9 キュート界の自称クール、高度すぎるプレイを見せつけられボロ泣き
「「「女の子ォー!?」」」
わたし、ユキさん、観客の半分くらいからどよめきが巻き起こる。
「いや別に隠してなかったけどな?ヒーロー省のホームページにあるプロフィール確認すりゃ分かるけどな?」
「いやでも私にはショタ寄りの美少年にしか見えなかったんだけど!?何回も戦ってるよね!?」
「ユキと戦ってるときは後方支援だけに限ってたからね。前線出たらヤバいって本能で分かった」
「わたしにも男の子にしか見えなかったよ………!?」
「リカちゃんに関しては初対面だからね。むしろ初対面で襲うとか距離感バグってない?」
「「ついてるほうがお得だろー!!」」
「「男装女子は正義だろー!!」」
「「クソッ!!ぶっ倒してやる!!」」
「「望むところだ宗教戦争だッ!!」」
「観客のおまえらは認可得てないから戦っちゃだめだぞ〜。悪の組織として戦いたい場合はヒーロー省への名簿登録が必要だぞ〜」
「…………そういえば、わたしって名簿登録されてるんですか?」
「リカの登録はメディアとサヤが予めやってるから大丈夫だよ!」
「…………ありがとうございます。なんてお役所的なシステムなんだろう…………」
「そんなわけで、僕のアイギスは貫けないから諦めて帰るんだな!アディオス!」
防壁を展開しながら、しっしと手のひらを動かす山県シンフォニー………いや響季ちゃん。
しっかし、イケメンに見える女の子か………
「うーん……………これは…………なんというか………」
わたしが唸っていると、隣で同じように唸っているユキさんと目が合う。
「えっと………リカも同じ気持ちなのかな………?」
「たぶん………その通りかと………」
そうして2人のクズ好き愛欲の権化は互いの狙いを確かめ合うと。
「―――じゃあ、行きましょう」
「もちろんだよ」
未曾有のシールドに向けて走り出し。
「イケメン要素あるなら女の子でも余裕で恋愛対象だよこんちくしょー!!!」
「わたしは襲うしか能がないからね!!クズ女に調教してやらぁー!!」
2人同時に、特攻を仕掛けた。
「バカなのか!?特攻しかできないバカなのか!?」
「響季、よくよく考えろ。片方はバーサーカー、片方は変態不審者だぞ」
「2人とも撤退や小細工とか無理なのですわ」
「なんでこれで連戦連勝なのさ………」
「変態ってのは時に強大な力を持つんだ」
「性欲の力を舐めるべきではありませんことよ?」
キケンナアソビの面々が面食らう(?)なか、わたしたちは空間に出現している防壁に攻撃を喰らわせる。
「いやぁ、全然破れませんね………あっはーん♡」
「………ねぇ、リカは何してるの?さっきから虚空に向かってエロいポーズ見せてるけど」
「愛擬すの盾を籠絡しています」
「…………アホなのかな?」
「だってわたしの攻撃手段基本色仕掛けだもん!!ユキさんみたいなパワーとか無いもん!!」
「…………炎魔法とか使ったら?さっき炎魔法使ったってイザナミが言ってたんだけど」
「あれは恋愛関係のイライラがないと使えないのです」
「酷い制約だね………」
「攻撃の度にリスカする人に言われたくない」
しかし、盾は破れない。そりゃユキさんしかまともに攻撃してないから、多少はね?
どうにかこうにかユキさんのテンションあげれば、ワンチャン攻撃力も上げられるかもだけど…………
あ、そうだ。
「ユキさんユキさん」
「なーに?」
「ユキさんって興奮すれば攻撃力上がるんですよね」
「そうだけど……」
「じゃあ、失礼します♡」
そうしてわたしは、両の手を伸ばし―――
「―――ぁ……………ッ……………ぅぉ…………ぁ………ッ………!!!」
思い切り、ユキさんの首を絞めた。
「あれれー?首絞められて苦しくて苦しくてたまらないのに、なぜか頬が火照ってますよ?もしかして、こーふん、してるんですか?」
「…………ぁぁ………………っ…………」
「生命の危機なのに気持ちいいなんて、人間やめてますねー。恥ずかしくないんですかー??もしかして、かわいい女の子辞めて、メスになってるんですか?なってるんですね??」
「…………ァぁッ……………♡」
「ほーらどんどん意識飛んでいきますよ?メスならメスらしく快楽に堕ちてくださいよぉ♡頸動脈詰まって脳でダイレクトに気持ちよくなりますよねぇ!ねぇ!!!」
「…………ごほぉッ…………」
「眼がハートマーク♡快楽堕ち♡痛みが気持ちよくて生きてるって感じしますねぇ♡………ほら手緩めましたよ?酸素吸って?わたしに生殺与奪握られてるよわよわなメスらしく必死に酸素吸って♡」
「はーッ……………ふーッ………!!!」
「あぁッ……!!!かわいい………!!!わたしの手で汚れてく美人、すき……!!!わたしの調教に染められるクズ女、だいすき………!!!」
気道を塞がれる苦しみに耐え、その先にある興奮を手にしたユキさん。
わたしには、彼女の力が爆発的に増えたことが一目瞭然。
その勢いのまま、彼女は拳を握り…………。
「はーーーーッ…………!!!気持ちよかったぁ……………ッ!!!!」
いとも簡単に、愛擬すの盾を打ち破った。
「すっご!!!ユキさん流石!!!」
「これが………愛の力だよ………!!」
ふたりで、ハイタッチを交わす。
その破裂音が、乾いた空気に響き渡る。
…………そしてタッチの先に見える、今にも泣きそうな紺色の女の子。
「「……………あ」」
―――響季ちゃんの視点で、冷静に考えてみよう。
たった今、ここにいるのは。
・恥ずかしい名前への改名を迫る、同じチームのクズ2人。
・自分が男か女かで争いを引き起こす、観客の大きなお友達。
・自分を襲おうとし、ついでに仲間の首を絞めて言葉責めして恍惚の表情をする露出魔の変態。
・自分を襲おうとし、ついでに仲間に首を絞められて興奮のあまり覚醒して防壁をぶち破ったドMのバーサーカー。
…………どう見ても、地獄だった。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!誰か助けてよぉ!!!周りに変態しかいないよぉ!!!!どうすりゃいいのさぁ!!!!もーやだ!!!おうち帰りたい!!!!びぇぇぇぇん!!!!!」
先ほどまで無自覚中二病でカッコつけていた男装女子が、いまでは子どもみたいに泣き叫んでいる。
さっきとのギャップがすごい。その隠れていた弱々しさは、わたしも萌えを感じるくらいにはすごい。観客の中にキュン死してる人も居た。
「ばぶばぶしたいよぉ!!!だれかにあやしてもらいたいよぉ!!!!ぎゅーしてなでなでしてもらいたいよぉー!!!ぴぇぇぇぇん!!!」
そんな見た目16歳の子どもの泣き声は、空へと響いていく。
もはや3歳児の泣き方だ。まるでママを呼んでいるみたいな。
「ママなんて来てくれるのかなぁ…………」
わたしは、ため息を付いて空を見上げる。
青い秋空に、虚しく母を呼ぶ声がこだました。
―――そして次の瞬間、青の空は黒の虚空へと変わった。
「わたくしの子どもを泣かせたのは…………どこのどいつですかね………?成敗しなきゃいけませんね…………」
…………どう考えても血がつながっていない、自分をママだと思いこんでいる一般人の手によって。
◇
『次のニュースです。
本日も、悪の魔法少女【自由とヒステリー】が活動を行いました。
彼女たちは商業施設に出没しいつものように戦闘が始まりましたが、ヒーローの1人が泣き出すと突然ステージが暗闇に包まれ、再び光が戻った頃にはヒーローともども全員が倒れていたということです。
ヒーロー省捜査一課は、その場に残っていた哺乳瓶や、『ばぶばぶできてうれしい』『ママこわいですわ』『お尻ぺんぺんすんな』『幻覚で保育園見せないでください』『もっといじめてほしい』などのダイイングメッセージより、唯一姿を消した1人の魔法少女を容疑者とし、捜査を続けています。
続いてのニュースです。ヒーロー省大臣は記者会見で、『武蔵坊弁慶は日本最古の我慢プレイ提唱者だ』と発言しました。大臣によれば、『矢を受けてなお立ち続ける行為は、ドMの目指すべき姿で尊敬すべき存在だ』とのことであり―――」
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