第21話 数日振りのエーデラント

目を開くと、整然とした祭壇。

荒らされた形跡はなく、よく見れば神聖というより温かみを感じるような内装だ。

ということはつまり、


「エーデラントだ。」


ドアを開け、目に入ってきたのは見覚えのある街並み。

ひとまず大通りまで出て、そこからジーナの工房に向かう。


「ジーナー?いる?」

「はいはい今行きますよ~、なんだお前か。ずいぶん早いがどうした?」

「実はこんなものが手に入ってね?」


そう言いながら僕はインベントリからあの蛇……イリュージョンヴァイパーの牙と毒袋を取り出す。


「おお!この辺じゃ見な……?いや、ちょっと違うな。なあ、これはなんてモンスターのだ?」

「イリュージョンヴァイパーってやつ。幻出してくるでっかい蛇。」

「でっかいだけの蛇ならグレートヴァイパーがいるが……それの突然変異とかなのかもな。」

「かもね。それで、こいつの強化を頼みたいんだけど。」


腰に差している衝牙を軽くたたいて示す。


「なるほどなるほど。攻撃力自体はそこまで上がらないが耐久性を上げられる。それと刀身に毒をまとわせたりなんてのもできるようになるな。」

「おお!じゃあお願いしてもいいかな?」

「おう、任しとけ。これぐらいなら1日もかかんねぇな。2、3時間したら来い。」


そう言ってすぐ工房に戻ってしまうジーナ。

柔らかくして混ぜてなんとかかんとか現実ではやるはずなので、ファンタジーな技術があるんだろうか。牙が剣として使えてる時点でファンタジーだけど。

さて、結構暇な時間ができてしまった。

思えば、このゲームに来てから戦うことしかしてない気がする。

戦いだけがこの世界じゃないよねってことで、目に付いたレストランに入る。

客でにぎわってはいるが、NPCしかいない。

空いている席に着き、サンドウィッチを注文する。

窓から通りの往来をぼーっと眺めているうちに、サンドウィッチが運ばれてきた。

見た目はおいしそうな普通のサンドウィッチだ。

一口食べてみる……味が薄いな。

ショックやら依存やらを防ぐためにある程度感覚を鈍らせているらしいが、その弊害だね。

作ってくれた人にも悪いのでとりあえず全部食べて、会計して店を出る。

あ、そういえば課題があったような。

やらないわけにはいかないのでエーデラントの宿屋に行き、ログアウト。

2、3時間したら戻って来よう。


☆☆☆


結果、4時間半かかった。

これから出るだろう部分も調子に乗ってやってたらこんな時間だ。

ジーナに怒られるかもしれないな。

急いで工房に向かう。

人通りは少ない。廃人なんて呼ばれる人はさっさと次の街に行ってるだろうからな。こんな時間帯にここにいる人は少ないだろう。

ジーナの工房の手前までくれば、ジーナが派手な甲冑のプレイヤーと話していた。

名前は「トリコロール」そういわれれば兜の上についている羽的なものも赤青白だ。


「お。おせぇぞコルク野郎。」

「ごめん。ちょっと用事ができちゃって。」

「まあいいけどさ。ちょうどいいや、お二人さん、ちょっと待っててくれ。」

「というかこの人は?」

「お客さんだよ俺の。お前からの依頼が俺の仕事の全部なわけないだろ?」


そう言い、工房の中にさっさと入って行ってしまうジーナ。

え、気まず。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る