空模様

時無ロロ

空模様

 僕は空を見るのが好きだ。

 あのサッとした淡い青はなんとも言えない。しいて言葉にするなら清々しくも、瑞々しくもある。季節によっていくらか色味が変わるのもまた美しい。たまに世間話でこの話題を出すが、皆そこまで思わないらしかった。こんなに身近にある幸せを感じられないなんて、なんと勿体無いことだろう。


 最近は天気が悪い。雨は降らずとも、薄い雲が空全体にかかり白っぽい。白濁のフィルタを通したかのようで、僕の好きな淡い青は見えやしない。残念ながら今日もそうらしい。

 気候のせいか、体調も優れない。熱はないものの、少し鼻水が出ている。稲刈りの季節だから花粉の影響かもしれないが。


 こんな日は寝てしまうに限る。幸い今日は大学もバイトも無い。寝ながら鼻水を垂らしては堪らないと、雑にティッシュ箱を掴んでからベッドに腰掛ける。それを軽く投げるようにベッド脇に置いて、気が付く。

 そのティッシュ箱には、実写の空のプリントが施されている。僕の好きな淡い青。所々に白い雲が散らばっている。そういえば、スーパーで安売りしてたのをまとめ買いしたのだ。値段に気を取られて、箱の柄なんてろくに見ていなかったけれど。


 本物には敵わないが、綺麗だ。

 こんなに身近にあった空を見落としていたなんて、僕も人の事を言えたものじゃない。自嘲の笑みが溢れる。

 ティッシュ箱を枕元にそっと置き直し、起きたら味噌汁でも作るかなと考えながら、ゆっくり目を閉じた。

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