女子のバストには甘いホイップクリームが詰まっていると思っていた

タカトウリョウ

第一話

 表題のとおりである。


 なんなら女子にはムダ毛なんて生えないと思っていたし、さらには女子の身体から漂うほのかなフルーティフローラルの香りは天然の体臭だと思っていたし、果ては女子の──。


 際限がなさそうなので、ここいらで自主規制。


 しわの少ない脳みそが「女子」と「エロ」と申し訳程度の「ロックンロール」でミリ単位の隙間もなく埋め尽くされていた十六歳当時、同世代の異性とまるで接点がない現状に僕は、ひどく焦りを感じていた。


 高校生にもなればカノジョの一人や二人、黙ってたってできるもんだ、それが自然の摂理ってもんだ、なんてうそぶいていたのは中学サッカー部時代の先輩、マッキーさん。二学年上の彼は卒業後もことあるごとに練習に顔を出し、数ヶ月おきに変わるカノジョとのツーショット写真を僕ら後輩に見せつけては、上記のセリフをアルファオスそのものの微笑でもってのたまった。


 正直なところ僕は、マッキーさんがうらやましかった。そして何よりマッキーさんの言葉をどこぞの教祖の教えがごとく妄信していた。輝ける極彩色のハイスクールライフに夜な夜な想いを馳せ続けた。


 しかし、それがどうだろう。


 十六歳の僕ときたらカノジョどころか女友達すらできず、ただひたすら悶々悶々、二十四時間ノンストップでくすぶり倒していた。高校入学と共に両親に買い与えられたケータイのアドレス帳に名を連ねる異性はわずか二人。いずれも中学時代の同級生であり、ただの友人である。


 高校一年、男子クラス、デオドラント臭漂う教室の隅。四方八方どこに視線を放っても男! 漢! オトコ!


 いにしえより、我が国における純然たる中高生男子の初カノジョはクラスメイト、あるいは部活の後輩と相場が決まっているはずだ。


 高校生にもなればカノジョの一人や二人、黙ってたってできるもんだ、それが自然の摂理ってもんだ。そんな、いつかのマッキーさんの言葉がふと脳裏を過る。


 果たして本当にそうなのだろうか。


 自問自答はこのあと数時間にもおよんだ。

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