第23話 シルビアのこれから
「「お師匠様!一生ついていきます!」」
あたしは声に出して叫んでいた。本にしか書かれていない伝説の魔法を、グリーンさんは事もなげにやって見せたのだ。しかも試しにとか言って。それなのに、この方は事の重大さを全く分かっていないみたいで。
「是非!お試しであたしを使ってください。一応計算も出来ますんで!」
「シルビアさんって言ったっけ。困ったな・・雇うって言っても、お金ちゃんと払えるか分からないよ?収入も安定していないし」
「だったら、あたしが営業でもします!散々やらされましたので!」
「やらされた?」
やばい!これは言わないでおこうと思っていた事だ。だけど言わないと誤魔化しきれない。
「以前、何処かで働いていたの?もしかして・・?」
「ごめんなさい。あたし、隣町の治療院で働いていました・・黙っているつもりはなかったんですけど・・」
あたしは目を反らした。ここに来たのは就職先を探すため。以前いた治療院の院長がグリーンさんを殺そうとしていたらしい。そんな物騒な店にいたとなれば、きっと雇ってもらえないだろう。
グリーンさんは少し驚いていたようだったけど。
「分かった雇うよ。だけどお給料はどのくらい出せるか分からないけどいい?」
「あ、有難うございます」
あたしはグリーンさんに頭を下げる。真実を知ってもあたしを雇ってくれる。本当に感謝しかなかった。
「良かった・・」
治療院が廃業になった時は、どうしようかと思っていたけれど・・。
「今度の所はどうだろう。またこき使われるのかな・・」
**
家に戻り、燭台に火をともした。あたしはガラ町で一人暮らしをしている。
昔、親に言われたことを思い出していた。
「あんたはグズだね。何にも出来ないくせに」
毎日のように母親に罵倒を浴びせられた。あの頃は母親のいう事が正しいと思い込んでいた。小さい頃からいつも言われていたからだ。気に入らないと殴られた。あたしはいつも怯えていた。
そのうち、殴られたアザを自分で治せるようになっていた。最初はよく分からなかったけれど。後になってこれは魔法というものだと知った。
ある深夜、両親の声が聞こえてきた。
「
あたしが15歳になった頃の事だった。偶然聞いてしまい、怖くなって家からこっそり逃げ出した。最初は大変だったけど、何とか働けるようになり生活できるようになった。たとえ職場でこき使われていても、暴力は振るわれなかったから。
あれから5年が経っていた。
「あの頃よりだいぶマシね。仕事も決まったし、これで何とか生き延びられる」
あたしは両腕を上にあげて、体を思い切り伸ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます