第二十三話:龍の勇者
ブルーことアオイ嬢の変身の為、東の国ミズホ国へ来た俺達。
日本風な国が気になるので観光したい気分だが我慢だ。
遊びに来たわけじゃない、ロボの素材確保とメカニックもいるよな。
「さて、聖獣は何処にいるんだろう?」
俺は仲間達と中華料理屋みたいな赤い円卓を囲みながら呟く。
辿り着いた港町、デサキにあるアイゼン帝国領事館にて会議だ。
「青とか、水とか海に関する聖獣だろうね?」
「魚や龍でしょうか?」
レオンとフローラ嬢が呟く。
「聖獣図鑑だと、オーシャンドラゴンと言うのがそれかな?」
「この図鑑、挿絵を描いた人が凄いですね?」
クレインが図鑑を開けば、バッシュが感心する。
いや、何で西洋の人が東洋の龍が描けるんだろ
「挿絵からして巨体、戦う類の試練はハードそうですね?」
クラウが龍の絵を見て感想を漏らす。
「待て待て、アオイ殿は一度親元に戻らねばなるまいぞ?」
「う、そう言えば私は代表団と別行動で帰還しちゃいました」
アデーレ様の言葉にアオイ嬢がたじろぐ。
「で、アオイ嬢の御尊父はもしかしてこの国のトップ?」
俺はアオイ嬢に尋ねる、この国だと姫とか様付けが必要な身分か?
「話は聞かせてもらった!」
「ち、父上! 何故ここに?」」
「いや、何か突然上様みたいな人が来た!」
何だ、サプライズ上様!
時代劇の将軍様みたいな、がっしりした美形中年武士が来たよ。
白い着物で黒地に金の刺繍の袴で刀の二本差し。
絶対に貧乏な旗本じゃねえ服装のオーガ族のお侍様だった。
「マッカ殿、お転婆娘だがアオイの事は他の奥方同様宜しくお願いいたす♪」
俺と周りのクラウ達を見て、上様は微笑むのであった。
じゃねえよ! 話が異次元に飛んでるよ!
そもそも未婚だし、婚姻だなんだは俺個人だけでどうこう決められません。
「つまり、アオイが筆頭となる見込みはあると?」
「あの、貴国にも身分で婚姻の作法がそれぞれ違うのでは?」
「貴殿が我が国の武王のように大奥を持つ事は避けられぬと見たが?」
この上様、一体何言ってるの?
「父上、アオイは幸せになりますからね!」
「うむ、百人いる娘の中でそなたが一番嫁ぎ先が不安であったが心配はないな♪」
おいおい、アオイ嬢と上様の親子はちょっと頭がどこかに飛んでませんか?
「いや、魔王も邪神も退治してないのに話が先どりしすぎだろ!」
ボケにツッコミが追い付かない。
「改めて、余はイエヨシ・トクダイラ。 ミズホの武士の長、八代目武王である」
「イエヨシ様、お久しぶりでございます」
「アデーレ殿、此度は娘がお世話になり申した」
改めて、上様から身分や作法など気にせずで良いと話が始まる。
国際化に向けて、剣術大会に娘達を送り出した。
その後、女神様直々に神託を受けてすっ飛んで来たとの事。
「月の邪神の事も、貴殿らが巨人で敵に挑む事も承知しておる。 民の笑顔と未来の為、ミズホ国は国を挙げて助太刀させて貰う」
上様の言葉に俺は感動した、事情を理解してくれる人って大事だよな。
「貴殿らが言う聖獣、海龍はこのデサキで祀られているので案内いたそう」
「ありがとうございます、上様」
上様にきちんとお礼を言う。
「礼には及ばん、我らは世の為に戦う同志だ」
「父上は彗星すら断ち切る、国一番の剣士なんですよ♪」
「我らミズホ武士も戦の際には、加勢すると約束しよう」
何か、凄い安心感があるな上様。
アオイ嬢とのやり取りはトンチキだったが戦闘能力は信用できそう。
これで後は、アオイ嬢が試練を乗り越えられれば戦隊復活だ。
「それはそうと、そろそろロボを作る工場や拠点が必要になるよね?」
一応、勇者団の会議の場なのでレオンが議題を出す。
「シュバルツハイを停泊できる港付きでのう」
アデーレ様も悩み顔だ。
「いや、勇者団のデカい拠点が必要なのはわかるけどな?」
まずはアオイ嬢の試練が先だ、あれこれ言われても処理しきれねえ。
俺達はアイゼン帝国の領事館のあるデサキの居留地を出た。
馴染みのある西洋人地区を抜け、中華風の東洋人地区を越えて関所を抜ける。
移動に手間はかかったが、どこか懐かしい日本の時代劇風の街並みに出た。
「デサキ奉行所の方々が案内をして下さるそうです♪」
アオイ嬢が笑顔で語る、俺達の監視兼護衛役のお侍さん達の目つきは険しい。
そら、お姫様であるアオイ嬢はともかく俺達は胡散臭い外国人の小僧共だからな。
「皆様、お世話になります宜しくお願い申し上げます」
俺はお侍さん達に丁寧に挨拶をして一礼する。
俺の行動に仲間達も合わせて礼をする。
驚いた顔をしたお侍さん達が居住まいを正して、こちらこそと返礼してくれた。
歩いて港に着くと和風の船が用意されていた。
「海龍の神殿は、デサキ沖にあるあの島その物であります」
黒い羽織で陣笠を被った与力のジンゴロウさんが甲板の上で解説してくれる。
船に乗せられた俺達も、甲板上にてジンゴロウさんが指さす緑豊かな島を見た。
巨大な鳥居はわかりやすいな、大きな社殿
も見える。
島に着いて船から下りれば、赤鬼の巫女さんや神官の方達が出迎えてくれた。
海龍神社の神職さん達に案内されて参道を登り、神社に入る。
手水舎で手洗いとか二礼二拍手一礼したら、よく知っているなと言われた。
アオイ嬢から教わったと言ったら納得されたので、試練の為に昇殿参拝。
龍の神像の前で並び正座、宮司さんが祝詞唱えてる間は平伏。
気が付くと俺とアオイ嬢だけ海の中みたいな異空間にいた。
巨大な水色の龍、オーシャンドラゴン本体と相見える俺達。
『勇者達よ、よくぞ我が下を訪れた』
女性人格で俺達に語りかけるオーシャンドラゴン。
「オーシャンドラゴン様、拙者にお力をお授け下さい!」
「俺も呼ばれたのは一体?」
試練ならアオイ嬢だけじゃないのか?
『娘には我が力を使う為の試練、其方には我等を率いる将の資質を試す』
オーシャンドラゴンはそう言うと、光の玉に変じてアオイ嬢と一体化。
彼女の全身を覆うヒーロースーツになった。
「わかった、聖獣武装!」
俺も変身し、シミターを八相に構える。
対するアオイ嬢の武器は右手に矛、左手に龍の腕を模した爪付きの盾。
先手はアオイ嬢達から、矛を振るって渦潮を独楽のように飛ばして来る。
「なるほど、水使いか! 俺とヒヨちゃんの炎も負けてないぜ!」
分裂して襲い来る渦潮を、火災旋風を巻き起こして打ち消す。
だが相手は、矛を頭上で回して潮流を操り俺を引き寄せて来た。
「そっちから招いてくれるのは好都合! フェニックススラッシュ!」
引き寄せられつつも刀を燃やし振り下ろす、だが相手も盾で受けて来た。
あえて刀を手放し飛び退いた所に矛の一突き、危なかった。
「素手でも戦えるぜ、フェニックスチョップ!」
右手から鳥の翼のような形で炎を噴き出しつつ手刀を振るう!
相手が盾で受けたから爪に掛かってたシミターが取れて戻って来る。
「熱血一刀、フェニックススピン!」
回転にはこちらも回転だと、刀を取り返した所でぐるっと回転斬り。
金属音と共に火花が散り、手ごたえはあった。
振り返れば、相手は腰を落として矛を向けて突進の構え。
「次で決めるってか? 良いぜ、熱血一刀流フェニックスダイブ!」
俺が火の鳥となてっ突っ込めば、あっちは渦潮のドリルを纏っての突撃。
ぶつかり合いを制したのは俺。
アオイ嬢を覆っていた、オーシャンドラゴンの装甲が弾けて変身が解除された。
こちらも変身を解除すると、目を回して倒れて寝転んでいるアオイ嬢。
『お見事でした不死鳥の勇者よ、アオイの方は暫くこちらで鍛えます』
「そうしてくれ。 げげ、貰ったシミターがバキッと根元から折れてる!」
オーシャンドラゴンに認められた代償。
それはこれまで愛用していたシミターの破損と言う悲しい物であった。
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