29 ダンジョン
さてダンジョンだ。今日は10階からスタートだ。昨日のボス部屋の奥に、魔法陣で移動すると上階に登る階段に行くドアがあった。
11階からはパズル部屋だった。重石を置いていないと進めない通路とか、魔物を順番に倒さないと通れない通路とか、ヒルが落ちて来るとか、水が溢れて来るとか、岩がゴロゴロ転がってくるとか、火炎がランダムに落ちて来るとか。
いやもう何の罰ゲームだろう。コレ失敗したら死ぬんだろ? オレの祈りとかヒールとか、使えんの? ふざけてんの?
しかし、パズル部屋はパズルでしかなく、開始地点まで戻される仕様だった。
ナニコレ、マジふざけてんの?
オレ、避けるの失敗して、ユベールが庇ってくれて、ぐったりとしてしまって、取りすがって泣き叫んだんだ。
「ユベール! 死ぬな、オレどうすればいいんだ。一緒に死ぬーーー!」
必死で生き返ってーって、お祈りしたんだ。
お陰で『復活の祈り』を覚えてしまった。
いや、良かったのか? 仕様も優しいし。
しかも、この祈りは超優良仕様なんだ。先に祈っておくと自動で蘇生しちゃうんだ。
こんなの禁呪の部類に入るんじゃないか?
いいのか? オレが使っても。
《ひとりにのみ有効。新鮮な状態でのみ有効》
あ……、そうなの? 新鮮って……。
そういう訳でユベールに祈ったけど、いつ迄持つのかな。
ユベールが「エルヴェ様!」って怒った顔しているけど、他にどう使えばいいんだ?
20階のボスは黒っぽいもやもやの煙のようなボス、パズル魔人だ。
頭に星のマークのシルクハット、胴体に黒にキンキラキンの星のマークを張り付けた黒いもやもやが、オレ達を見て構えると甲高い声で言った。
「さあ、俺さまの難問が解けるかなー」
もやもやは胸を張って「ひとーつ」とやりだした。
「生まれた時は背が高くて、歳を取ると縮んでいくもの、なーんだ?」
これなぞなぞだよね。
『ロウソク』
あっさりハナコが答える。
「ジョーの母親は3人の息子を生みました。1人目がボブ、二人目がハリー、3人目は誰でしょう?」
『ジョー』
「想像してみて。あなたは屋敷の中にいて、周りは火の海になって燃えています。どうすれば逃げられますか?」
『想像をやめる』
何でそんな簡単ななぞなぞを出すんだー!!
いや、自分で解いてないけど……。ハナコとタローすごいな。
最後の難関、それはナンプレだった。8分でキレキレな超難問。
オレ、ナンプレ得意なんだよね。見ろ、5分で解けたぞ。
その部屋の黒っぽいもやもやのボスは煙となって昇天した。
宝箱には素早さが上がる腕輪と、知力が上がる木の実、金貨袋と、何故かロウソクが何本も入っていた。
魔法陣の部屋の隅で結界を唱えて昼食にする。
「土よ、壁出現」
一応通りがかりの人に見られないように壁を作っておく。
テーブルを出して、市場や店で買ったものを並べて、コンロでハナコがスープを作ってくれる。タローが肉を切り分け、野菜をサラダにしてくれる。
食事をしていると、
「なんかいい匂いすんな」
「腹減ったー」
「次は鳥だから焼いて食おうぜ」
と、冒険者たちが3組くらい通って行った。
そっかー、次は鳥か。
そういう訳で食事を終えると、次の階向けて登って行ったのだ。
***
21階は開けた起伏のある野山のような場所で、真ん中に広い水場がある。そこを鳥が走っている。「ケーー! クエーーコッコ!」と鳴きながら。
追いかけるとバサバサと飛んで逃げて行く。
鶏みたいにトサカがあって緑の羽が綺麗な鳥だ。それより一回り小さな鳥や、大きな鳥もいて、同じように「ケーー!」と鳴きながら逃げて行く。
ユベールがベルトのポーチから弓を取り出して狙いを付ける。
ヒュンヒュンと2羽射落とすと、タローが捕まえに走って、ハナコが処理する。
「これ美味いの?」
「ダンジョン産の鳥は美味しいそうです」
「そうなんだ」
のんびりしていると鳥が群れになってバサバサとやって来て襲い掛かって来た。
上空から旋回してキーンと音が出るくらいの速さで襲い掛かって来る。嘴が真っ直ぐ迫って来る。うわっ、たまったもんじゃない。
『アースガード』
たくさん降って来るからすり抜けてくる奴もいる。鳥の嘴は鋭くて、ギザギザしていて突き刺さって痛い。足でバババッと蹴るのも痛い。
『ヒール』をして逃げてまた『ヒール』をして逃げて。はあ、逃げてばかりだ。
鳥の階は出口の辺りで2、3羽倒して上の階に逃げることにした。
上の階に行くにしたがって鳥は大きくなっていく。
ダチョウとかエミューみたいなのが居て大きな卵があった。卵を取って逃げるとドッドッドと大群で追いかけて来る。向こうの方が足が速い。
お札を投げるみたいに、土やら水やら風でスクリーンを作って逃げた。ドッと足蹴りが来て風圧で転びそうになる。
ユベールに担がれて逃げて、やっとの思いで30階に着いた。
鳥の親玉って何だと思う? ここでは竜なんだ。リザードマンくらいの大きさの羽毛に覆われて口が大きくてギザギザで、羽の先に鍵爪の付いた手があって、脚はウロコで覆われ、大きな鍵爪が付いていて、顔もウロコに覆われ赤いトサカがあり、縦長の虹彩の目がぎょろりとこちらを睨む。
「何だこいつら」
「アズダルコです。我々竜人の祖で、彼らは人間ではなく魔物に進化したのです。人の祖先がオーガとかゴブリンとかの魔物に進化したのと同じでしょうか」
「そうなのか」
そのアズダルコは一匹ではない。二十匹近くいるんだ。「ギャアギャア」言いながら一斉に襲い掛かって来ると、もはや恐怖でしかない。それも上空からとか、ピョーンとジャンプして来るとか。
「行きましょう」
『はーい』
『いぇーい!』
こいつらいつもの平常バージョンだな。オレひとりがビビっているのか。
取り敢えず、防御は基本。
『アースガード・鉄壁』を覚えました。
『ヒール・いつでもどこでも回復バージョン』を覚えました。おっしゃ。
どうも、よく使っている魔法はレベルが上がりやすいようだ。上がると強化バージョンが出来るようになった。例の『神子の願い』と同じで覚えた時だけ知らせてくれて、後は同じ呪文で強化バージョンが出るようになるんだ。チートだなあ。
『パライズ・時間延長』を覚えました。
おお、パライズも強化バージョンになった。バチバチと雷撃っぽいものが鳥竜に降り注ぐ。
おお、鳥竜にはパライズがよく効く。おまけにダメージも入ったし。
ユベールが麻痺した鳥竜をどんどん倒してゆく。ハナコとタローも彼らに襲い掛かって、吸収しているというか食っているようだ。お前らどっちに進化するんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます