〔私訳〕二十四孝(御伽草子)

工藤行人

一 大舜

隊々耕春象 紛々耘草禽

嗣堯登寶位 孝感動天心


隊々たい〳〵として春にたがえす象 紛々ふん〳〵として草をくさぎとり

げうに嗣いで寶位たかみくらゐに登る 孝感天心を動かす


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 偉大なるしゅんいたも孝行なる人であった。父は名を瞽叟そこうと云って、一入ひとしおに頑迷固陋な人で、母も心ねじけたかだましき人、おとと然許さばか象傲おご遊蕩のらくら者であった。けれども大舜だいしゅんひたぶるに孝行を尽くした。

 或る時、しゅん歴山れきざんと云う処に耕耘すきおこししていると、彼の孝心を感じた大きなる象が遣って来て田を耕し、又、とりの飛び来たって田の草をくさぎって是をたすけた。

 さて、その時分、天下あめのした御主おんあるじをばぎょう王とお呼び申し上げた。王には姫君の二方ふたり御坐おわしまし、姉をば娥皇がこうと申し上げ、いもと女英じょえいとぞ申し上ぐる。王は時しも大舜だいしゅんの孝行なることをお聞き及び遊ばされ、二方ふたり御女おんむすめを彼の后にそなえてめあわせ、つい御譲国みくにゆずりなされたのである。是こそ、ひとえしゅんの孝行の深き心より起こりしことであった。

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