第2話 お前何なんだよマジで
「お前はわたくしをいつまで待たせていますのっ!」
帰ったらなんか顔を真っ赤にさせ、俺に閉じたセンスを向けてキーキー叫んでいる女がまだいた。
「わた、わたくし…お、お、お、お、お花を摘みたいのですわ!今すぐに場所を教えなさいっ!」
…こいつはなんなんだ?花?この状況で花を摘みたいだと?頭の中に花でも咲いてんのか?
「は、早くしなさい!は…早くぅ…」
なぜかどんどん言葉が尻すぼみになっていく女を見ながら俺はため息を吐いた。
「しらねぇよ。花?摘みたいなら外に勝手に行きゃぁいいじゃねーか」
俺がそういうと、女が絶句した。なんだよ、予想外の返しをされてびっくりしてるみたいな顔して…俺の方がびっくりしてんだよ。
「…えぇっと…。」
いきなり目を泳がせながらしどろもどろになる女に俺はさらに言葉を重ねる。
「そもそもお前さぁ、俺に助けてもらったんじゃねーのかよ?別に助けなんていらなかったからお礼も言わないってか?挙げ句の果てに花摘みに行きたいから場所を教えろだぁ?お前何様なんだよ?」
俺が言いたいことを一気に言うと、女は真っ赤な顔を真っ青にした後に少し俯き『た、助けていただき…ありがとうございましたわ』と言ってきた。
「そ、その…お花を摘むと言うのは…おトイレのことですの…」
しどろもどろになりつつもそう言った女の顔は相変わらず真っ赤でその瞳は潤んでいた。
「…すまん。この家を出て左側にある。」
それを聞いた俺は流石に気を削がれ、左手で顔の半分を隠しながらそう言ったのだった。
そんな感じでお互いの初コミュニケーションは幕を閉じた。お互いある意味最悪な思い出となること間違いなし…だな。
女がトイレから戻ってきてからお互いに色々話した。女はちょっとした事情でこの森に一人で入る事になったという。
「いや、ちょっとした理由ってなんだよ!迷いの森だぞ!?お前わかってんのか?」
「ちょっとした理由とはちょっとした理由ですわ!お前には全く関係のない事ですの!黙秘いたしますわ!」
「別に黙秘してもいいけど、俺は面倒ごとは嫌いだぞ?絶対に巻き込むんじゃねーぞ?いや、巻き込まれる気がする…お前今すぐでてけ!」
「な、なっ!?こんなか弱い淑女に向かって出ていけといいますのっ!?ちょっとは助けてくれてもいいんじゃなくって?!」
「なんで俺が見ず知らずのお貴族様を助けなくちゃいけねーんだよ!お前めっちゃ厚かましいな!」
「あら、わたくし貴族じゃなくってよ?」
女はそう言って、なぜか偉そうに顎を少し上げ挑発的な顔をしていた。…いや、ぜってー嘘じゃん。
「嘘だ!」
「本当ですのよー」
「どこの世界に髪の毛がそんなにツヤツヤで長くて、ドレスを着て扇子を使いこなして立ち居振る舞いに品があって、おほほほって笑う平民がいんだよっ!」
「ここにおりますわ」
「お前以外だよ!」
「存じ上げませんわ」
「あぁそうだろうよっ!俺も32年生きてきたが一人も知らねーよ!」
「あら、32歳なんですのね。わたくしは16でしてよ」
「…嘘…だろ?」
「これに関しては嘘偽りないですわ」
「…まだほんの子どもじゃねーか。」
俺は大きなため息をついて左手で顔の半分を覆い天を見上げた。子供は追い出せねーじゃねーかよ…くそっ。
そんな感じの話し合いの後、俺はこの女を保護する事にした。本当に嫌だが、出ていかねーんなら仕方ねぇ。
あれから一週間が経ち、俺とエリーはなんだかんだ上手い事生活していた。
ただ、一つ言いたいことがあるとすれば…
「お前!なんで卵焼きが風に吹かれて飛んでいくんだよ!影も形もねーじゃねーかよ!」
「気づいたらそこにおりませんでしたのよ。お逃げになったんじゃなくって?」
「どこの世界に逃げる卵焼きがいんだよ!」
「ここに先ほどまで降りましたわ」
料理を作らせれば炭にすらならないで風に乗り消えてゆくし…
「おーまーえー!」
「あら?なんですの?」
「これは何か知ってるか?」
「わたくしが必死に洗ったあなたの服ですわ」
「もうこれ服じゃねーよ!ただの布切れだよ!」
「あら、下着にでもすれば丁度いいんじゃなくって?」
「しねーよ!お前からみた俺には足が何本ついてんだよ!」
洗濯をしてくれたと思えばただの布切れになるし…
「お、おまっ」
「なんですの?」
「大丈夫か!?盗賊でもきたんだろう?ちゃんと逃げたり隠れたりすることはできたんだな」
「誰もきていませんわ」
「はぁ?じゃぁこの荒れようはなんだよ」
「わたくし掃除をしてみましたの」
「すんなよ!できる気がしてんじゃねーよ!」
掃除をしたというが明らかにする前よりも部屋が荒れているし…
「できないんなら俺に教えてって言えよ!」
「わ、わたくしがお前に教えを乞うですって!?」
「なんでびっくりしてんだよ!」
「…考えてもいませんでしたわ」
「お前なぁ…ッチ。仕方ねぇな、教えてやるからこっちこい」
「お前に教えられた後にわたくしが上手くできなくても、鞭で叩かないでくださいましね」
「叩かねーよ!こえぇな!」
聞かれれば教えてやるといえばキョトンとした顔をしてるし…
いつの間にか俺は自分の容姿のこととか、こいつの身元とかそういった事は気にならなくなっていた。
いちいちすました顔をして気に触るけど、自分で考えて頑張っていることは見ていてわかるので別にいい。めっちゃ腹たつけど。
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