第43話

 三日目の今日は、京都市内のホテルに移動して宿泊する。今日は騒動も起こらず、平穏無事にA組の男子部屋で寝た。今日の清水寺では恋愛成就の水を選んで飲んだ。

 好きな人がいるのかクラスの皆に聞かれたけど、何とか誤魔化して事なきを得た。気を付けないと。間違っても森谷先生が好きとは言えない。

 長谷部の情報だと、森谷先生は学問上達の水を飲んだらしい。まだ勉強するつもりなのか?保健室の先生としては、まだまだだからって事の様だけど。十分だよね。

 四日目は班別に行動する班別自主研修だから、どこに行きたいか事前に話し合ってある。 そのための事前ホームルームだった訳だけど、保健室に逃げていたから何も知らない。

 十五時までにホテルに戻る事、それが条件で班毎に自由行動を許されている。林太郎に任せておけば大丈夫かな。


 結局何も知らないまま主に女子が行きたい場所を巡っていた。お茶屋さんだったり、神社だったり、舞妓さんの見学なんかもしたな。コスプレ大好きクラスだから、舞妓さんのコスプレした班もあったらしい。お昼は自由なのに、見学に全てのエネルギーを注いだから、コンビニご飯を食べて済ませた。いつもと変わらないじゃんって思うけど、時間が意外と足りなかった。

 十五時ギリギリにホテルに戻り、点呼を済ませてからお土産屋さん巡りを許可された。

 お茶屋さんでお婆ちゃん好みのお茶を買っていたから、商店街で八ツ橋を買った。

 森谷先生が新品を試食させてもらったと班の皆に話していたので、皆でお願いしてみたがダメだった。渋い顔されたし。森谷先生はなんで成功したんだ? 関西弁だからか?


 森谷先生の関西弁は謎だったけど、聞けば中学までは関西に住んでいたらしい。お父さんの転勤に付き添い、家族で東京に引っ越してきたとか。本当は中学二年生で転勤になったはずだったけど、一年単身赴任して貰って、家族は森谷先生の高校進学に合わせて引越したとか。

 兄弟は妹が三歳下にいて、妹さんは中学の入学のタイミングで引越しになったとか。丁度良かったなって笑っていた。妹さんは、森谷先生に似てないらしい。覚えておかないとね。

 森谷先生の誕生日は二月二十三日だって。班別自主研修の間は、先生たちはホテルに待機してスマホで連絡取り合って定期的な安否確認をしていた。個人行動できればよかったのに。

 そしたら、ホテルで森谷先生と一緒にいる事が出来たのにな。


 四日目の夜が来た。最後の宿泊。皆、たくさん買ったお土産を箱に詰めてフロントで送る手配をしていた。俺は、そんなに買っていないから旅行カバンに十分に入る。

 バスを降りた時に、足を捻ったから、大人しく痛み止めを飲んで森谷先生にシップで冷やして貰う。腫れてはいないけど、手術痕の残る左足だから大事をとって風呂は入るなと言われた。

 森谷先生の部屋でシャワーを借り、頭だけ洗わせて貰う事にした。

 ついでにまた泊まろうとしたけれど、今日はダメだった。大人しくA組男子の部屋に戻り、皆で最後の夜を過ごす。恒例の、好きな人を言いましょう大会が開かれたけど、俺は無視して寝た。付き合っていられないよ。森谷先生が好きだっていうのは生徒には内緒なんだから。

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