第22話 翔くんって優しいんだね

 リサは俺に視線を合わせると、そう言ってきた。

 

 いきなりのことなので俺は目を見開いて驚く。

 

 俺はただの高校生だ。


 それにあまり目立ちすぎると正体がバレてしまうかもしれない。

 

 そうなると色々と危険だと言えるだろう。


 今のリサの登録者は200万人近くいる。


 やりすぎると俺の正体がいつかバレてしまうかもしれない。

 

「それはちょっと……」

 

 流石にレギュラーとしてやっていくとなると、それなりの覚悟が必要だ。

 

「これ昨日の動画なんだけさ」

 

 リサは俺が断ろうとするのが分かっていたようで、それを予想していたように目の前にスマホを突き出す。


 そこには昨日パイソンと戦ったダンジョンの様子が映っていた。


 コメント欄にはファンの人たちが俺を絶賛するコメントが大量に書き込まれている。

 

「再生回数も1000万再生をゆうに超えてるんだよ。昨日上げたばっかりなのに」

 

「う、嘘だろ!?」

 

 俺は昔見る専だったので普通再生回数は1万とか超えれば良い方だというのを知っている。


 だがたった1日で1000万再生を超えているなんて俺には驚き以外の何物でもなかった。

 

「本当に凄いよ! 翔君!」

 

 そう言ってリサは俺に称賛の言葉を送る。


 どうやら本当に俺が凄いことになっているらしい。


 ネットの世界では俺は有名人なのだろうか。


 正直実感が湧いてこないが。

 

 パイソン戦の動画のコメント欄も《流石クロ氏》《クロに出来ないことはなさそう》といったような書き込みで溢れており、その数々を俺の目にしている。


 しかもほとんどが俺のことを絶賛するもので埋め尽くされており、恥ずかしさのあまり俺は頬を赤く染める。

 

「私は翔くんと一緒に動画を撮って活動したい……」

 

 そう言ってリサは俺の目を見つめてくる。


 俺はそんなリサの視線に押されながらも何とか口を開く。

 

「リ、リサの気持ちはよく伝わった」

 

 自分がここまで褒められたり、凄い目で見られるのはどこか落ち着かない感覚だ。

 

 だけど何か自分に変化があるというのも頭の片隅にあった。

 

 そんな俺に対してリサは呟くように口を開く。

 

「勿論お金はちゃんと渡すし……それに翔くんがして欲しいことがあったら、私なんでもするよ」

 

 そう言うとリサは俺の手をぎゅっと握ってくる。


 そして顔を赤らめながら、俺のこと見つめてきた。

 

 その表情に俺の心臓がどくんと跳ね上がる。


 なんとか理性を保ちながら俺はリサに向かってこう言った。

 

「俺でよければ良いよ」

 

「ほ、本当!?」

 

「ただ無理をして何でもするとかはやめてくれ、俺はいつものリサが見たいからさ」

 

 俺はリサの元気な姿が見たいと思っている。

 

 だからそんな無理をしたような状態で登録者を増やしていきたくないという気持ちもあるのだ。

 

「本当に翔くんって優しいんだね」

 

「そうかな、普通だと思うけど」

 

 リサは顔を少し膨らませながら、ジトッとした目でこちらを見てくる。

 

 整った容姿とスタイルに加えて、そんな可愛らしい行動をされれば誰でもドキッとしてしまうだろう。

 

 リサのこんな表情をもっと見たいと思えるから俺は同意をしたのかもしれないな。

 

「それはそうと……翔くんとはビジネス関係だけじゃなくて、そういう関係にもなりたいな」

 

「ん、何て言ったの?」

 

「え、あ、いや! 何でもないよ! それよりも次の攻略について話し合おう!」

 

 そう慌てて言うと、リサはメモ帳を取り出してダンジョンの攻略について話し合ったのだった。



―――





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