第2回 ■降下世界(多元夢世界のひとつ)
第2回
■降下世界(多元夢世界のひとつ)■
ここは、ジェイと呼ばれる意識体は、思った。ここは
どこなのだ。そして、自分は誰なのだ。
所々に散在する踊り場で、夜になると、ジェイ達は眠るのだった。
バーの上で、上手に眠る者もいた。
食物は、踊り場に、何者かが、知らぬ間に、準備しているようだった。
しかし、その何者かの姿は見たことはなかった。
降下するジェイの横を、血まみれになった仲間の体が落下していった。
しかし、ジェイはそんな事は日常茶飯事。慣っこになっている。
力つきたジェイの仲間は、バーから手を離し、あるいは、バーから足を踏みはずして、途中のバーに体をひっかけ打撲し、骨を折りながら、下へ墜ちていくのだった。
ある者は叫び声をあげながら、ある者はまったく声をあげずに。
叫び声が悲鳴ではなく、ひょっとしたら、喜びの声ではないかとジェイは思う時もある。
その男は、この単調極まりない世界から、脱出したかったに違いない。
自分の意識をこの世界から消滅させること。
それは、すなわち、下の世界へと自らの体を投げ出すことだった。
下に辿りつくこと。
ジェイにとってまずそれが先決だった。
必らず、この複雑怪奇な構造体には終わりがあるはずだった。
いくたり、夜をむかえただろう。
ジェイはわずかだが、風の匂いが違っていることに気づいた。
それは、ここでの大いなる変化のきざしだった。
数日後、ジェイは、風変りな場所に降りたっていた。
(続く)
キング・オブ・ドリーム 飛鳥京香 @asukakyouka02
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