第六十八話:星魔教団

 レジスタンスのミンミンと名乗った人間の女性。


 「マッカ殿、ミンミンは味方じゃ♪」


 饅頭を食い終えた姫様が笑顔で述べる。


 「姫様の麒麟眼ってのが正しければ、そうなのか?」


 いや、悪い奴らは天使の顔をしてるんだ。


 「マッカ様、疑ってはいけませんわ!」

 「そうでござるよ、信じる心が大事でござる」


 フローラとアオイが俺に注意する。


 「まあ、街も無事でしたし隠れ家の一つへご案内してからお話ししましょう」


 ミンミンと言う女性はスタスタと市場に向けて歩き出す。


 忍者を思わせる油断すると見逃がしそうな歩き方だ。


 だが、俺にはフェニックスの力で大将の命の炎を見て追跡できる。


 聖獣の力も使い俺達は姫様を連れてついて行く。


 「マッカ様、他の女性を気にされるのはいかがかと?」

 「ミンミン殿への視線が熱いでござるよ?」

 「マッカ殿、女子たらしか?」

 「それはない!」


 勘違いするな、俺は嫁である君ら以外に愛は注がん。


 辿り着いたのは墓地。


 寺院風の建物に描かれた紋様から、俺達と同じ神をまつる神殿であるとわかる。


 堂の中には、観音様っぽい我らが上司である女神ハレール様の神像。


 隣には月の女神様のも並んでる。


 「こちらへどうぞ」


 ミンミンが手で女神像を指し示せば、像の前の床が開き地下への階段が現れる。


 地下は明るく広大なホールとなっており、中央の赤い円卓に座っていた三人の男女が席を立ってこちらに礼をする。


 黒髪短髪の筋骨たくましいドワーフの中年男性は白衣で肉屋さんかな?


 残りは二人。


 黄色い拳法着を纏うのは、温和そうな顔で長い白髪に糸目の龍人の老婆。


 最後は仏教の僧みたいな袈裟姿で金髪坊主頭で細身のエルフの中年男性。


 「我ら四名、この街のレジスタンス幹部でござい案す勇者殿」


 老婆が語るので俺達も礼をして挨拶する。


 「お、おばあ様! 生きておられたのですか?」


 玉鈴姫が老婆を見て泣き出して駆けよれば、老婆は姫を抱きしめる。


 「おお、お転婆な玉鈴♪ 勇者様達を連れて来てくれたのね♪」

 「はい、帰って参りました!」


 家族との再会だ、水はさせない。


 やがて、僧形のエルフの男性が口を開く。


 「失礼、姫が申されたようにこちらのお方は先代の皇妃様であらせられます」


 彼は自分はピンと名乗った。


 「元将軍のウーだ、肉屋に身をやつしつつレジスタンスをしている」


 ドワーフのウーさんが名乗る。


 彼が言うには、逃げ出した皇族や宮廷関係者などが各地に散らばりレジスタンス活動をしているとの事。


 「もしかして、皇帝と星魔がグルと言う事か?」


 ガラムの方は、手を組んだふりみたいな流れだったがこっちは手の内か。


 「はい、まだ隔離の結界があった頃に怪しい流星が降り注ぎ各地に異形の怪物達が現れ星魔教団と名乗る輩が陛下に近づいてから国は乱れました」


 ミンミンが語る。


 「拙者達が魔王軍と戦っていた頃にそのような事が!」

 「まさか、ジェスターと名乗る道化もそちらに?」


 アオイが叫ぶ中隣でフローラが疑問を呟く。


 「教団との取次にそのような仮面の道化がおりました」

 「道化と教団が仮面をばら撒いたのも、国が乱れた一因だな」


 ピンさんとウーさんがジェスターの関与を証言する。


 魔王軍と星魔に繋がりがあったとは、そこまで見抜くとかできなかった。


 「表面上では国は維持されておりますが、裏では星魔と繋がっております」


 老婆こと、黄麗こうれいさんが溜息を吐きながら告げる。


 「国にも真っ当な者達もおるのじゃ、リンやタンのように!」

 「ええ、なので私達レジスタンスと軍の有志と組んで抵抗しておりました」


 姫様のフォローにミンミンさんが補足する。


 何にせよ、叩くべき敵が分かったのは大事だ。


 魔王軍の後始末でもあるなら、なおさら後には引けない。


 「では、他の街のレジスタンスの方にも我々が共闘関係にある事を通知していただきたいのですが如何でしょうか?」


 フローラがレジスタンス達に尋ねる。


 関係各所への根回しや、報告連絡相談はどこでも大事なので。


 「勿論です、皆様には同胞の証をお渡しして各地の繋ぎ役としてミンミンを同行させます書状も用意いたしますのでお手間は取らせません」


 黄麗さんから言質を貰い、ピンさんとウーさんも頷き承諾した。


 無事にレジスタンスである報鍋会ほうかかいとの共闘関係が出来た。


 俺達は彼らから、この街にある教団の拠点を潰しに行く依頼を受けた。


 姫を彼らのアジトに預け、俺達はミンミンさんに先導されて野山を進む。


 「すごい、これが神の馬ですか!」

 「ええ、一刻で万里も駆けられる神の馬ですわ♪」


 俺達の馬の速度に驚くミンミンさん。


 彼女はフローラが自分に同乗させた。


 「で、あの時はどのような状況だったのでござるか?」


 アオイがミンミンさんに尋ねる。


 「それはですねと前置きして語り出すミンミンさん。


 敵はこの街では俺達の目指す山に陣取り、周囲の村などに対して荒らされたくなければ食い物やら女やら寄こせ。


 代わりに外敵から守ってやる、と山賊まがいの事をして実効支配しているとの事。


 連れ去られた女性達は、幸か不幸か敵の好みに合わなかったらしく食事や掃除にと雑用働きで済んでいるとの事。


 潜入したミンミンさんは、変装魔法が解けてしまい必死に逃げて来たそうだ。


 「本当に皆様には、命と尊厳と街を守っていただき感謝しております」


 これまでのいきさつを思い出し、俺達に礼を言うミンミンさん。


 話を聞きつつ、目的地前に到着する。


 山々の合間に聳えたつのは五重の塔。


 馬を止めて見下ろせば塔から怪人達が庭に出てくる。


 庭では異形の怪人達が槍を振るい稽古を始めた。


 悪の組織の訓練所かな? 


 「良し、変身して突撃だ」

 「え、馬は置いて行くのでは?」


 俺の言葉にミンミンさんが驚く。


 「問題ありませんわ、参りましょう♪」

 「いざ、突撃でござる~♪」

 「戦闘開始だ~~~っ!」

 「い~~~~や~~~~っ! 無茶苦茶過ぎます~っ!」

 「ミンミン様、お口を閉じてくださいませ!」


 俺達が変身すれば馬も、変身後の色に合わせてメタリックな姿に変わる。


 源義経のように爆速で山を駆け下りての殴り込みだ。


 「グエ。敵襲だ~~~っ!」

 「迎え撃て~~~っ!」

 「ヒャッハ~~!」


 こちらが派手に攻め込めば、敵も負けじと襲い掛かる。


 「熱血二刀流、馬上無双っ!」


 俺は騎乗したまま手放しで達と脇差を左右の手に持ち振るう。


 フローラことポラリスに同乗していたミンミンさん。


 彼女は馬の首にへたり込んで気絶していた。


 その方が彼女には敵の攻撃が当たらないから良いな。


 ポリスもアルタイスも馬上で斧や刀を振るい大暴れ。


 乙女ゲームチックな世界なのに、無双アクションゲームをしている気分だ。


 「ええい、だらしない奴らめ、ヒーロー如きに負けおって!」


 塔の最上階から飛び出して来たのは、弁慶のような僧兵姿の怪人だ。


 肌の色は真っ青で、目は三つに腕は四本のマッチョな怪人だ。


 「ほう、お前がここの大将か? 悪いがこの世界じゃあ三下以下だ♪」


 俺は目の前の武人気取りの敵に挑発して見る。


 「ふん、その挑発乗ってくれよう! 我が名は、宇宙僧兵ラカン!」

 「仏教を侮辱するな、不死鳥の勇者フラメス!」


 俺とラカンは互いに名乗る。


 「フラメス様、お一人で宜しくて?」

 「ずるいでござるよ、フラメス殿?」

 「ああ、二人はミンミンさんを守てくれ♪」


 俺は二人に告げる。


 「小賢しい、チームヒーローが一対一とは侮るな!」

 「お前こそ侮るなよ、勝負だ!」


 ラカンと俺の対決が始まる。


 敵は四つの腕を操り格闘しっつ、。額の第三の目からビームを撃って来る。


 こちらも、相手の拳を払い拳に拳で突き返しと応戦する。


 敵のビームは悪いが装甲で受けて吸収した。


 「馬鹿な、我が宇宙拳法もビームも通じないだと?」

 「悪いな、お前よりも遥かに強いヒーローに鍛えらえてるんでね」


 いや、ジープで追い回しやら酷い修業体験したら怖くなくなる。


 「宇宙拳法ならこっちも使える、プロミネンスフィスト!」


 前世で習った必殺パンチでお返しだ。


 紅炎を纏いし太陽の拳で殴り、爆散させる。


 残っていた敵はボスのラカンだけのようで、俺達はこの地域の開放に成功した。

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