16 私のこと好きなの?
私のこと好きなの?
別に。全然好きじゃないよ。(嘘)
「今、変なこと想像してるでしょ? いやらしい顔してるよ」揶揄うような声で秋が言う。
「秋が変なこと言うからでしょ? 私のせいじゃない」と(少し顔を赤くしながら)私は言う。
「裸と孤独はにている」
秋は言う。
「にてるかな?」
私は考えてみる。にているようにも思えるし、にていないようにも思えた。
十五時になると秋は「今日はここまで」と言って絵を描くことをやめてしまった。
私は自由になりうーん、と言って背筋を伸ばした。
森に静かな雨はまだ降り続いている。
「秋。『森秋』見せてもらってもいい?」
「うん。いいよ。ちょっと待って」
秋はそう言ってソファから軽くジャンプするようにして立ち上がると、アトリエの奥に歩いていく。そこに大切にしまってある絵画、『森秋』を秋は布をとって取り出すと見やすいように、アトリエの壁に飾ってくれた。
私は引き寄せられるようにして、その絵の前までふらふらと歩いていく。
私は絵の前から動けなくなった。
「この絵は私の初めての作品なんだ。一年前くらいに完成したの。だからその女の子は私よりも一歳年下で十五歳なんだよ」ソファの上に戻って、あぐらで座っている秋が言う。
言われてみると、確かに少しだけ秋よりも幼く見える。十五歳の秋。(私たちが出逢う前の秋)私は十五歳のころなにをしていたんだろう? きっとなにもしていないのだと思った。
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