7 TS露出狂、新たな出会いでもネタ枠は譲らない模様



リカ梨央視点に戻ります。



「さぁーて、何しようかなぁ………」



ゲートに飛び込んだはいいものの、対して作戦を考えていなかったわたし。

「メイド服着て悩殺するぞォ!!」と走り出す男好きユキさんや、「子どもたちを調教してきましょうかね」と涎を垂らしていたママサヤさんと比べれば、わたしの出遅れは明白。




「適度に露出できて合法的に人を襲える場所とかないかなぁ………」



脳内の欲を全て叶えてくれる施設を探し、ショッピングモールの掲示板を見漁っていると…………面白そうなものがあった。



「ふひひひひ…………」


《今日は催眠とか掛けてないからね?その露出欲と性欲は君自身のモノだからね?どうなっても知らないよ?後からわらわに責任転嫁すんなよ?》



はやる気持ちと揺れる胸を抑えながら、わたしは駆け出した―――











『というわけで、Chillチルナンデス恒例企画、《ビューティー☆ファッションショー》もラスト1人を残すのみとなりました!

 最後の出場は…………え?マジで?いいんすか?いいんですね??

 ………じゃあ、入場してください』








「どどんがどんどんどん!!!わたしが来た!!わたしの美を拝んで!!」



『…………いまや時の人、歩くネットのおもちゃ、魔法少女のリカさんです』



ってな訳で、お昼の番組「Chillナンデス」の生放送がやってたので、飛び入り参加しました。

ホントは参加締め切ってたらしいんだけど、シーシャ吸ってチルってるプロデューサーに色仕掛けしたら余裕で許可してくれた。仕事しろ。


………あと、何故かこの商業施設で他局の収録も同時にやってたけど、気にしてはいけないご都合主義ってヤツです




「あぁ………みんながわたしのこと見てる………すてき………♡」

『リカ選手、恍惚の表情をしています。お昼の放送で流していいんでしょうか』

「帰れー!!」

「「「もっと見せろー!!!」」」

『なんで拒否感より歓迎の方が多いんでしょうか?日本は狂っているんでしょうか?』

「よーし!お言葉に甘えてもっと見せちゃうゾ♡」

『リカ選手、軍服を脱いで水着になりました。秋空に素肌が晒されています。季節を考えられないバカが産まれています』

「さっむ!!!」

『ざまぁみろ』

「「「俺たちがあっためるんだ!ふー!!」」」

『オタクたちによる温風が吹き荒れています。気持ち悪いことこの上ありません』

「ありがとー!!わたしもお返しにご奉仕しちゃうよ♡」

『グラビアアイドルみたいなことしていますが、中身は痴女です。お前の笑顔じゃ誰も救えねぇよ』

「審査員さんにもご奉仕しちゃうゾ☆」

『審査員の若手俳優たちに露骨なアピールをしています。きっとガチ恋ファンの手で炎上することでしょう』

「ほらほら、わたしのすべすべお肌に触ってごらん〜」

『女優さんにアピっても無駄です。どうせ裏垢で叩かれることでしょう』

「「「うーん、優勝!www」」」

『………ねぇ私この番組降りていい?』




そんな訳で、なんか秒で優勝できました。ふぉー!

副賞として商品券も貰えちゃった。ラッキー!



「これが………わたしという人間の魅力………!!」

『思い上がんな』

「………さっきからいちいちうるさいね。わたしから愛のご指導しないとなぁ………」

『―――ッ!?身体を拘束された!?』







ちゅどーん!!!



「愛の炎に抱かれて消えろッ!!」



『なんで私だけ物理的に攻撃してくるんだよぉ!?』







きたねぇ花火も上がったことだし、そろそろ帰ろうかなぁ。だいいち今現在進行系で授業サボってるしね。





「待ちなッ!!」




………なんて思っていると、乱入者が現れた。



「あなたは…………」



ステージ袖から上がってきたのは、全身をスーツ………というか結婚式で着てそうなタキシードにドレスアップした男。

胡散臭い髪型に胡散臭い眼鏡をかけた、非常に胡散臭い男がいた。




「―――オレは………正義のヒーロー、高坂こうさかリョーマ………!!俺様の美技に酔いな………!!」



漫画の表紙みたいな奇っ怪な後ろ反りをして、にやり………いやニチャァと笑う胡散臭い男。



「デカパイドスケベ薄幸銀髪美少女………いやリカ………!!俺のモノになれよ………!!」



腰がポキポキ鳴っているのを必死に我慢している高坂リョーマ。見てるこっちが痛い。



「どうだ………?最高の提案だろ………??男が大好きな君のことじゃないか………!?」



そんな彼の文字通り命を懸けたプロポーズに、ドスケベ淫乱ピンクことわたしは。















「―――きっしょwww」



全っ然、1ミリも、興奮できませんでした……。


いやそりゃそうじゃない?襲いたいとかちゅーしたいより『イタい』が来るんだよ?蛙化現象だよ??わたしだって最低限の分別はあるよ!



「なんで………!?天才的なアイドル様の俺なのに……!?」



それに対し、絶望して空を仰ぐ高坂リョーマ。



「あークソクソクソ!お高く止まりやがってこのクソビ◯チが!!ヒーローを襲う癖に俺には興味ねぇってか!?あーもう最悪だよ!足の小指ぶつける俺の魔法で仕返ししてやんよ!ああん!?」



さらに、先ほどの胡散臭い顔からゲス顔へと変貌し悪態をつくクズ。



「クズ男とかないわぁ………」

「うるせぇ顔だけのバカ野郎!!お前のグッズ全部買い占めて転売ヤーになってやんよ!!そんでそのクレームは全部お前に行くようにしてやる!!炎上しろ!!」

「こんな人に露出する意味とか感じないんだけど………服着よっと」

「いや服は着るな!!肌をオレに見せてくれ!!」



自分勝手なカスこと高坂リョーマ。

その登場に観客席も湧いたが………どうやらわたしの時とは違うようで。



「入ってくんなカス野郎!!」

「なーにが高坂リョーマだ!!お前の本名は春日太郎だろうが!!」

「体力だけのカスが!!所詮お前はネタ枠なんじゃい!!」



…………罵声の嵐である。どう見ても舐められている。かわいそ。わたしとは違うねっ☆



「やーい、ネットのおもちゃさん♡」

「お前に言われたくねぇよ!?」



思えばさっきからこの春日太郎、顔芸が止まらない。そりゃネットのおもちゃだよ。




「バーカ!あーほ!脳内ドピンク―――げほおッ!?」



しかし、春日太郎はわたしへのディスを途中で止めた、いや止められた。

その理由は、後ろに居るピンクの縦ロール。ドレス姿で顔面平手打ちを喰らわせていたのである。



「おい!!エリザベスちゃんだぞ!!」

「ザベス、キター!!!」

「春日はエリザベスを召喚するための生贄に過ぎない」

「美少女2人を拝めるとか眼福かな?」

「両方人格終わってるけどな……」



観客一同が歓声を上げる中。

当のお嬢様は言い放った―――





「新進気鋭のコンテンツを敵に回すのはよろしくないですわよ!?いいですか太郎、こういう相手は利用してなんぼですの!!仲良くして骨の髄まで利用させていただいた後に、罠でもなんでも使って踏み台にするのですわ!!おーっほっほ!!」





―――おおよそお嬢様らしくない、ゲスな言葉を。




「クズすぎるわ!!」

「最高!!」

「ノルマ達成」



そんな言葉を聞き、わたしは全身が震える。



「おい何言ってんだよお前!?リカちゃんキレてんじゃねぇか!?」

「いやキレさせたのは太郎ではなくて!?わたくしに責任転嫁するのはやめてくださいまし!!」

「そもそも一般庶民がお嬢様言葉使うんじゃねぇよ!?本名馬場信子だろうが!!身の丈にあった生き方しろよ!!」

「それはわたくしの言葉ですわ!!何ですかさっきの三流ホストみたいな演技!吐き気がしましたわ!!クサすぎて鼻がもげますわ!!」

「やかましいわ!!」



2人の夫婦漫才はほぼ意識の外へ。

わたしは感覚を研ぎ澄まし、2人のもとへ目にも止まらぬ速さで接近する。



「うっわヤバいぞお前!?後ろにリカちゃん居るぞ!!」

「激ヤバですわ!!終わりましたわ!!じゆヒスにライバル宣言する前に死亡宣告喰らいますわ!!」

「そん時は海に投げ捨ててやるよ」

「ちゃんと弔ってくださいまし………」



そしてわたしはエリザベスの背後を取ると。



「南無…………」

「来世はホットケーキに生まれ変わりますわ………」



ドレスを着た身体へと腕を回し。















「クズ女さいこう…………♡わたしエリザベスみたいな性格終わってる女の子大好きなの………!!ちゃんとわたしの愛受け止めてね…………!!んちゅー!!」




―――その唇に、これまで最長のディープキスをかました。




「…………!!!!」



「ほんとすき……♡クズさを自覚してるけど治そうとしない、むしろできないその脆さが好き♡それで他人に迷惑かけて平然とした顔してるのに、実はちょっぴり罪悪感感じてるのすき♡名声と権威に溺れたゴミカス♡」



「ちょっと待ちなさいな!わたくしの思考を読み取らないでくださいます!?」

「わたし、クズな女の子に目がないんだよね………冷静に考えたらユキさんも相当なクズ女だよね、ああいう愛欲に塗れたクズも好き♡」

「オレは!?オレもクズだよ!?」



「クズ男は専門外です。死ね。男は清純派に限る」



「酷くね!?」

「やーい、言われてやんのー!ですわ!」

「お前もクズ女認定されてるけどな!!そういうところだけどな!!」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る