だけ聞いても訳わかんねぇし、ファルの話も聞いときたかったからだ。
(俺、何か忘れてんだよな。)
俺は考えすぎて頭痛くなってきた。
校内を歩いてると、
ファルとバルとジュノと聖女様が一緒に並んで談笑して居るところを見つけた俺はそのまま歩いてクラスへと帰った。
そして今日から夏休暇となる。
俺は神殿長から呼ばれてるので久々に学園から出て神殿へと向かう馬車に乗っていた。
神殿へと近づくに連れ、安心するのかしらねぇが頭痛が無くなっていく。
神殿へと到着した頃には体の不調は全く無くなっていた。
(やっぱり生まれ育った場所はノンストレスってやつか?)
そう思いながら馬車から降りた俺は、神殿長の部屋へと向かう。
神殿長の部屋の扉に触れた瞬間、何故か俺の体は廊下の壁へと吹き飛ばされたのだった。
意識が朦朧としてる中、神殿長がその扉を開けて中から出てきた。
吹き飛ばされた俺をみて目を見開いた後、みたこともない形相をしたところまでは覚えて居る。
その後の事は覚えてねぇ。
俺は意識を失ったのだ。
『皆、アレが反転した。全ての神殿へと通達してくれ。』
神殿長が何か言ってた気がする。
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