古き因縁の魔の手2
ニンクアが怒っているのはモノイルワ捕まったことや死んだことではなく、テシアがその密輸した違法な植物を押収し燃やしてしまったことに怒っているのだ。
かなりの量を押収した。
それら全てを販売していたとしたら町一つ買えるぐらいの量があったのである。
モノイルワがニンクアから違法な植物を密輸して販売して利益を上げるはずだったのに全てテシアにダメにされた。
その恨みはわざわざこうしてテシアを探し出す程に深かった。
「これからどうなるか分かるか?」
「教えてくれるとありがといね」
「お前は売られるんだよ、変態の、お金持ちにな! もう二度と日の光を拝めず、殺してくれと懇願しながら短い生涯を終えるんだ!」
浅いクズの考え。
そう思ったがこのままでは本当にそうなりそうであまり笑えない。
「本当なら先に俺たちでお楽しみにしたかったがその鎧は面倒だからな。こっちもあまり時間ない……まあ綺麗な方が高く売れていいかもしれないな」
完全に目が逝っている。
「おい、あれは?」
「チッ、ほらよ」
ニンクアが手を差し出すと男は小さな袋を渡した。
「んだよ、これしかねぇのかよ?」
「最近取り締まりも厳しくてな」
「チクショウ……仕方がねぇ」
イラついた様子のニンクアは壁際に投げつけるようにイスを移動させるとポケットからパイプを取り出した。
そこに袋から取り出した乾燥させた葉っぱのようなものを詰めて火をつけた。
「……こいつ」
漂ってくる匂いにテシアは顔をしかめた。
「はぁー……」
口から煙を吐き出してニンクアは少し落ち着いたようだ。
この匂いはテシアがかつてモノイルワから押収した違法な植物は燃やした匂いだった。
乾燥させて火で燃やした煙を吸い込むと気分が良くなるのだ。
しかし依存性があり、長く吸い続けると効果が切れた時に苛立ちを覚えたりする副作用があるために多くの国で栽培から採取、加工まで禁止されているのだ。
けれどその効果や依存性から密かに栽培して売り払う人が後を絶たない。
「これの生産はどうなってる?」
「今乾燥させているところだ。そんなに場所もないからな、少しずつ作業しなきゃいけない」
「もっとペースは早められないのか? 売る方はだいぶ手を広げられてるんだろ?」
「売るのは簡単だが作るのはそう容易くない。バレないようにやらなきゃいけないし、乾燥させるのだって手間なんだよ」
テシアの前で堂々と違法な植物についての話を交わしている。
なんとなく会話的にはニンクアの方が事業を主導しているように感じられる。
「メデニクスとの取引は?」
「そっちも進んでいる。向こうの薬も質がいいから売れるだろうな」
「ふふ、楽しみだな。このクソ女に燃やされた分稼がなきゃいけないからな」
ニンクアはテシアを忌々しそうに睨みつけた。
犯罪行為を潰されたことの復讐。
このままでは幸せになるどころか不幸のどん底に落とされてしまう。
テシアは出来るだけ匂いを嗅がないようにしながらどう脱出しようかと考えていたのであった。
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