第14話

「先生! 数学教えて!」

「なん? いきなり。数学教師に聞けや!」

「聞いたけど、分からなかったの!」

「何が?」

「数学の存在意義が!」

「そんな壮大なテーマ、俺に答えられる訳がないやろ!」

「先生、理系じゃん!」

「大抵の理系科目は、きちんと答えが出るんや! 答えられないのは哲学、文系や!」

「……ああ、数我苦」

「なん? それ?」

「……数が我を苦しめる」

「ヤンキーみたいな変換すんな!」

「……それで、これなんだけど」

「放物線y=x2と、直線y=x+2の共有点の座標を求めよ? これ、高校一年生の数Ⅰの問題やん!」

「追試なの!」

「去年、単位落としたんかい!」

 まずは、グラフを描かせようとするが、無理だと言う。

「放物線と直線が二回も共有点で交わってるからムカついて描けない! 共有点って交点って事でしょ? 絶対いちゃついてる!」

「なに、二次関数を疚しい目で見てんねん!」

「高校生には刺激が強すぎるよ!」

「泉には、二次関数はまだ早い様やな。もう、グラフ描かんでええから、二つの式をイコールでつないでみ?」

「どうやって?」

「放物線の式にも、直線の式にもyがあるやろ? やから、どっちかのyに代入して……」

「なんでy?」

「そこは気にせんでええから」

「Iじゃだめ?」

「なぜ、I?」

「I=IZUMI」

「じゃあ、yの代わりにIを代入して、次にxが……」

「なんのx?」

「何が不満なん?」

「Lがいい」

「xの代わりにLを代入して……」

「Lの根拠は聞いてくれないの?」

「……なんでL?」

「L=LEN」

「いや、LENやないRENや。R」

「じゃあ、xにLを代入して、その代わりにRを用いて……」

「方程式作ってみ?」

「えーと、I×R?」

「ちゃう、I=Rや」

「I×Rがいい!」

「それじゃ答えが出んのや!」

「なんか、曖昧な答えを出す記号あったよね?」

「ああ、ニアリーイコールな」

「それ使う」

「……じゃあ、ニアリーイコール使って方程式作ってみ?」

「うーんと、I×R≒……」

「なんなん? そのIとRへのこだわりは。んで、答えは?」

「L?」

「またL?」

「L=LOVE?」

「なんで数学の答えがLOVE? なんや! しかも、ニアリーイコール!」

「わかんない」

「おい、結局ふりだしやん!」

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