康太は暇を持て余し、何気なく、自分の近くに放り投げてあるスマホを手に取った。誰かから連絡が来た訳でもないが、そのままラインを開く。そして、一番上に来ている公式ラインからのメッセージを読む前に消した。


 友達との最後のやり取りを、左手でスクロールしながら、流し読みしていく。数分後に、スクロールしても画面が変わらなくなった。どうやら、一番下までたどり着いたようである。新しい通知も来ていないので、アプリを閉じようとしたその時、ある名前が目に入った。


ーあさひ。

 

 平仮名で書かれた名前。プロフィール写真には、朝の空が写っていた。四年前からプロフィールは更新されていない。

 心臓が一度大きな音を立てる。康太は、あさひとのトーク画面を考える前にタップした。


『明日の宿題なにあるっけ』

『数学のプリントだけじゃね』

『ありがと!』


 あさひのメッセージでラインのやり取りはそこで終わっていた。しかし、康太の元には書きかけのメッセージがある。

『昨日は本当にごめん。俺、ほんとはあんなこと思ってない』

最後のやり取りとは似つかわしくない言葉が、そこには書かれていた。


 2020年6月23日。もう四年前のことである。しかし、彼との関係は時が止まっていた。


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