第0話:舞台裏の正義
雄輝五十年(3050年)。その元号が始まって以来、
その現在でも、彼らの正義は戦い続ける。
かつて崩壊した東京都から生まれ変わったリバイブ・シティの街頭で仮面をつけた巨大オブジェクトの怪物と桃色のハート・蒼き水晶・橙色の星をモチーフにした魔法少女たちが戦っていた。
街中の民衆は彼らに釘付けになり、超雄連盟に認められた超雄警察が部外者を危険の外へ避難させる。
しかし、問題は超雄や警察さへも届かない街の路地裏であった。
「いっ、いやぁ! 助けて、誰か!
とあるOLの女性は建物の影で気付かず、舗装されてない道に転ぶ。そして、汚れた溝鼠色のフードの中年が彼女のマウントをおさえるかのように屈む。
「げへへへ、呼んでも無駄だぜ。馬鹿な魔法少女共のせいで
「そっ、そんな…ひぃ!?」
女性がフードの中から見たのは無精髭に唾液や鼻水で汚し、血走った眼光で悪魔のように嘲笑う悪漢の素顔だった。
女性が気絶しそうに青筋を立てても、悪漢は意にも介さず、下卑た笑みを浮かべながら、左手の甲に生やした刀状の刃でOLスーツを破り裂き、柔肌を顕にさせる。
「
「だから、俺たちがいる。」
「はっ!? あぐぁ!?」
悪漢は突然、水色のポリエステルのゴミ箱を頭からぶちまかされ、悪臭と暗い視界に気が動転し、倒れた。
悪漢の後ろにいたのは両腕に銀色の楕円柱状ガントレットをつけ、茶色いギンガムチェックのブレザーと白いシャツを着た男子高校生だった。
その少年は襲われた女性に避難を促し、逃そうとした。
「おい、あんた! 今のうちに逃げるんだ!」
「はっ、はい!」
女性は路地裏の出口である光ある所に駆け出すが、悪漢はすぐさま起き上がり、背を向けた女性に斬りかかろうとした。
「くそがぁぁぁぁぁ!」
「いっ、嫌ぁ!?」
「させるかよ!」
少年は何も躊躇せず、悪漢の前に割って入り、刀を受け止めようと右腕のガントレットを盾にしようとする。
その一閃がガントレットごと右腕を切断できることも知らず、切り口から血を噴き出した。
悪漢は勝ち誇ったかのように下卑た笑いを狂わせるかのように加速させる。
「ギャハハハハハ! 見たか、
「
少年はそう呟くと、切り口を見せる右腕と斬られ落ちた右手、そして、両断されたガントレットが白く眩く発光し、蒸気のような白い靄が吹き出す。その後、光と靄が彼の腕から収束し、終えれば、右腕はガントレットごとくっついたかのように言葉の通りに再構築された。
「国宝級がなんだ?」
悪漢は呆然としている間にも女性は逃げ切り、少年は臨戦体勢を取り、構える。
獲物を逃したことを知った悪漢は逆上し、左手甲の刃で再び斬り裂くように振り回す。
「再生能力がなんだ! 糞みたいにミンチにしてやるよ!」
しかし、悪漢は致命的なミスを犯した。それは彼が同じく、男子高校生の右腕・・・・・・・・・・・・を斬りつけようとしたことだ。
それに気づいた少年はその刃目掛けて、拳を振り上がらせる。まるで、恐れてないかのように。
「ばかが、その拳ごと、またぎりぃぃぃぃぃぃ!?」
自信に満ちた悪漢の刃は少年の拳によって圧し折られたと同時に悪漢の面を顎ごと殴り砕く。そして、少年はガントレットの中にある引き金を押すと、高電圧が流れた。
「いぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
悪漢は顔を焦がしながら倒れ、痙攣していた。
「異常も、問題もないな。」
「異常も、問題も大アリだ!」
その時、少年の前にドローンが現れ、少年を通話越しで叱りつけた。
「お前なぁ、
「いつもすまないな、匠。心配を掛けさせて、お前の作ったガントレットの調子は良いみたいだ。」
「あたぼうよ! アタイの自信の詰まった発明武器がそんじょそこらの変態犯罪者に…斬られちゃったけど、こちらこそごめん。まさか、ただの
「調子が良かったのは間違いない。高電圧で気絶させなければ、長期戦で苦戦を強いられた所だ。それより、あのOLの人は大丈夫か?」
「ああ、無事に警察で保護されている所を別のドローンで確認したし、他の所は"
「そうか、なら良かった。帰ってから、忠丸…"ワンダー1《ワン》"の散歩がてらに再びパトロールを行う。」
「はぁ、まったく。少しは休めよ、相棒。」
故に、
彼ら、無貌の《ネームレス》
超雄社会の自警譚(パラベラム) @kandoukei
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