第5話 女神さまにお願い
「すみませーん。治療してもらいたいんですが」
女性の声が教会に響いた。
次の日も一人、また一人と毎日誰かしら来るようになった。最初は少し警戒して訪れる人がほとんどだ。
「おい、本当に治してもらえるんだろうな?こんなに安く?」
教会の中に入り、キョロキョロ辺りを見回す男性。がっしりとした体つきで、背中に大剣を背負っている。肩に包帯をぐるぐる巻かれていた。
「最初は疑っていたけど、町の人に聞いたから大丈夫よ」
茶色いローブを被り、大きい杖を持った女性が男性に寄り添っていた。
「座ってもらっていいですか」
ぼくは男性に長椅子に座るように促した。
何だか疑いの目を向けられているけど・・。
「料金は一律で銀貨2枚です。心配しなくても大丈夫ですよ」
ぼくは笑顔で話す。
「実は・・怪我の治りが遅くてな・・隣町のミルドスで治してもらおうと思っていたんだが、ここでも治せると聞いたから」
思っていたより傷が深いらしい。
動けないと仕事が出来ないので、このままだと金銭的に苦しくなる為治療に来たみたいだった。
「すぐ終わりますよ」
ぼくは意識を集中した。
『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』
淡い光が、傷の部分を包んでいく。傷がみるみる癒えていった。
「おお!痛くない!」
男性は恐る恐る肩を動かした。包帯を外すとキレイな皮膚が見える。
「こりゃすげえ!疑って悪かったな」
ぼくは銀貨4枚を受け取った。
「あの・・ちょっと多いんですけど」
「気持ちだよ、気持ち、とっときな!」
**
「むう~」
患者が去ってから、アリスが頬を膨らましていた。どうしたのだろう。「理由を聞いても何でもない」って言って教えてくれない。何でもない訳ないのだけど。
「グリーンばっかりずるい」
アリスが呟いた。
「ん?何が?」
「何でもない」
何でもいいけど、機嫌を直してほしい。アリスはもくもくとお掃除をして、畑仕事をしていた。
「ぼくが何か悪い事をしたのなら謝るから!」
「グリーンは何もしてない。ちょっと私がイライラしてるだけよ」
*****
私は、自室のベッドの上で私は毛布にくるまっていた。分かってる。グリーンは良い事をしているって。私が何にも役に立っていない気がして、イライラしているの。
だけどこんな事言えるわけないじゃない。
「私って心の狭い人間だったんだなぁ・・」
ベッドで毛布を握って顔をうずめた。
私も魔法が使えたらなぁ。
「グリーンばっかりずるいです。女神様、私にも何か力を下さい」
私は両手を組んで、初めて自分の事をお祈りしてみた。
何だか段々欲張りになっている気がするけど、気のせいだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます