お稲荷さんは女子高生。

猫野 尻尾

第1話:部屋の隅にいる女。

僕は桜ヶ丘花園高校に通う学生。

名前は「大西 翔大おおにし しょうた」って言う」


学校へ通う途中に稲荷神社があって僕は神様や仏様ってあまり興味ないけど

通りがかりだから、神頼みじゃないけど一応手だけは合わせていた。


「家内安全、無病息災、ついでに彼女ができますように・・・」


で、僕は今「浪漫荘」って共同住宅で暮らしている。

「浪漫荘」は昔は「浪漫館」って映画館だったらしい。

閉館してから改築して賃貸になったらしい。


部屋は全部で6部屋・・・入り口から見て手前左側が僕の部屋。

そして僕の部屋のすぐ横が女性で、夜のご商売をなさってて

下ネタが大好きな、とってもエッチいお姉さん。

いろいろ教えてくれる彼女は僕にとって性のバイブル的存在。


その向こうが探偵さんが住んでいて、昼過ぎからベスパに乗って

どこへともなく出かけていく。

で、その向こうの部屋には売れないピン芸人さんが住んでいる。

テレビで一度も見たことがない。


で僕の部屋の向かいが浪人生・・・滅多に部屋から出て来ない。

浪人生の横の部屋が、どこかの芸能事務所が借りていてアイドルの

卵ちゃんが住んでる。

でそのアイドルちゃんの横の部屋は今は空き部屋になってる。

でも夜な夜なその部屋から女の人の話し声や泣き声が聞こえて来る。


浪漫荘にはそんなミステリアスな住人たちが住んでいる。


で、決まった時間になるとアパートの裏を電車がガタゴト通って行く。

そのたびに部屋が揺れる。

昼間はいいけど、夜はね・・・でもまあ、もう慣れたけどね。


そんな浪漫荘だけど・・・

ある日、僕の部屋の隅っこに、いつの間にか誰かいることを発見した。

薄暗くて見えにくかったけど、たしかにいるんだ、誰かが?

キミが悪かったから見て見ぬふりをしていた。


それでも気になったから、よ〜く見ると、え?女子高生?・・・だし・・・。

僕の部屋は訳あり物件じゃないはずなんだけど、しかも僕には霊感があるわけ

でもないのにその子が見えるんだ、ってことは幽霊じゃないってことだろ?


そしたら夜、僕が寝てる枕元にその子がごそごそ寄ってきて言ったんだ。


「なんで?・・・なんでわたしが見えてるのに声かけないの?」


「わ〜は〜〜〜〜しゃべってるよ」


「わたしがいるのに無視って失礼だと思わない?」


「いや〜どうも・・見えてたんですけどね」

「ですけど、正直怖いじゃないですか、だから触らぬ神に祟りなしって

言うか・・・」


「祟りってなに?・・・これでも女神だからね、私」


「めがみ?」


(つうか、初対面でめちゃ馴れ馴れしいし・・・)


ってよく見たら狐の面被ってる・・・。

女神って言うけど・・・キツネの妖怪かなんかじゃないの?


「妖怪は子供の頃から好きですけど・・・って言うか妖怪はいるって思って

るんです・・・一度は会ってみたいって思ってたんです」


「私は妖怪じゃないからね」

「私、宇迦之御魂姫うかのみたまのひめって言うの」

「あなた、お稲荷さんって聞いたことない?」


「はい、お稲荷さんなら好きだから時々スーパーで買ってきて食べますけど」


「そっちのお稲荷さんじゃなくて神社のほうにいるお稲荷さん」


「ああ・・キツネの?」


「キツネじゃなくて私は女神」

「そのへん混同しないでくれる?」


「で?その女神さんがなんで僕の部屋にいるんですか?」


「神社にいるのも退屈だし・・・最初はね、ご近所の田中さんちにいたの・・・

でも田中さんちのご夫婦、もう長くないから・・・」


「ああ・・・京極下のお稲荷さんか・・・」


「あなた、毎日手を合わせてくれてるでしょ?」

「私はあなたのこと前から知ってるよ」


「だから悪いことできないよ」


「はあ・・・どこで誰に見られてるか分かんないですね」


次回につづく。


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