第五十六話:砂漠の出会い

 「目標発見、で良いのかな?」

 「象型のマシンですわ!」

 「あれで間違いありませんよ、そして襲われてます!」


 俺とフローラとアオイ、変身中なのでここからはヒーローネームで呼ぶ。


 砂漠の国、ガラム帝国の使者を迎えに行く依頼を受けた俺達。


 動けるメンバーが赤青黄色の三色面子だったので、レンセイオーで出発した。


 そして現場上空で。俺達が見た光景。


 砂漠を進む巨大な白い象型ロボ。


 黒トカゲを馬の代わりに乗り回す騎兵達に弓矢で襲われている光景だった。


 象ロボには武装っぽいのも見えるし、勝てそうな気がするんだが何でだろ?


 「レンセイオーファイヤー!」

 「ゴールドバーグ王国からお迎えに上がりましたわ♪」

 「お手伝いいたしまする!」


 着地して外部に音声を流しつつ、レンセイオーから火炎弾をぶっ放して賊を攻撃。


 悪いが、容赦してやる手間が惜しい。


 「魔神? 西洋の魔神ナンでっ!」

 「くそっ! 逃げるんだよ~!」

 「覚えてろ~~!」


 賊の生き残りが逃げて行く、灰色の布で顔を隠してたからよくわからん。


 賊を追い払った後は、象さんロボットと向かい合う。


 「あ~? 我々は王国から依頼を受けた勇者です」


 外部スピーカーからの通信で呼びかけて見る。


 相手の通信のチャンネルとか知らんので。


 「フラメス殿、手旗信号ですよ♪」

 「ボディーランゲージですわ♪」


 アルタイスとポラリスから言われ、俺だけ外に出て紅白の手旗信号で大昔に万国共通だったらしい手旗信号で身振り手振り語りかける。


 暇な時に練習しておいて良かったぜ。


 『王国の勇者様、御助力感謝いたします。 こちらは手旗信号が理解できません』

 「いや、どういうコントだよ!」


 相手のロボからやっと通信が来たと思えば、肩透かしだった。


 向こうも外部に音声を出しての通信だな、やはりロボットの造りが違うんだ。


 しかし何だこの声? 何かアニメで聞く高めのトーンの声だった。


 「取り敢えず、俺達を信じて王国までごご一緒願えますか?」


 象ロボットに向かい叫んでみる。


 しかし、返事がない。


 こっちには敵意はないが、警戒されてるのだろうか?


 何か、嫌な予感がする。


 一旦レンセイオーの機内に戻り、仲間達と話をする


 「どうする? 異文化過ぎてわからん」


 俺はポラリスに尋ねた。


 「私も、詳しくはないのですが前提がおかしいとか?」


 疑問形な答えが来た。


 「ふむ、もう一度訪ねて見ましょう」


 アルタイスが発言したと同時に敵の出現を示すセンサーに反応があった。


 「ち、レーダーに星魔反応だ! 無茶するぞ!」

 「お付き合いいたしますわ、あなた♪」

 「ポラリス殿、今は仕事中でござる!」

 「あちらには悪いが、ちょっと失礼するぜ!」

 「車投げですわ!」


 俺達のレンセイオーは、象ロボットへと飛んで突進し一緒に地獄車で転がる。。


 投げ技を移動手段に使うのは問題だが、俺達と象のロボットのいた場所が敵の落下地点だったので緊急避難だ。

 

 だが、こちらのレンセイオーは無茶な機動と象ロボの重さがダメージとなって分離してしまう。


 俺達がいた場所に空から降って来たのは、巨大な怪物。


 真っ白で筋肉モリモリな巨大リトルグレイ。星魔の一種だ。


 象ロボットは、俺達の投げにくるりと回転して無事だった。


 「生身で出るぜ! 久しぶりのフラメスキック」


 俺は機体から飛び出し、火の玉となって巨大な敵に突撃。


 爆発の衝撃で吹っ飛んだが、巨大星魔は大の字に倒れるも起き上がった。


 「マジかよ、全身ひび割れしてるのに立ち上がった!」


 生身戦の修行し直しだな、慢心はいけない。


 『赤の勇者様、こちらにお乗りください!』


 そんな叫びが後ろから聞こえると同時に、俺は象ロボットに吸い込まれた。


 見知らぬ空間、何かコクピットっぽい場所に来た俺は手足を鎖で繋がれた。


 隔壁は白、宇宙船で見た感じだ。


 シートがないのは、立って操縦か?


 「どういう事だこれ? いや、何となくわかる!」

 『不死鳥の勇者よ、我が名はサフェードハッティ。 我と繋がり共に戦ってくれ』


 声の主は男性人格か? マスタースレイブ方式だなわかりやすい。


 「わかった。ハッティヨーダ―!」


 ガラム帝国の神獣、サフェードハッティの指示に従い叫ぶ。


 『フラメス様が、象ロボに吸い込まれて変形しましたわ!』

 『むむ、私達の夫はまた垂らし込んだんですか!』


 球体コクピットに代わり、全周囲モニターになって外の様子がわかる。


 象の頭が胴体で、重戦士タイプの白い人型スーパーロボットに変形だ。


 嫁達の声も聞こえてるし敵も脱皮して灰色のトカゲ人間みたいになった。


 強制的に鎖が引かれて俺は舞を舞わされる。


 ムエタイのワイクルーって踊りに似てるな。


 「敵が突っ込んで来るぞ?」

 『心配無用!』


 俺は足を上げさせられて膝蹴りをすれば、機体も同じく膝蹴り。


 巨大トカゲは。ケリを受けて後ずさりした。


 「オッケー、ご指導宜しくしますコーチ♪」

 『うむ、連打だ♪』


 ハッティに身を任せ、チュートリアル感覚で俺は戦う。


 膝蹴りの次は前に出てワンツーパンチ、からの踏みつけ。


 相手も痛みでわめいているが、まだ闘志は消えてない。


 この星魔、意外とタフだなと思ったら敵が口から黒煙を吐き出す。


 『汝の炎の力を我に!』

 「オッケー♪」

 「「ファイヤーサイクロン!」」


 俺達が同時に叫べば、象の鼻から火災旋風が吹き荒れる。


 この炎の鼻息は、敵の煙を散らすだけでなく包み込んで空へと放り投げた。


 『これは指示せずともわかるな?』

 「ああ、決めろって事だろ♪」

 「「バーニングダブルアッパー!」」


 こっちの機体、ハッティヨーダ―の両腕が燃え上がると同時に飛翔。


 落ちて来る敵の腹に象が牙を突き立てるが如く、燃える量の拳を叩き込む!


 ド派手に爆散した敵に背を向けるよう着地して残心を決める。


 俺達の勝ちだ。


 戦いが終われば、手足の鎖が外れて俺は外へと出される。


 自分の機体に戻るとポラリスとアルタイスが待っていた。


 「お帰りなさいませ♪」

 「お帰りでござる♪」

 「ああ、ただいま」

 「私達の事を気遣い休ませてくれたのは、わかっております」

 「次は私達も一緒に戦わせてほしいでござる」


 うん、怒られた方が楽かな? 通信できなかったとはいえ放置しちまったし。


 「ご自分を責めないで下いませ♪」

 「今夜はお覚悟を♪」


 あ、後払いかこれ。


 いつの間にか象モードに戻ったサフェードハッティがこちらへと近づき寝そべる。


 象の頭が口を開く。


 中から出て来たのは、緑のドレスを纏った白い象の特性を持つ獣人の少女。


 短い茶髪につぶらな黒い瞳で褐色の肌、耳だけは白い象の耳。


 「……お、お初にお目にかかります! 私は、ガラム帝国第百八皇女のパティと申します! お助けいただき、ありがとうございました!」


 怯えながらお礼を言うパティ姫。


 俺達も変身を解き、片膝ついて目線を合わせて一礼する。


 「お初にお目にかかります、マッカ・サンハートと申します」


 小学生くらいのお嬢さんだよな、怖がらせたいかんので優しく微笑む。


 「……ひ、赤鬼さんです~~~っ!」


 怖がられちゃったよ、因果応報だけどさ。


 「あらあら♪ パティ様、怖くないですよ~~~♪」


 フローラが穏やかな笑顔で前に出る。


 「この方がガラム帝国のお使者の方でござろうか?」

 「俺に聞かないでくれ、子供に怖がられてショックを受けてるんだ」


 アオイの問いかけに俺は答えらえなかった。


 ヒーローなのに子供に怖がられるってだめだろ?


 パティ姫はフローラにべったりと抱き着いていた。


 うん、包容力ではフローラには勝てない。


 前世でも、素顔が怖いて言われてたのを思い出してへこむ。


 これが俺達と、獣人の国ガラム帝国の民との初遭遇であった。

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