第2話 人生は劇的だ、劇が人生をもとにしてるからな
「なんだこのガキ。ここで何やってんだ、馬鹿なんじゃん?」
沈み終わった夕日を尻目に、崖から飛び降りようとしていた神崎鷹志は声を聴く。目の前には白い
「お前俺の声が聞こえるのか?ずっと見てくるってことは俺が見えてるのか?」
え、何コレ、怖いんだけど、と鷹志がつぶやくと、それをきっかけにしたのか、だんだん輪郭がはっきりしてきた。そして手のひら大の大きさになり、目と口がはっきりとした輪郭を伴ってきた。とりあえず鷹志はガードレールを跨いで、急いで自転車に乗って去ろうとする。
「いやいやいや、待て待て待て。オレが質問したんだから答えろやクソガキィ」
それを聴いた鷹志はいよいよペダルに足をかけて漕ぎ出そうとする。その瞬間、横から頬を柔らかい何かでぶん殴られた。顔を反らしても受けきれず、自転車ごと倒れてしまった。
「質問されたらしっかり答えるんやぞ、おいこらクソガキィ」
見ると白い靄はちょっと青白い何かに変容していた。
「答えろ言うてんねん、おいコラぁ」
すいません、今急いでるんで、ごめんなさい、と言って自転車を鷹志は自転車を立て直すと再び漕ぎ出そうとした。
「待て、言うてんねん」
というと、また柔らかい何かが鷹志の肩をつかんできた。
「逃がさへんよ~」
がっちり肩をつかまれた鷹志はやっとここで逃げ出すことを諦めた。はあ~、なんなんですか、と言って振り向くと、白い靄だった何かは手を引っ込めた。
「そもそも、お前がここにオレを連れてきたんやで」
白い元靄の言葉に鷹志は首をひねった。いや~、知らないですけどね~、人違いじゃないですか、と言って鷹志は再び足をペダルにかけた。
「いや、絶対お前だ。」
その白い元靄の言葉に思わず鷹志は振り向いた。
「オレはガムの神様だからな」
は~、そうなんですね、と言って、鷹志は会釈をしてから自転車を漕ぐために前を向いた。
「お前さっき、ガムを崖の下に吐き捨てただろ」
というその言葉に鷹志は漕ぎ出すのを辞めた。
「そう、そうだ、オレさっきガム吐き捨てたんだった。やっぱだめだよな~って思ってたんだよ。でも、もう死ぬからいいかなって思ったんだけどな。やっぱだめだったよな。怖くなっちゃったんだよね。死ぬのが。でも今日がオレ初犯だし。いつもは捨て紙にきちんと包んでから捨ててるし。うんうん、今度からやらないように気を付けます。それじゃ。」
そう言って鷹志は前を向いて自転車を漕ぎだそうとした。そして、案の定、ガムの神様にがっちり肩をつかまれた。
「責任、とってくれるよね」
えっ、鷹志が振り向くと、ガムの神様とめちゃくちゃ目が合った。
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