第44話
最終日、京都から新幹線で東京に戻る日。
荷物を沢山抱えたクラスメイトと一緒にホテルからバスに乗り込む。
寝るから酔い止めはいらないかなと思ったけど、森谷先生がA組のバスに乗るっていうから大人しく差し出された薬を飲んだ。疑問に思っていた事をぶつけてみた。
「なんで酔い止めはバナナ味なの?」
「筋肉ゴリラの泉にはバナナ味が似あうと思って買った」
「……オレンジとかブドウがよかった」
「他の生徒にも渡しているから、皆一緒やで?」
「そうなの?」
「味が不評だった」
「やっぱり!」
そんなやり取りをしている間に、バスは京都駅へ到着。点呼を実施して、新幹線に乗り込み東京へ向かう。
帰りは森谷先生の隣を死守した。疲れているから寝るって言っていたから。可愛い寝顔を誰にも見せたくなかった。ずっと起きているつもりがいつの間にか、寄り添って寝ていたらしい。
長谷部が隠し撮りしてくれた事に後で気付いたんだけど。
帰りはあっという間に約二時間経っていて、気づけば東京駅に着いていた。駅員さんにお礼を言ってから、東京駅前で点呼をとりバスに乗って学校へ向かう。
森谷先生はC組のバスに乗るらしいから、絶対寝ないでって念押しした。
学校に戻り、第一体育館へ。最後の点呼をとり、到着式というのをやる。
正直、早く帰りたいんだけど、シスター(教頭)に挨拶するまでは終わらないらしい。
到着式が終わって、皆続々と帰宅してく。
俺は保健室に残って足首の手当をしてもらう。帰りは森谷先生が車で送ってくれる事になった。長谷部も乗っていく事になったので、森谷先生が仕事の引継ぎなんかをしている間、クリスマスパーティの計画を立てた。
学校最大の行事クリスマスミサが金曜日、その次の日は土曜日だけど、そこで森谷先生、樹先生、海斗先生も呼んでパーティしようという事になった。
あまり歩き回るなって言われたけど、学校をよく見ておかないと計画が進まないので、注意を無視して学校の探索に出る。告白に丁度良い景色がないか、学校中を歩き回って見つけた。パーティ会場となる部屋も見つけて、シスター(教頭)には長谷部が許可を取りに行った。
速攻でオッケーの返事をもらったらしい。流石だ生徒会長。
来週には生徒会役員選挙がある。長谷部はもうすぐで任期終了なんだって。後輩に引継ぐ事が沢山あるから、優秀な人が当選して欲しいと願っているらしい。
夕方になって、森谷先生の仕事が終わった。一緒に帰る為に準備をする。
森谷先生の車は国産のスポーツセダン。今時珍しくマニュアル車だった。免許を取った時に中古で買ってもらったらしくて、大学も大学病院へも車で通ったそうだ。
満員電車が嫌なんだって。渋滞しても一人の時間を過ごせる車が良いって言ってたな。
後部座席からルームミラー越しに運転している顔を見ている。運転中の真剣な表情は、一、二を争うくらいの好きな顔。先に俺の家に送ってくれて、それから長谷部の家に向かった。
ちゃんと安静にする様に言われてた。趣味で始めたダンスを土日にやっているから本当は踊りたかったけど、今週は修学旅行に行っていた事もあり、中止する事にした。
修学旅行は高校生活で一番のイベントだって森谷先生が言っていたけれど、その通りだった。
色んな事があったけど、一番は森谷先生と一緒に寝た事。クリスマスパーティーで正式に告白しておきたい。
今から計画が楽しみだ。――――人生で一番想い出に残るイベントにしてみせる。
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