第9話 俺の幼馴染

 「さてと、五階層まで来たんだ。時間もだいぶ過ぎたし今回はこの辺にして帰るか」

 

 「凄いよクロ! こんなに早く五階層まで来れるなんて!」

 

 そう言ってリサは俺のことをベタ褒めしてくる。

 

 まあ確かに、このスピードは自分でも凄いと思う。

 

 やっぱりあの魔法書はチートだったな。

 

 俺があの魔法書について考えていると、リサはスマホの画面を見せてくる。

 

 どうやらリサの視聴者たちが五階層到達を祝してくれているようだ。

 

「もうクロは有名人だね」

 

「はははは、配信者の影響力って凄いんだな」

 

「まあ登録者100万人いるからね!」

 

 リサの配信視聴者数は100万人を超えている。

 

 そんな配信者がダンジョン探索をするとなれば、やはり注目されるのは必然だろう。

 

「そういえばこのダンジョンって何階層まであるんだ?」

 

「一応調査で今は十階層までが分かってるみたい!」

 

「へえ、じゃあ俺たちがその十階層を次に攻略するって訳だ」

 

「まあクロと一緒なら十階層も普通に行けそう! それに視聴者も十階層の先を見たいだろうからね」

 

 調査だとこのダンジョンは十階層までは探索されている。

 

 だがそれ以降はどんなモンスターが出てくるのか判明しておらず、かなり危険なため、調査も行き届いていないのだという。

 

 だけど俺が一緒なら十階層も行けるとリサは断言した。

 

 俺は新人探索者だが……まあ信頼してくれてるし大丈夫か。

 

 そんな会話が終わると、俺たちは帰還を始めるのだった。

 



 

 そして家に帰ると俺はすぐさま自分の部屋に移動し、仮面を外してベッドに寝転がる。

 

「魔石ってこんなに売れるんだな」

 

 リサと解散した後、俺は今日ダンジョンで手に入れた魔石を持って、買取所に行った。

 

 魔石は電気などの動力源にもなるらしく、しかもダンジョン内でしか手に入らないものらしいので高価買取になった。

 

「金も稼げるし、有名配信者に会えるし、一石二鳥だな」

 

 そんな事を考えつつ、俺はあの魔法書を読み始める。

 

「この魔法書は色んな魔法があるな、次に試してみたいのは……」

 

 俺はそれから魔法書を読み進めて行くと、いつしか寝てしまうのだった。


 


 

「ああ、今日は学校か……」

 

 昨日はダンジョンの疲れもあって、家で魔法書を読みながら俺は寝てしまった。

 

 憂鬱で学校に行きたくはないが、仕方がない。


 俺はすぐ制服を着て朝食を済まし、家を出る。

 

「今日もだるい一日が始まるのか……」

 

 そんな事を考えていると、後ろの方から誰かが勢いよく突っ込んでくる。

 

 そのまま背中に突進して来るので俺は少しよろけた。

 

 そして俺の背中から離れるとそいつは俺に話しかけてくる。

 

 そいつは俺の幼馴染であり、同じ高校に通う《香月 心梨》だ。

 

 彼女は俺よりも身長が高く、モデル体型で胸も大きいという完璧な容姿を持っている。

 

 高校でも人気が高く、男子からの人気もかなり高いようだ。

 

「ふん! アンタまた眠そうな顔をしてるわね」

 

「昨日本読みながら寝落ちしちゃってな」

 

「あんたが本を読むなんて珍しくない? 何の本を読んでるのよ」

 

「あー、魔法書だ」

 

 すると俺の答えを聞いた心梨は呆れた表情を浮かべる。

 

「あんたねえ、そんな本を読むよりも勉強しなさいよ。成績トップの私が教えてあげるわ」

 

 そう、俺は昔からこいつが苦手だ。

 

 いつも上から目線で話してくるし、世話焼きで《勉強教えてあげる》やら《弁当作ってあげる》やら言ってくるから、本当にやめてくれと何度頼んだことか……。

 

 そんな話をしつつ、俺たちは学校に向かうのだった。



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