第33話 冒険者ギルドへ
「だしに使っちゃってごめんなさい!」
大聖堂から出て直ぐに謝られた。アリスは、両手を合わせて頭を下げている。
「あの人いつまでも付きまとってしつこいの。こうでも言わないと諦めてくれないと思って…」
「そう、だったんだ」
確かに人前で言われたときは少し驚いたけど、凄く嬉しかった。改めて好きって言われた事に。
「良いよ。正直嬉しかったし。ぼくも嫌いじゃないし」
「グ、グリーン?!」
「ごめん、自分の気持がよく分からなくて直ぐにはっきり言えなくて…今なら言える。アリス、きみのことが好きだよ」
人目をはばからずアリスは、ぼくに抱きついてきた。信者さんからジロジロと見られている気がする。
「あ、アリス流石に恥ずかしいよ」
「嬉しすぎてごめん、しばらく余韻に浸らせて…」
人が大勢いる中でぼくとアリスは、しばらく抱きしめあっていた。
*****
ぼくとアリスは当初の予定通り、冒険者ギルドに来ていた。時間は夕方近くになってしまったけれど、まだ営業をしていたので良かった。あと一時間で閉店らしいけど、人は思ったよりも大勢いた。
「あれ?今日はどうしたの?お二人さん」
マリリアさんが、ぼくたちを見つけて近づいてきた。
「ちょっと見学しようかと思って・・ってうわ」
ガタイの良い、ギルド長がいつの間にかぼくの後ろに来ていた。赤い髪を掻きながら、嬉しそうに話しかけてくる。
「いや、まさか来てくれるとは思っていなかったよ。他にも誘われていたみたいだったからな」
ぼくはラオに肩を叩かれた。
「ギルドってどんな感じなのか一度見ておきたいと思いまして・・」
「まあ、見ての通り男ばかりのむさくるしいところだ。受付は女性が担当しているがね」
室内は薄暗く、独特の雰囲気があり酒場が似た感じだと思う。男性が確かに多いが、女性もちらほらみかける。剣士、魔法使い、全身鎧の人もいる・・色々な職種の人がいるみたいだ。
「食事ができるスペースもある。そこの掲示板は冒険者が依頼を受ける用紙がはってあるんだ」
言われてみれば、奥にはテーブルがあり酒を飲みながら食事をしているみたいだった。
「知っていると思うが、冒険者は危険な仕事で怪我も多い。なので回復魔法を使えるグリーン君を正式に雇いたいと思っていてね」
「なるほど。そういう事ですね」
地位や名誉じゃなくて、本当に必要とされている気がした。
「では、この条件なら・・」
ぼくはギルド長に、雇ってもらう雇用条件を伝えた。
「まあ、それでも構わないよ。来てくれるだけでも有難いし」
良かった、言ってみるものだな。意外と融通が利いて助かった。これで資金面で不安は無くなった。
*****
「お休みが週に二日ですか?」
治療院で、シルビアさんに伝えた。
「治療院の休日は二日で、出張って事で一日だけ冒険者ギルドで治療をすることになったんだ。ぼく一人で行ってくるよ。一日金貨3枚もらえるしね」
「ほほ~そういう手がありましたか・・。これで当分値上げしなくてもやっていけそうですね?」
ぼくの考えがシルビアに見抜かれていた。
「・・まあ、そういう事だよ」
お金というものはアイディア次第で増やせるものらしい。今回は運が良かったのかもしれないけど。
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