第6話 本来の教会の目的

私は教会の外をホウキで掃いていた。それだけならいつもの日常なんだけど。


「こんにちは」


声をかけられて、顔を上げると、20代くらいの二人の冒険者が立っていた。ひそひそと話している。男性の剣士、女性の魔法使いのパーティのようだった。


「こんにちは。教会に御用ですか?」


「本当に教会で回復魔法を受けられるのか?」


「はい、大丈夫ですよ。誰か怪我をされているんですか?」


「いや、ただ確認したかっただけだ。何かあったらすぐに頼れるだろうからな」



**



「「どいた!どいた!」」


筋肉質の男性が大声をあげて走ってくる。背中に怪我をした青年を抱きかかえていて、怪我をしたようだった。


「畑仕事中、イノシシに後ろから襲われたらしい。意識が無い」


背中の裂傷がひどく、出血も酷い。


「そこの長椅子に寝かせてください。すぐ呼んできますから」


私は慌てて、グリーンを呼びに行った。



****



ぼくは両手を青年にかざして、言葉を唱える。


『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』


淡い光が青年の全身を包み込む。酷かった傷は跡形もなく消え去っていく。直ぐに意識を取り戻す青年。


「すげえ~本当なんだな」

「回復魔法初めて見たわ」


「怪我は治っていますが、しばらく安静にしていてくださいね」


ぼくは、怪我をした青年に話しかけた。出血した血は直ぐには戻らないのだ。血は、時間が経てばゆっくり増えていくらしい。


いつしか、用もなく教会を訪れる人が増えた。回復魔法を見たい見物人だ。そう都合よく怪我人が現れるとは限らないのだけど。


「最近急に、人が増えてきたみたいだけど、大丈夫?」


「ん?」


ぼくは汗を拭っていた。魔力を使うと体が熱くなるみたいで、やたらと汗をかくのだ。


「ああ、うん。まえほど怠く無くなったし、平気だよ」


「なら、いいけど。頑張り過ぎて倒れちゃうのも心配だしね」


「でも、なんだかいよいよ教会らしく無くなってきたわね」


「え?」


「何でもないわ」


最近5人以上、人が来ている気がする。魔力は何とか持っているみたいだ。さすがに夕方になるとくたくたになっていたけど。



グリーン 15歳 女神からスキルを貰った人族

スキル 回復魔法 初級レベル3

魔法 ヒール(5)       

HP30/60

MP5/40



*****



ここはミルドス町のリグルス治療院。回復魔法で治療をする施設だ。入院するベッドも完備されていて立派な施設だと思う。


「最近妙な噂を聞いたのですが・・」


わたくしは院長に、最近聞いた噂を話した。隣町の教会で回復魔法を使って治療をしているという。しかもここより安いので、人が殺到しているらしい。どこまで本当だか分からないが。


「あそこの教会は、若い女が一人で応急手当をしているだけのはずだが・・ミイケ念のため調べてみろ」


「承知いたしました」


院長は、指にはめている金の指輪をしきりに撫でていた。

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