第四章:聖獣巨人誕生編

第三十三話:巨大な敵

 東の国、ミズホ国での冒険から戻って来た俺達。


 ゴールドバーグ王国に戻ったら、六月になっていた。


 王国に戻ってからも、報告だ連絡だ相談だ会談だと慌しかった。


 やっとこさ学生生活へと戻れたのだが、疲れた。


 フェニックスのパワーでも心の疲労は、中々取れない。


 「ハッハッハ、ご苦労だなマッカ殿♪」

 「いや、スミハル殿達もこちらに来るとは思いませんでした」


 上は白シャツの上に赤いベスト、下は灰色のスラックス。


 家の魔法学園の制服に身を包んだイケメンオーガのスミハル殿。


 生徒と言うより教師っぽい。


 洋風の学園の教室が、剣術の道場になったかと錯覚しそうだ。


 彼以外にも花鬼生徒会の面々が留学生として、王国に来ていた。


 「スミハル様、マッシヴですわ~♪」

 「耽美本のネタが東から来ましたわ~~♪」

 「カップリングの討論会ですわ~~!」


 教室の隅ではしゃいでる女子達、頭が痛いぜ。


 五国連合なんてできた事で、ミズホ国からも人や物が来ていた。


 「ふ、西洋の女子も変わらんのう男も女子も恋は良いぞ♪」

 「おいおい大将、兄弟を困らせるなよ?」


 男同士の恋にも理解のあるスミハル殿。


 その腹心。ダイダイマルは俺の心を気遣ってくれた。


 「スミハル殿、マッカへの距離が近くないですか?」

 「おや、レオン殿も我が兄弟同然ではござらんかな♪」

 「なら、兄弟らしい距離でお願いしますね♪」

 「レオンは話をかき回すなよ?」

 「天狗の兄弟、すまねえがあの二人には踏み込めねえ」


 どこにいてもぐだぐだなのは、俺の背負った宿命かな?


 花鬼の皆にも、西方諸国の防衛で出張ってもらえるのは助かる。


 剣と魔法の乙女ゲーム風な世界で敵の本陣が月。


 魔法で転移以外にも魔法の宇宙戦艦とか、ロボの開発で周囲は大忙しだ。


 魔法ゴリラのエルフと、工業ゴリラのドワーフがぶつかり合いながら作業してる。


 開発やらは門外漢なのでもどかしいが、戦闘で頑張るしかない。


 午前の授業が終わり、食堂に行こうかと言う前の雑談タイム。


 王国は梅雨と言うのがないから、六月に入っても外は晴れている。


 今日くらいは平和で過ごしたい、休むのも仕事の内のはず。


 だが、窓からの乱入者が俺の想いを打ち砕いた。


 『我が王、北方の森林地帯に巨大な魔物が出現しました!』

 「ご苦労、すぐに向かう!」


 俺の手に止まったイヌワシが叫ぶ。


 「悪い、ブロンズ王国との境に巨大魔獣が出現した!」

 「へ、合点承知よ♪」

 「僕も行くよ♪」

 「ふむ、今回は留守は任されよ♪」


 俺とレオンとダイダイマルの三名は教室を飛び出し、現場へと出撃した。


 校庭に出て俺とレオンは変身し、聖獣を召喚する。


 「兄弟の火の鳥もデカいが、王子の獅子もでけえな?」


 キングネメアの背の上でレグルスと相乗りしているダイダイマルが叫ぶ。


 ダイダイマルは、オレンジ色の鎧武者姿に変身していた。


 雄叫びを上げて木々を破壊するのは、巨大な二足歩行のナマズ。


 俺達が敵を目視できる範囲に入ると、巨大ナマズの頭の上から異形の怪人が出た。


 「だ~っはっは♪ お前らが勇者か? 魔王軍幹部、テッポー様が相手だ♪」


 怪人の見た目は、ひょうきんそうに見える青いフグ人間だった。


 茶色い革鎧を着たデブのフグ人間と言うべき怪人テッポー。


 「不死鳥の勇者、フラメス!」


 こちらも名乗る、戦いの前の挨拶は大事。


 「獅子の勇者レグルス♪」


 ご機嫌で名乗りを上げるレグルス。


 「花鬼生徒会、ダイダイマルだ!」


 ダイダイマルも小槌を巨大化させて名乗る。


 「へ! お前らなんぞこいつの力で蹴散らしてやる!」


 テッポーは巨大ナマズの体内に入り、腕を振るい襲い掛かって来た。


 「あぶねえ、んじゃ行くぜ!」

 「よし、行くよネメアとダイちゃん♪」

 「任せな、王子♪」

 『不死鳥の勇者殿の為に!』


 敵の攻撃を避けた俺達、レグルス達は地上から巨大化したキングネメアで突進。


 俺はヒヨちゃんに乗り、空を動き回りながら火炎弾発射で射撃。


 こっちはまだロボが出来ていないので、聖獣を操っての巨大戦だ。


 聖獣を俺達の魔力で巨大化させてるのは、ドーピングみたいな物。


 三分間しか戦えなかった前世の仲間、巨大ヒーローのユニバーマンと似た状況。


 レグルスがキングネメアを操り、取っ組み合いで敵を正面から抑える。


 「小粒でも痛いぜ!」


 と叫び、随伴歩兵のダイダイマルがキングネメアから飛び降る。


 地上を駆け巡り、巨大ナマズな足回りを狙いヘッドが燃えてるハンマーを振るう。


 「良し、ヒヨちゃんは俺を打ち出してくれ!」


 俺はジャンプして空に躍り出る。


 すると、俺の狙いを察したフェニックスのヒヨちゃんが俺をパクっと口の中に入れてから勢い良く火炎弾と同時に射出する。


 「くそ、気持ち悪いが一寸法師作戦だ!」


 俺は巨大ナマズの口の中に飛び込むと、全身から炎を発しつつ刀を振るう。


 魚を捌くのは苦手だが、焼くのは得意なんだ。


 巨大ナマズの食道をぶった切って出て見れば、色んな臓物が気持ち悪く蠢く。


 外で仲間がこのデカブツを抑えてくれる間に心臓へ突撃!


 「熱血一刀流奥義・フェニックスバーン!」


 燃え盛る刀を振り下ろし、炎の刃を叩きつけ巨大ナマズの命を絶つ。


 「悪いな、浄化したら食って供養してやる」


 片手で南無阿弥陀仏と唱え、巨大ナマズを切り開いて抜け出す。


 「おのれ勇者ども! 今日の所は退いてやる~っ!」

 「あ、待ちやがれ!」

 「待ってやる里油はない!」


 俺の脱出と同時に、巨大ナマズのパイロットをしていたテッポーも外に出て来た。


 こっちが追いかける間もなく、テッポーの奴には瞬間移動で逃げられた。


 「畜生、逃げられちまったか!」

 「お疲れ様、フラメス♪」

 「お~い、やったな兄弟♪」


 後に残るは俺達と巨大ナマズの骸のみであった。


 『不死鳥の勇者よ、腹が空いたので食わせてくれ』

 「いや、獅子神様ってこんな魔物を食うのかよ?」

 「うん、この魔物自体もこっちの生き物がベースだから焼けば平気かな?」

 「仕方ねえなあ、んじゃやるか」


 ダイダイマルが驚く中、俺は一気に力を解放して巨大ナマズを空き魚に変えた。


 巨大化したままのキングネメアが、焼きナマズをバリバリと美味そうに食い出す。


 「うへえ、西洋は驚きがいっぱいだな。 しかし、醤油があれば俺も食えそう」

 「魔物の料理も美味しいよ、ダイちゃんにもご馳走してあげる♪」


 ダイダイマルには優しい態度を見せるレオンに俺はちょっと驚いた。


 「ふう、それじゃあキングネメアが食い終えたら帰ろうか?」


 こっちは昼飯前だった、と言うのを鳴り出した腹の音で今更思い出す。


 食事で元気いっぱいになったキングネメアの背に乗り、皆で学園に戻る。


 「おお、ご苦労であったな♪」


 今回は留守番のスミハル殿が学園の校庭にて出迎えてくれた。


 「いやあ、敵も巨大な魔物を使役するようになりましたよ」


 俺は敵の新たな幹部が、巨大な魔獣を操って暴れた話をする。


 「なるほど、今後は巨大な敵が市街で暴れぬようにせねばですな」

 「ええ、敵を倒すだけではなく民の暮らしも守らねばですから」


 レオンがスミハル殿に真面目に語る。


 「大将、こっちの巨人の話は進展があったか?」


 ダイダイマルがスミハル殿に尋ねる。


 「うむ、通信魔法によるとマッカ殿の機体が仮組まで行ったとの事」

 「おお、それはありがたい♪ じゃあ、試験運用をしないと!」


 こちら側に来た朗報に胸が躍る。


 どうやらロボも一番手は俺が貰えそうだ。


 「良かったね、マッカ♪」

 「兄弟が巨人の頭になる以上、道理だな」


 レオンは喜び、ダイダイマルは頷く。


 まあ、敵に新手が出てきたがこちらも打つ手は増えて来た。


 ネガティブな気分になっている場合じゃねえ、気合いを入れて次も戦うぜ。

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