なみだ石の伝説

飛鳥京香

なみだ石の伝説第1話

なみだ石の伝説 第一回の1

僕は日待明ひまちめい。時折、思い出す記憶。それにしたがって、話を進めよう。


最初は1975年の記憶だ。僕を待ち受ける故郷神立山、その地域の伝説「なみだ岩」伝説は、僕にあらたな人生の選択を迫る。


そして、日待明の記憶に点在する彼女とは何者であったのか?僕は僕の記憶を探っていく。



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なみだ石の伝説第1回1975年僕、日待明(ひまちめい)は故郷、頭屋封へ、町中の生活で得た悲しみ洗いおとすために帰る。

なみだ石の伝説第1回ー01

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所(1980年作品-2021改稿)


●僕は日待明ひまちめい。時折、思い出す記憶。記憶にしたがって、話を進めよう。最初は1975年の記憶だ。僕を待ち受ける故郷神立山、その地域の伝説「なみだ岩」伝説は、僕にあたたな人生の選択を迫る。そして、日待明の記憶に点在する彼女とは何者であったのか?僕は僕の記憶を探っていく。


1975年 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。

列車は。僕の故郷に向かっていた。


故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。

僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。

あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。

      

 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。

ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。

それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村とうやむらへたどりつくことができる。        

 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。

                 

 僕、日待明ひまちめいは頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。

苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。


なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。


僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。

奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。


「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。

その草原を深い森がかこんでいる。

「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。

涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。

土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。

全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。

遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。


、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。

5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。


この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。


この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。続く

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