第六十六話:渡航と殴り込み
姫様と呼ばれた龍角の少女。
「はい、確保ですわ!」
「な、何じゃ! 離せ! 赤髪の英傑よ、助けておくれ~!」
フローラにより羽交い絞めにされ、兵士へと引き渡された。
「ご協力感謝いたします、勇者殿!」
「いや、何でこっちの事を知ってるのさ?」
自称姫様を兵士に引き渡したら、兵達に感謝された。
と言うか、何でこの兵達俺らの事を知ってるの?
「は、我ら総督府英兵隊はタン将軍よりお話を伺っておりました♪」
「で、じたばたしてるのは本物のお姫様?」
「はい、この方は亡命された
「ええい、妾は国へと帰るのじゃ! 国難を打ちのめし王位に就くのじゃ!」
じたばたもがく玉鈴姫。
「ちょっと、またこのパターン?」
「マッカ様の英雄気質が呼びこんだのかと?」
「我らが夫は、どこまで女たらしなのでござろうか?」
「また難儀した女子をひっかけおってのう?」
「お姫様ホイホイ過ぎませんかね?」
妻であり仲間でもあるレオン達が輪になって話をする。
「いや、そっちもひどいよ! 話は総督府でお伺いします」
俺は兵士達にそう言うと、ぞろぞろと兵士達について行った。
さらりとお姫様が亡命とか不穏ワード言って、コンプラとかガバガバだよ。
いや、元が所謂劍と魔法の乙女ゲーム世界だからガバガバなのか?
ある意味では地球のヒーロー世界と変わらないゆるさが見られた。
そりゃ、悪い奴らが暗躍し出すよなこんな良いフロンティア。
星魔って、開拓精神旺盛な悪党たちなのでは?
んな奴らに対する防衛機能であるこちらとしては、うんざりだが。
衛兵が保障に立つ石造りの門を通り、洋風な白亜の館を訪問した俺達。
「いやあ、よくぞ参られた♪」
笑顔で俺達を出迎えるタン将軍。
「あんただろ、お姫様使って俺達をおびき寄せたのは?」
「何を申される、姫様はいたずら好きで貴殿とのめぐり逢いはあくまでも天命♪」
しれっと抜かしやがったなこの野郎。
「タンよ! この者達がおれば救国は可能なのであろう?」
「ええ、彼らの力添えがあれば♪」
くそ、幼子に吹き込みやがって。
下手に実績があるから、ぐうの音も出ねえ。
「勇者殿達よ、これは鍋の国だけの問題ではないのじゃ!」
玉鈴姫が俺達に訴える、ガラムの時もそうだったが断れない。
「我が
「男は度胸、勇者は任侠。 元から世界の平和を守るのは使命だし、引き受けるよ」
頼られた以上、放置できねえ。
幼子の頼みを断るなんざできねえよな、ヒーローとして。
「ありがとうなのじゃ♪」
「うむ、我らも支援はさせてもらう」
「まったく、調子が良いな! それじゃあ皆で鍋の国へと向かうぜ!」
俺達は旅支度をして、シュバルツハイに機体を積み込み海へと出た。
「あの不思議な機械の船はどうするのじゃ?」
人気のない海岸に降り立つと玉鈴姫が尋ねた。
「船は空も飛べるので、隠密裏に俺達の後を追わせます」
俺はザックリと説明する。
「我は素人じゃ、気になる事は多々あるがそなた等を信じる」
姫が俺の言葉に頷いた。
「流石は一国の姫君ね♪」
「レオン、何でドレス着てるんだよ?」
「勿論、あなたの視線を向ける為♪」
「英雄、色を好むとはよく言ったものじゃの?」
金のチャイナドレス姿のレオンが俺に抱き着く。
俺は赤いカンフー着物と、変装だ。
姫も、俺と同様に拳法着に着替えていた。
龍人自体は珍しくないのと、姫自身が今いる地方では面が割れていない。
そう言う事情で姫の変装は着替え程度。
大人数だと目立つので、俺とレオンが姫のお共で港町の調査と相成った。
港町は活気にあふれ、様々な種族が入り乱れて暮らしていた。
地味な飯屋を見つけた俺達は、一休みを兼ねて入り席に着く。
「なるほど、王朝の力は弱り各地の領主や怪しい教団が蠢いてと?」
「ああ、いかにもな流れだな」
「このハイホーの街を治めるリン将軍は、まっとうなはずなのじゃ」
適当に頼んだ料理を食べがら、姫に国の事情をざっくりと聞く。
皇帝が首都に悪党を留めていたとも言えるガラム帝国とは違い、この国は各地方ごとにヤバいようだ。
「RPGみたいに各地を回って、問題事を解決しましょうか?」
「戦略シミュ要素もあるよな?」
「時間のかかる仕事を頼んでしまい申し訳ない」
姫様が俺達に謝る。
「気にするなよ、まずは飯をたんと食う事だ♪」
「食べるのと寝る事は子供の仕事よ♪」
「うん、ありがと~♪」
姫も演技をしながら大皿に盛られたチャーハンを喰らう。
店員はこちらを気にしていないのが、ありがたかった。
他の客はいない、港町の昼飯時ならもう少し賑わっていても良さそうだがな?
支払いを済ませて飯屋を出る、尾行の気配はない。
俺達勇者の居間のメインの敵は星魔。
タン将軍が言うには、流星群が降り注いでから国が乱れた。
流星と共に各地に来た星魔が、関与しているとみて間違いはない。
悪の怪人みたくわかりやすく街で暴れてくれれば良いんだが、星魔も全員が馬鹿じゃないから面倒臭い。
軍の詰め所にでも行けば、姫様曰くまともな将軍に出あるかな?
だが、街の空気が変わり出した。
港町だからほんのりと潮の香りはしていたが、磯臭さが増した。
「ヒャッハ~♪ ウォーケン一家のお通りだぜ~♪」
「オラオラ~♪ 暴れられたくなけりゃ金出しな~♪」
「酒と女も寄こせ~♪」
いかにも悪党の台詞を吐き出しながら、二足歩行の昆布人間やらが現れた。
「勇者殿、頼む!」
「お任せあれ、レオンは護衛を頼むぜ♪」
「任せて、ダーリン♪」
人々が逃げ惑う中、俺は星魔であろう怪人達へと走り出した。
「そこまでだ、悪党! マッカキック!」
「あば~~~っ!」
火炎魔法を纏わせたキックで、まずは昆布人間を滅ぼす。
「げげっ! コブ~がやられた!」
「貴様、俺達に逆らうとは何もんだ!」
「おい、こいつもしかしてこの世界のヒーローか?」
ピラニア人間やカキ人間にナマコ人間がビビり出す。
「そうだよ、聖獣武装っ!」
俺は変身して怪人達に身構えた。
「畜生! 何でこんな世界にヒーローがいるんだよ!」
「やっちまえ!」
「ヒャッハ~!」
変身した俺へと昭和の悪の怪人の流れで襲い来る怪人達。
「不死鳥の勇者フラメス、相手になるぜ!」
ネッケツレッドのモードにまでならなくても勝てると感じた、
怪人達の攻撃を避けた俺は、奴らの周囲を走り回り火柱で包み焼きにして倒した。
「勇者殿、流石じゃ~~~♪」
「フラメス、素敵だったわ~♪」
姫とレオンがが拍手で喜ぶ。
街の人達も、驚きから喜びに変わり拍手をくれた。
「ど~も、ど~も♪ すべてはこちらに追わす玉鈴姫の命です♪」
俺は変身したまま姫を担ぎ上げる。
「うむ、民達よ妾は第五皇女玉鈴! 勇者を連れて国難を打破しに帰って来た!」
姫が叫べばさらに拍手が起こる。
ごめん、やっぱり俺には隠密行動とか無理だった。
レオンは浮かれてる。
街の人からウオーケン一家のアジトを聞き出したので、殴り込みに行く。
「ギョギョ! ヒーロー、ヒーロー、ナンデ!」
「どーも~♪ ヒ~ロ~で~す、正義の鉄槌をお届けに来ました~♪」
出前のノリで見張りの魚人間の兵士ごと、門を殴って爆破する。
敵の屋敷の中庭に侵入すれば、ワラワラと出て来た戦闘員達。
その姿は、全身が真っ白なシラス人間だった。
アクション映画のノリで、襲い来る戦闘員達を格闘で倒しながら進む。
「異界から来た悪党どもに容赦はしない!」
戦闘員の最後の一人を崩拳で爆散させて呟く。
「欲も荒らしてくれたね、スクイッド拳を受けて見な!」
「イカの怪人か、宇宙人だな?」
触手による突きを避けて相手を見る。
背中から千手観音のように触手を生やした白いイカの女怪人だった。
「そうだよ、スクイッド星人ウォーケンを舐めるんじゃないよ!」
手足と背中の触手も駆使して連続攻撃を繰り出すウォーケン。
カンフー映画のノリも好きなので、素手で相手をする。
「かかったね? スクイッド拳、電流促し!」
敵が必殺技を放つ、手足を触手出絡まれているので回避はできない。
装甲で軽減されているので、整体の電気治療器並みの刺激が襲う。
ピリピリと痙攣するが耐えて、触手を焼き切る。
「今度はこちらの番だ、フェニックスキック!」
空中で跳躍し、全身を炎で包み火の鳥となって蹴りを叩き込む。
相手は断末魔の叫びを上げながら燃え尽きた。
「さて、後は仲間を呼んで家探しだな」
威力偵察どころか壊滅させてしまった俺は、魔法で仲間達を呼ぶのであった。
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