5 風紀委員兼魔法少女、授業サボって首絞め赤ちゃん百合プレイしていた
「それじゃ、梨央は頂いてくね〜」
「風紀に基づいてご指導しますよ〜」
両サイドをしっかりガードされる形で、俺は教室から連行されていく。
クラスの奴らが出荷される羊を見るような目でこちらを見ていた。ドナドナみたいだな。
「浅井と足利さんがまた何かやってる」
「まーたアイツら学生生活楽しんでるよ………」
「哀れな後輩くんに合掌………」
「昨日の魔法少女並に酷い光景だ………」
「いやあんな淫獄よりはマシだろ」
何なら道中、他の学年の人すら憐れんだ視線を向けてくる。
あと最後二人。本人の耳に届いてんぞ?ああん??
がらがら。
「どうぞ〜!こちら風紀委員室でぇす!!」
「豪華でしょう??」
そうして俺は、部室棟最上階の角にある風紀委員室に連行されていた。
「うっわめっちゃ広いしクソ豪華………!!」
扉を開くとそこは、天国であった。
教室2個分はあろうかというクソデカ空間に、モノトーンで統一された家具が並ぶ。
フッカフカのソファは隅々まで手入れされており、テーブルの雰囲気やらインテリアやら、まるで応接間のようであった。
極めつけはキッチン。なんでいち部室にこんなのあんねん。
「なんでこんな設備が?」
「生徒会に貢がせた」
「…………はい?」
雪菜さんから放たれた意味の分からない回答。
その詳細は、沙夜歌さんから語られた。
「………わたくしが『折角風紀委員乗っ取ったなら部室欲しいです』ってお願いしたら、雪菜ちゃんが生徒会に交渉に行ってくれたんですけど」
「私偉いからね!!」
「生徒会男子たちに距離感ゼロとかボディタッチとかやってたら、見事に全員が惚れちゃいまして」
「私そういうコミュニケーションの方法しか知らないからね〜」
「そうしたら、生徒会の中で蹴落とし合いが始まって。予算という名の貢ぎが成立し、いつの間にやら元々生徒会室だったこの部屋まで貰えちゃいました」
「みんな優しいよねぇ!モテモテも困っちゃうなぁ!」
「その後生徒会は恋愛関係がこじれ、泥沼の修羅場になったそうです」
「私からもお返しとして全員にほっぺにちゅーしたから!セーフ!!」
ふふんと胸を張るオタサーの姫。
いや敢えて言おう、この人は紛れもなくサークルクラッシャーである。
「…………クズすぎワロタ」
「自覚はあるよ?」
「一番最低なヤツだ」
「そこも可愛いですよね」
「親バカやめてください」
「そう。わたくしは雪菜のママなんです」
「二人とも同い年では?」
雪菜さんに比べてボリュームがある胸を張る自称ママ。
そしてその宝物の向こうに、何やらベッドが見えた。
「なんでベッドまであるんですか………」
何気なく近づいて見てみると―――
めっちゃ、布団とシーツが乱れていた。
…………誰がどう見ても、事後であった。
「あの………この状況は…………」
振り返って先輩方の顔を見る。
「えへへ〜」
沙夜歌さんは、満足気にふふふと笑い。
「……………//」
雪菜さんはめっちゃ頬を赤らめ、無言で顔を逸らす。
「Oh、YES…………」
すなわち、ここから導き出される結論はひとつで―――
「そうなんだよ。わらわたちが居るっていうのに、コイツら何やってんだか」
そしてその回答は、突然目の前に現れた3人の小人さんによって語られた。
「授業サボって首絞め赤ちゃんSMプレイとか………結構やってるよね………うらやましい……」
右には、黒髪ロングの日本人形みたいな小人さん。
「お尻シバかれて喜ぶ風紀委員長とか、言葉責めして喜ぶ副委員長とか、日本終わってないかしら……?」
左には、紫の髪を縦ロールにした王女様みたいな小人さん。
「大丈夫。そもそもわらわ達も冷静に考えたら終わってる側の人間だから。人のこと言えないよ」
そして中央に、金髪ツインテすっぽんぽんの小人さん。
「あんたらは………!!」
乱れたベッドの上に現れた3人の小人さんたちは、異常なまでの神々しさをも感じさせた。
あと、真ん中の露出狂には見覚えがあった。
「そう。わらわ達こそ、ここに居る3人を魔法少女へと変身させた存在ッ!!」
「もしくは………魔法少女といっしょに世界に愛をぶち撒ける女神…………」
「あるいは、神の時代が終わっても重すぎる愛を抱え続けてしまった亡霊っ!」
そして3人のちっこい女神たちは、いかにも戦隊ヒーローがやりそうなポーズをして、名乗りを上げた。
「
「ギリシアの魔術師!沙夜歌の守護神兼復讐の王女、メディアよ!!」
「そして、シュメールのアイドル!梨央のパートナーで性愛の女神、イシュタル!!」
『我ら、ヤンデレ女神3人衆!!!(どーん!!)』
「わー!!!」
「いつ見ても壮観です〜」
「あぁ………そういう………」
かっこいいセルフ効果音付き自己紹介に、3人からの拍手が飛ぶ中。
俺は、いろんなことを悟った。
よくよく考えてみれば。
イザナミといえば、日本神話で黄泉の国からの帰り道で夫をガチで殺そうとし、その後も1日1000人殺して迷惑かけてたメンヘラ女神。
メディアは、ギリシア神話で夫が他の女と結婚しようとした際に、その女と実の子を殺してまで復讐したやべぇ王女様。
イシュタルは、ギルガメシュ叙事詩でフラれた相手への復讐として地上の人間を虐殺した癖に、愛人が100人以上いた激ヤバクソ女神。
こんな奴らから力を借りてるんだから、そりゃぁあんな戦い方になる。
じゆヒスという悪の組織は、ただ単に愛が強すぎるメンヘラと愛をぶち撒けたい変態が、ヤンデレ女神の力で魔法少女になり、大暴れしているだけなのだ。至極シンプル。
…………ちなみに、昨日から俺もその一員です。恥ずかしいわ。
「ってな訳で、わらわの手により、じゆヒスに新メンバーが加入しました〜!!」
『わー!!』
「わらわ凄すぎるね。3人の中で一番貢献していると言っても過言ではない」
さて、自己紹介も終わり。
昼休みということで、頼んでいた宅配ピザとコーラで歓迎パーティーと相成った。
30cmくらい、ぬいぐるみサイズのイシュタルが、とんとんも胸を叩いている。なお全裸。
………いや待って。昼休みなのになんでナチュラルにピザの宅配届いてんの?校則は………!?
「え!?事務作業とかゲートの修復とか適合度調査とかやってる私の方が遥かに貢献してるわよ!?」
そんなことに驚く暇もないまま、イシュタルのドヤ顔にメディアちゃんが突っかかる。
悪の組織なのに事務作業やってるのが微笑ましい。苦労してそう。
「意味わかんない………最強戦力かつ元ヒーローの雪菜を連れてきたのが一番大事でしょ………そもそも最初はわたしから始まったんだけど………?」
さらに、イザナミちゃんが闇のオーラを発する。
ミニサイズだからちゃん付けしてるけど、確実に人を呪い殺してるタイプだアレ。
ちなみにさらっと出てきたが、実は雪菜さんは元ヒーローである。引退済とは聞いていたが、まさか敵としてバリバリ現役とは思わなかった………。
「ぬぬぬ………わらわの凄さを納得できないとは………」
「私が居なきゃ駄目なのなんでわからないのかしら……!?」
「…………全員倒す。わたしに土下座するまで絶対に許さない」
ヤンデレ三女神は、お互いに対して文句を垂れ流し、負の感情をぶつけ合う。
「あ、俺こういうの知ってる。修羅場って言うんでしょ?ほんとヤンデレ女神ってヤバいっすね………」
俺は茶化すように先輩2人に話しかける。
2人も優しい先輩なんだし、どうにかこの場を取り持ってくれないかなぁ―――
「それはメディアさんへの皮肉ということですね?ぶっ倒していい声で鳴かせてあげましょう」
「………イザナミを馬鹿にしたらわかってるよね?文字通り血塗れにして後悔させてあげるよ?」
「あー………駄目だコレ」
悲報。この空間めんどくさい女しかいない。先輩2人めっちゃ睨んでくる。
「ならアレやるしかないね」
「いいわよ。久しぶりにやってやろうじゃない」
「…………どうせ今回もわたしと雪菜の勝ち」
そして駄女神たちは睨みを効かせ合い―――
『変身!!!』
それぞれの契約者に向けて飛びついた!!!
…………
「…………まぁ、こうなると思ってた」
2日連続で耳に入る、えちえちな声音。
風紀委員室の鏡に映る、銀髪美少女の肢体。
昼休み終了のチャイムなどどこ吹く風。
わたしたちは変身し―――ワープゲートへと飛び込んでいく。
『第4回・誰が一番ヒーローに迷惑かけれるか選手権』、開幕―――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます