私だけが知っている

 小学校の卒業文集に書いた 将来の夢は


 平凡な会社員だった


 ずっと普通になりたかった


 みんなと同じように生きたかったけれど


 十年後も 何事もなく


 社会で生きていけている自分が 少しも想像できなくて


 きっとどこかで野垂のたれ死んでいるのだろうなと


 何となく 信じ込むようにまでなっていました




 みじめな自分 いびつな自分を認めて


 本当の姿で生きていこうと 決心するのだけれど


 受け入れてくれる人なんて そうそういないんだと気付いて


 結局はどこかで嘘をき続けるしかないんだと分かって


 少しは落ち込んだりもしたのだけれど


 前と比べて 差し引きプラスになっていれば


 それで上出来じゃないかと ようやく思えるようになって


 大分気持ちが楽になりました




 今だって普通にも 平凡にも届かない有り様だけれど


 幸い 野垂のたれ死なずに生きているのだから


 おんの字じゃないかと思うのです


 誰に嘲笑あざわらわれようと 甘いごとだとさげすままれようとも


 自分をめてあげたって ばちは当たらないと思うのです

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