第2話 起床

体がふわりと浮上し、視界の黒いもやが白い光に変わるのが分かった。


「ん………」


目をあける。

何かよくない夢を見たような気がするが、あまりよく思い出せなかった。


「なんだ、ここは……?天国……じゃないよな」


周りをキョロキョロと見渡す。

どうやら俺はベッドに寝かされていたようだ。


だだっ広い部屋だが、ベッドとサイドテーブル以外は置いていないらしい。扉は…あった、真っ白だな。


土のような壁と、木でできた床。暗めの照明も相まって、まるで洞窟の中のようだ。


しかし、ベッドと扉だけは不自然なぐらいに白い。

なんというか……悪目立ちしている。



「病院って線もなさそうだし、死んじまったのは確定だろうな。首の違和感も全くないし、失敗できたような感じもなかったし、期待はしてなかったけど……」


清潔そうな布団と周りに置いてある水やタオル。いつから寝ていたのかはわからないが、寝ている間、誰かがを世話してくれていたのだろう。


「だけど……ここはどこなんだ?死後の世界って感じがしないぞ」


とりあえず部屋を出て、俺の面倒を見てくれていた人を探そう。そう思って立ち上がる。


思っていた以上に呆気なくドアが開く。細い通路になっているようだ。


天井はかなり低い。

167cm、友人たちから人権なしとからかわれていた俺でも、頭がぶつかるんじゃないかとヒヤヒヤしてしまうほどだ。


「外に出てみるといよいよ洞窟みが増すな。壁もゴツゴツだ。けど、手に土がつかないんだよな。」


結構清潔そうだ、と呟いて、俺はゆっくりと歩き出した。暗いが、何も見えないというほどではない。


1分もしないうちに、広いところに出て、視界がパッと明るくなる。

どうやらこの先は2本道になっているようだ。

そして分かれ道の真ん中に置いてあるのは……。


「鏡か?俺、首に縄の跡とか残ってたりするのかな」


駆け寄って確かめてみる。



「……は!?!?誰だよこいつ!!!!!!!」


思わず出てしまった絶叫に、俺は慌てて手で口を塞ぐ。


俺は平凡で、どちらかといえば隠キャじみた地味な容姿だったはずだ。だが、これは…。


短く切られたボサボサの黒髪は、紺色でツヤツヤした、肩まである少し長めの髪に。


茶色の細いツリ目は、瞳の色こそ変わっていないが大きくて美しい丸い目に。


もともと白かった肌はますます白くなっているが、徹夜でゲームをしていた以前の肌色と違い、不健康さは消えている。


美しく整った顔は中性的で、男の顔、というか俺自身の顔なのに惚れてしまいそうになるほどだった。


「これは……俺、生まれ変わったのか…!?!?」


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