第26話 お風呂で誘惑大作戦! side神楽坂茜
結局、蒼太君は私の家に泊まり、明日の朝一緒に学校へ行くことになった。
一度蒼太君には客室で休んでもらい、今日の予定をお母さんと由里の3人で話し合う。
「お母さん!ど、どうしよう~……。蒼太君と一緒に一晩過ごすなんて我慢できなくなっちゃうよ!」
私は頭を抱えて、お母さんにそう言った。
お母さんが私の両肩を掴み、鋭い目で私を見つめる。
「落ち着きなさい、茜。あなたは今日、蒼太君を口説き落とすのよ」
「そそそそ、そんなの無理だよ!」
あまりの急展開に混乱して思わず否定してしまう。
「はぁ……、私に蒼太君を独り占めすると宣言した時の気合はどこ行ったの?」
「だ、だって……」
「全く……、せっかく裏で色々と手を回してあげたんだからしっかりしなさい!」
「やはり車を故障させたのは奥様だったのですね……」
由里が私の後ろでそう呟いた。
「そうよ。茜の事だから今日は仲良く遊んで、少しずつ距離を縮めていけばいいと思ってたんでしょう?」
「ぎくっ!」
今日、家に来るように誘えと言ったのもお母さんだ。
蒼太君と一緒に遊べると浮かれていたが、お母さんはどうやら今日で勝負を決めるつもりだったらしい。
「天気が荒れるこの日に車を故障させ、タクシーも来れないようにしたわ。蒼太君が今日この家に来た時から泊まることは決まっていたのよ」
「そ、そんな……。その為だけに車を壊したのですか?決して安い車ではありません、修理代にいくらかかるのやら……」
由里は真っ青な顔で、お母さんを見る。
「修理代なんて大した額じゃないわ。それに今日直接話してみて、蒼太君にはそこまでする価値があると判断したわ」
お母さんは由里を真っ直ぐ見つめそう答えた。
「お母さん!でもこんなの蒼太君がかわいそうだよ!女しかいない家で一晩過ごすなんて怖がられたらどうするの!?」
お母さんはさらに目を鋭くさせ、私を睨む。
「茜、いつまでそんな事を言っているの?蒼太君が茜以外の女と恋人になってもいいの?」
蒼太君が他の女と仲良くしている姿を想像してしまい、胸の奥でドロドロとした感情が渦巻く。
「それはダメ!絶対に嫌っ!!」
私は思わず、大きな声を出してしまう。
「そうだった……、早く関係を進めないと蒼太君が他の女に取られちゃう」
「お、お嬢様……」
「それでいいのよ、茜。その感情こそが神楽坂の証拠よ」
私に根拠のない不安と焦りが押し寄せてくる。
拳を強く握り、お母さんを見る。
「ふふっ、いい目ね」
お母さんは、私の目を見ながら唇の端を上げる。
「手段は選ばない。でも蒼太くんを怖がらせるのだけはやめて」
「安心しなさい、蒼太君に怖い思いなんてさせないわ。今日一日、家にいる女性にはなるべく蒼太君に関わらせないようにするわ。茜以外はね」
「私以外……」
「そうよ。今日と明日の朝までに出来るだけ関係を進めなさい」
「お母さん、私どうすればもっと蒼太君と仲良くなれるかな?」
「あなた達の様子を見ていて、どのくらいの仲かは把握できたわ。そうね……、まずは−−」
◇
「し、失礼します……」
私は横開きのドアを開けて、とある部屋の中に入る。
「え?」
蒼太君は私を見つけて、大きく目を見開き、固まったように動かなくなる。
「そんなに見られると恥ずかしい……」
今の私の姿を蒼太君に見られて、心臓が激しく鼓動し、顔が熱くなる。
「いやいや、茜!何で入って来てるの!?」
「そ、それは……」
蒼太君の質問に何と答えたら良いか分からず、目を逸らす。
何故ならここは……
「ここお風呂場だよ!?」
腰に一枚のタオルを巻いた蒼太君が叫んだ。
蒼太君の声がお風呂場に響き渡り、何度も跳ね返って来るように聞こえる。
は、恥ずかしくて死にそう!
今すぐ逃げ出したい気持ちをグッと堪え、蒼太君の顔を見つめながら口を開く。
「お、お背中流しに来ました!」
お風呂場の熱と緊張で頭が回らず、思わず敬語で話してしまう。
「いや、それより体隠してよ!」
惜しげもなく白い肌を露出させ、私の生まれたままの姿を見て、蒼太君は顔を赤くしながら目を逸らす。
照れてる蒼太君可愛い……。
でも見ないようにしてるって事は私に魅力ないのかな?
「そ、蒼太君。私の体、変じゃない?」
「え?」
「蒼太君はおっぱいもお尻ももっと小さい方が好きなのかな?」
そう言いながら私は、自分の少し大きめの胸を触る。
「大きい方が好きだし、むしろ綺麗すぎて今にも勃ってしまいそう……ってそんな話をしてる場合じゃない!とにかく体隠して!」
蒼太君はそう言って私に背を向けた。
「本当?嬉しい……」
私はそう呟くと、蒼太君の背中に体をピタッとくっ付ける。
「ひっ」
蒼太君は小さな声を上げると体が固まった。
「蒼太君の背中大きい……」
その大きな背中を指先で優しくなぞる。
「ちょ、ちょっとくすぐったいよ!」
そう言うと蒼太君は体を捻った。
逃がさないように今度はお腹に手を回して、強く抱きしめる。
「ふふっ、さっき抱きついた時と感触が違うね」
「そ、そうだね」
「服着てる時と裸、どっちが好き?」
「え?そ、それは……」
「私は裸で抱き締める方好き。蒼太君の事をもっと感じられるから」
「俺もどちらかと言うと裸の方が……ってそうじゃなくて!茜、どうしたの!?なんか様子が変だよ?」
「ごめんね、困らせるつもりはなかったんだ……。でも蒼太君ともっと仲良くなりたいから一緒にお風呂入りたい」
蒼太君の背中に顔を押し付けながら言う。
「背中流してあげるから、お願い」
本当はこんな事を言って蒼太君を困らせたくない。でも私はここで引くわけにはいかなかった。
関係をもっと進めないと蒼太君が他の女に行っちゃう。
そんなの耐えられない、蒼太君がいなくなったら私は生きてる意味がない。
心の中でそう思い、自分を奮い立たせる。
「わかったよ。じゃあ背中流してもらおうかな」
「本当!?」
私は蒼太君から離れて、嬉しさのあまり小さく跳ねる。
跳ねた時に豊かな胸がぷるんと揺れた。
「うん、でも一つだけお願い聞いてもらっていいかな?」
「なに?」
「頼むから、体にバスタオルだけ巻いてくれない?」
私はしぶしぶ、バスタオルを取りに脱衣所に向かった。
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