第23話:時が来る
シシアが北の領土を制覇し、四天王閣の一人を瞬く間に仕留めた。シシアにとって、敵は存在しないに等しかった。
1ヶ月もの間、シシアは一度も敵に見つからず、さらには“奴”──天城にも気づかれることなく行動していた。シシアは
最強のかくれんぼファイターなのだ。ちなみにシシアは肉体的な強さはその辺の
シシアの狙撃技術は圧倒的で、周囲の魔人たちシシアの存在に気づくことすらできなかった。影のように、シシアは音も立てずに獲物を仕留め、確実に数を減らしていく。シシアに狙われた人は幸運だ、何も分からずに即死するのだから。
シシアは、自分の役割を完璧にこなすことで、仲間たちの戦いを支援していた。
「ん・・・」
シシアは肉体的な強さが無く、体力も低い。故に活動時間は短期間なのだ。それと極度の『めんどくさがり屋』だ。基本的にインドトア派だ。天城が来る前は文字通り自宅警備をしていた。
こんなにも身体を動かすのは久しぶりなので、ドット疲れを感じ取るシシア。
ふぅ〜と息を吹き。アジトに戻ろうとしたが、何か違和感を感じ取った。それは久しく感じてない『視線』だ。本来シシアが実践すべき事。
“見る“事はあっても、“見れる事は“無かった。だからこそ長らく意識してない“危機感“。
だから外は嫌いなんだと、シシアはふと、思う。
世の中は広い、自分では想像を絶する化け物も存在する。リオンと言う男もそうだ。ヘラヘラしている態度だが、シシアは奴の実力を正確に見抜いていた。
嫌になる──と。シシアは上を見上げるのが嫌いなので基本的には意図的に見ないようにしている。
よくいえば自分より強い奴を意図的に避けていたのだ。それが仇となった。
「何をしている。」
その声と共に、シシアは即座に振り向いて狙撃を放った。有無を言わせない相手が味方の可能性とかを一切も考えない反射速度だ。もし味方なら「すまん」と思うだけだ。最もその可能性は万が一にも無い。
シシアは人を見る目が冴えている、それは関わりたくない人との境界線をハッキリとしているからだ。
常に人目を気にしているシシアだからこそ瞬時に理解出来た、この邪悪なエネルギーの波長は間違いなく“敵“だと。本能で理解出来た。
だから、迷いなく引き金を引いた。しかし、驚くべき事にその相手は弾を至近距離で受け止め、平然と立っていた。
「君が“白い死神”・・・ですか?」
現れたのは涼しい顔立ちのフレアだ。雰囲気は穏やかで波を打つようなエネルギーだ。シシアの神経が危険信号を出している。彼こそが天城の最も信頼されている部下だった。
「ん・・・」
シシアは無言のままだったが、その目には決して油断していない鋭い光が宿っていた。狙撃は“タメ“がある。連射機能は常備されてない。このレベルとなると一秒の時間が命取りになる。つまり──
「沈黙ですか、まぁ良いでしょう。では、死にさらせ。」
フレアは初手から全力を出した。
ユニークスキル『異能型:乾燥』を発動させ、空気中の水分やシシアの体内の水分を強制的に奪い取っていく。シシアは瞬時に状況を把握した。自分の体から水分が抜けていく感覚に、彼女の脳内は警戒感で満たされた。
しかしもう既に遅かった、不覚を取られたシシアはこういう時の対策を講じてない。
フレアのスキルは強力で、彼女の機動力を奪うには十分だった。
「
「さて、行きましょう」
フレアは冷徹な笑みを浮かべながら、優雅に木から降り、再び天城の元へと向かっていった。
天城が居なかったらシシアの居場所すら掴めなかった、何故分かったのか、理解出来たのかフレアには分からない。深淵たる考えはフレアには読めないのだ。
やはり天城は化け物だとフレアは再度認識する。
♢♢♢
クリムゾンの体は緊張で固まり、目の前にいる“奴”──天城を見据えた。これまでも幾度となく領土を奪い返しては、最後の瞬間に天城が現れ、勝利を奪い去っていった。
なぜ殺されなかったのか、その理由はわからないが、考えても意味がない。今は目の前の敵に集中するべきだ。クリムゾンは呼吸を整えて敵と向かい合う。
「久しぶりだな、紅の戦士」
天城
「今度こそお前を殺す」
「一度でも出来たことがあったかよ」
天城は冷たく嘲笑しながら応じる。その不敵な態度は、これまでの戦いの圧倒的な優位性を物語っていた。天城は自分が負けるなど微塵も思ってない。
そこにチャンスがあると。
こうして、またしてもクリムゾンと天城の戦いが幕を開けた。これが今までと同じ結末を迎えるのか、それとも──今回は違うのか。その答えは、この戦いの行方にかかっている。
♢♢♢
アクアが最初に飛び出した。余程お姉ちゃんが心配だったらしい。俺とダクネスも急いで後を追おうとした瞬間、アクア達との間を遮るように不審な男が現れた。
「こいついつの間に!」
ダクネスが大きく声を上げる。それを他所に奴は不敵に微笑みながら自己紹介を始めた。どうやら転移魔法を使ったようだ。
「こんにちは、俺はフレアと申します。さて、貴方達には申し訳ありませんが、我らが王は邪魔をさせることを嫌うので足止めをさせていただきます。」
その言葉には、余裕すら感じられる。エネルギーの量は四天王閣の誰よりも、ハルクよりも上だ。
それどころか間違いなく
「そりゃ律儀にどうも。んじゃ早速だけど地獄に招待してやるぜ!!」
ダクネスは刀をクルクルと回す。フレアはダクネスの失礼極まりない言葉を聞いても笑みを崩さない。
先に動いたのはダクネスだった。ダクネスの攻撃は決して弱くはないが、フレアはあっさりとその攻撃を避けてしまう。
「なるほど、子供ながら凄まじい圧力だ。流石は戦闘の申し子
子供と大人のような力の差だ。しかし魔人の性なのかフレアはダクネスを直ぐに殺そうとはしない。
遊んでいるようだった。それに気付いたダクネスは声を荒らげ攻撃もお粗末になる。
「舐めてんのか!ゴラァ!」
ダクネスの一挙一動の動きは風を切り大気を穿つ、本当に子供とは思えない力だ。どこにそんな力を内包しているのかとフレアは思う。
「そうですよね、悪気はありますよ。ですから終わりにしましょう!これ以上私とて
いちいち癪に障る言葉、ダクネスは更に苛立ちを募らせる、その行動がフレアの手の上で転がされていると知らずに。
ダクネスの攻撃が大振りになった、それと合わせるようにフレアはカウンターを綺麗に決める。
その技は『
敵に接触することで水分を吸収し、衝撃を与える一撃。
敵は即座に乾燥状態に陥り、行動速度が低下させる、ダクネスは防御を取ることが出来ずにまともに攻撃を食らった、血を吐きながら転がるダクネス。あれはすぐには立てないだろう。
「この程度か・・・」
フレアは興味を無くしたように視線をずらした。
「水に依存している生物じゃ俺には勝てない。」
フレアは俺に視線を向けた。降参しろという意志を感じる。確かにこいつは強い。けど唯一の欠点は
「肌身で相手の力量が分からないことだ!」
「お前はどうする──ッ?!」
相手が有無を言う前に、俺は渾身の一撃をフレアに叩き込んだ。軽く殴った程度だが、かなり効いたらしい。フレアは大きく吹き飛ぶ。それでも受け身をとって衝撃を軽減したようだ。
「ゴッフ・・・なるほど。」
血を吐きながらも、フレアは俺から目を離さない。
「いいだろ、なら本気で相手してやるよ。」
フレアはスタートを切る、速い──けど追える!
奴の攻撃を交わしつつ、俺は反撃する。俺の攻撃は的確に奴を捉えている。
フレアは徐々にダメージが蓄積されている。それでもフレアは諦めることはない。
「終わりだ!」
フレアは一瞬で俺の隙を取り触れる。そして「乾伐」を発動させるが、俺には効果は無い。
「悪いな、俺人間だけど、人間じゃないんだわ。」
俺は
フレアは抜こうと、スキルをふんだんに使用するが手は抜けない。
そのまま飲み込んでやろうと思ったが、銃声が鳴り響いた。それは間違いなくシシアだった。
シシアの弾丸はフレアを吹き飛ばした、そう吹き飛ばしたのだ。俺の目の前で頭が吹き飛び血が振りかぶる。脳みそが飛び出るのをまじかに見た。グロい。
そしてそのまま倒れる。
「ん・・・」
と、さりげなく降りてくるシシア。
ダクネスもムクっと立ち上がってきた。そこまで重症ではないらしい。少し安堵する。
「シシア、怪我は無いか?」
「ん・・・」
何も言わない。シシアは単独で行動していたので、何をしていたかは知らないが・・・まぁ生きてるならいいか!と、半ば思考放棄をする。
ドーンと戦闘音が鳴る。クリムゾン達が戦っている証だ。俺は急いで向かった。
この瞬間、仲間が集まったことで戦況は一変した。俺たちが一丸となれば、どんな敵でも打ち破れるはずだ。フレアが倒れたことで、若干の隙が生まれた。
「行こう、みんな!」
俺は声を上げて、クリムゾンたちの元へ向かう。シシアとダクネスも続く。
すべてを終わらせるため、そして自由を取り戻すために。・・・別に俺は関係ないけど
♢♢♢
すみません色々立て込んでしまって!遅くなりました!1000視聴ありがとうございます
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