第30話 機嫌
バタン!
お店のドアは閉められてしまった。グリーンに会いに来たら、アリスがいた。これは一体どういう事だろう。
「若造、お前のせいで追い出されたじゃないか!」
「何を言ってるんだ?誰のせいでも無かろうよ」
老人と、ギルド長はなにやら言い争っているがわたしには関係ない。アリスの事を少し調べてみるとするかな。大神官なので周囲の人間を調べるのは造作もない事だ。
「今日は日が悪かったみたいですね。皆さまそれでは失礼しますね」
わたしは白いローブを翻して馬車に乗り込んだ。またここに来ればいいだけの事だ。
*****
「アリス、大神官と知り合いなんだ」
「ああ、うん、そうだけど?」
わたしたちは奥の休憩室で昼食を取っていた。いつもなら楽しい時間のはず・・なんだけど。いつもよりグリーンの口数が少ない。気のせいだろうか?もくもくと料理をたべるグリーンに、シルビアも異変を感じているらしい。
「このスープ美味しいですね」
シルビアがグリーンに話しかける。
「そう?」
グリーンが首を傾げて短く答える。「何を言ってるんだシルビアは」とでも言いたげな感じだ。
「どうしたのグリーン。何か気に入らない事でもあった?」
私はたまらず口をはさむ。
「え?別に何も無いよ」
*****
大神官って美形だったな。ぼくはそんな事を考えていた。アリスの知り合いだと言う。アリスは教会で働いていたシスターだ。知り合いでもおかしくはない。おかしくないんだけど。
ぼくは黙ってしまっていた。食事中、二人に話しかけられたが、話しをしたくない。自分でも機嫌が悪いのはわかっている。でもイライラする。
「ごめん。ちょっと外出てくる」
食事を残して、ぼくは店を飛び出した。町を目的もないまま、ぶらぶらと歩く。分かってる、これは嫉妬だ。ぼくはいつの間にか、アリスの事が好きになっていたみたいだった。
「頭を冷やした方が良いな・・」
いつの間にか町の噴水の前に来ていた。ぼくがずっと不機嫌だと、仕事にならない。
ぱしゃん!
ぼくは、冷たい噴水の水を頭からかぶった。
「風邪引いちゃうでしょ。何やってんの」
後ろから追いかけて来たのか、アリスが困った顔をしていた。
「・・ごめん」
「風邪引かれたら困っちゃうんだからね」
アリスがぼくを抱きしめる。
「服が濡れちゃうよ・・」
「いいのよ。このくらいなんてことないわ」
ぼくって何て心が狭いのだろう。温かいアリスの体温を感じていると、気持ちが落ち込んでいたのが元気になってきた。ぼくってゲンキンだな。
「グリーンはそのままでいいのよ。誰がどうとか気にしなくて良いの」
アリスは、まるでぼくの心の中を読んでいるみたいで・・少し恥ずかしくなった。
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