始業式と炎の鳥

 僕は、クラス内ではいわゆるぼっちという立ち位置に居させてもらっている。というか、小学校からかなりの不登校だから、中学には小学校からの友達も居らず、偶然ネットゲームで知り合った奴が一人いるぐらいだ。


 基本的に、あまり言いたくはない過去のあの忌まわしい記憶のせいで、僕はコミュ障だし、知り合いとか友人とかをあんまり作りたくない。


 授業とかは、さっきも言ったネトゲ友達であり、リア友も兼ねる友田雄介ともだゆうすけに見せてもらっている。正直言って、友田以外学校の知人は僕にはいない。

 若干小太りな野郎しか友達がいないってのもなんだけれども、素直に友人と言える存在との交流をゲームという形で出来て、嬉しくないわけがない。僕の感情はプラマイゼロと相成った。


 中一で戦々恐々としながら行った始業式、閉式した後に教室に戻って書いた、自己紹介カードに書かれていた友田のゲーム内での名前に気づけなかったら、中高一貫のこの学校を六年間ずっとぼっちで過ごすことになる所だったかもしれない。


 というか、この不登校ぶりだと、高校まで上がれるとは思えない。小学校の時に人と触れ合うのが怖くて、学校に行かない分の時間を費やしてこの学校に受かったが、もちろんそれも時間つぶしのようなものだ。塾には通わず、親は勉強ならと教材を買ってくれて、その内だんだんと引き際が分からなくなり、がむしゃらに頑張っていたら受かってしまったのだ。


 何か目的があらず、それも場の雰囲気に流されてなんとなくやってきた奴が、出席日数うんぬんの話の前に、高校まで行っていいのかとは思っていた。


 嫌味に聞こえるかもしれないけど、中一の時に友田がいないゲームに楽しさをあまり感じなくなり、ひたすら暇つぶしに勉強をしていたら、かなり頭が良くなった。


 この頭の良さが役に立つときが果たしてくるのかどうかは別の話だが。


 高校に行くのも出席日数の関係で諦め、ただ惰性に任せてゲームと勉強に明け暮れる代わり映えのない日々を過ごしていた僕の日常を変えたのは、そう。中学二年の始業式。具体的にいうと今だった。


 春の暖かい日差しを感じながら歩く道は、普通なら幸せな眠気でも感じながら歩くのだろうが、僕には道行く人たちがただただ怖く感じる。

 そう感じてしまう自分に、未だに8年以上も前の事を忘れられないのかと僅かな苛立ちと諦念を抱きながら、早足に学校に向かって歩いていた。


 我が校(我がって言える程行ってない)は、中高一貫の癖に、駅から遠くその上バスが無い。そのため、毎朝登山用かと思うようなリュックを背負いながら登校するのだ。


 幸い、今日は始業式な為そんなに荷物は無いが、恐らく半月以上貯めに貯められていた手紙が全部来る。殆どはどうでもいいものなのだろうが、玉石混交とばかりに稀に大切な書類(親に行く物)などがあるから、非常に面倒くさい。


 中学生の徒歩で20分も掛かかって着いた学校は、割と何もない割には校舎が白く綺麗で目立つ、僕的にはあまり好きではないデザインの校舎があった。別に、好きなデザインの校舎はと聞かれればないと答えざるを得ないが。


 誰も手を付けず、埃を被っていた下駄箱と内履きを軽く箒で掃き、三階の新教室まで重い足取りで上がった。


「お、友田。いたんだ、お前」

「んだよ、てめえこそチョー久しぶりに会った気ぃすっけど?てかクラス同じってことはまたお前に授業の内容聞かせるって係になんのかよ。俺はなんだ?お前の走狗なのか?」

「あれ?僕とお前の間で少し認識の齟齬があるみたいだな」

「どんな?」

「僕、主人。お前、犬」

「言の葉だけじゃなくて肉体言語でも話し合おうぜ。拒否権ねぇから」

「基本的人権を尊重しよ?」

「一回黙ってろお前」


 僕を緊張させずに喋ってくれるやつなんて、本当に友田くらいなのだから、この縁は出来れば切らずに、僕がこの学校からいなくなるその時まで大切にしていきたい。


 とは言っても、ネッ友なのでもちろんゲームの話ばっかりしているだけだ。そうこうしているうちに時は過ぎ、担任が教室まで入ってきた。


 いつもの様にホームルームが開かれる中、何食わぬ顔で席に座り、少し俯いて陰キャ感丸出しな僕を担任はチラッと一瞥すると、そのまま始業式の説明などをすると教室から出て行った。

 一応、担任でもある為、僕の事情の大体は母親から聞き及んでいるんだろうけど、ほぼ毎日来ない癖には重要な日だけ来るような僕に思うものはあるのだろう。


 まあ、それがこの生活スタイルを変えるような理由になるかというと、ならないというわけで。

 殆ど会わない担任の言葉と、8年以上にも渡って僕を苦しめてきた記憶の重みは、比較にもならない程大きな差がある。


 そもそも担任から、それどころか生徒に向かって永遠とも思える長さで喋られるご高説を述べられる校長以外の先生から話しかけられた事も無い。なんかの爆弾だとでも思われているのかもしれないが、そんな事は無いはずなのだが。問題行動も、不登校以外は何もしていないというのに。


 一人、先生達から微妙に距離を置かれている事を気にしつつも、生徒を教室から体育館まで誘導するまるで牧羊犬のような先生の声が、自分に向けられている物なのかと思いつつ体育館の定位置について座り込んだ。

 丁度、都合の良いことに隣に友田が居たので、ちょっかいをかけてやる事にした。まだ一年生しか入場してないから、いじる時間はまだ余っている。


「…お前さ、何?ぼっちなの?寂しいの?取り合えず家に帰れ出来れば土に還りやがれ」

「ゲームで知り合った『伝説の金くれ』さん。そんな派手な名前をしていながら人付き合いが良くないなんてモテないゾ」

「俺、時々思うんだわ。お前ってさ、ぜってぇ障害なんもねぇだろ。お前の精神元気あり余り過ぎてる気ィすんだ。一周回って引きこもる意味が分からん」

「はははははいっひひひひひひ。まあ、あながち嘘でもないけど、親しき中にも礼儀ありだぞ。僕だって、それだけの傷が心にあるから不登校なんだよ」

「…何というか、すまん。久しぶりに見たお前がなんか普通に元気そうだったから、何となくムカついてさ」

「分かればよろしい。というかムカつくなよ」

「それは生物に糞をしないで生きていけと言っているのと同じぐらい過酷なことだな」


 友達ってのは、やっぱり友田が言う通りに持った方が人生が楽しくなったり、人生経験も豊富になるんだろうけどな。僕が怖いのは、人間関係のトラブルなんかじゃないんだよ。なんだよ。


「え~。では、これから前期始業式、開会式を始めます。開会の言葉、間宮まみやさん。お願いします」

「…はい」


 何かやたらと顔が暗く、頭髪が薄い先輩がステージに上がり、つらつらと慣例通りの開会の辞を述べると、背後に少し危険な気配を漂わせながら戻って行った。


「なあ、次は校長の話だぞ。僕は現在進行形で引きこもりだから体力持つか分からないんだが」

「お前典型的ながり勉かよ。ガリだし勉強暇つぶしにやってるから間違っていないし。ついでにひょろいのとネトゲつけてひょろがりネト勉友か」


 こいつ、僕に対するあだ名のセンス皆無すぎる。まさか、わざとなのか…?

 これは新手のいじめと言って良いのではないだろうか。センスなさすぎるあだ名で呼ばれまくるのは、小学生はともかく中学生は嫌だ。それ以前に、引きこもりだから言われることも滅多にないけど。


「おはようございます。桜の花が美しく咲き乱れる季節となりましたが、皆さん「死ねええええええ!」は?」


 凄ぇ。校長の話の途中に叫ぶのもアレだが、死ねぇなんて言えば確実に校長室には招待されるだろう。そこに痺れる憧れ…はしない。引きこもりだけど退学はしたくないので。

 ざわざわと辺りが騒々しくなって来て、先生達も叫んだ生徒の元に駆けつけようとし、校長はポカンとしている中、は現れた。


「燃えろ、燃えちまえ。全部灰にしろぉ!」


 生徒から放火魔へジョブチェンジしてるセリフが修飾している存在は、体育館の後ろの方に我が物顔で佇む、だった。


「あんな、体から火出せる鳥なんていたっけかな…こういう時は大先生に聞くか…って、お前どうした?そんな焦ってそうな顔して」

「いや焦ってんの。アレが集団幻覚?じゃ無かったらただの火の塊だろ?あんなの体育館の天井にちょっとでも触れりゃ、この体育館全焼するだろ」

「…ああ、そゆことか」

「体育館への愛着ねーな。流石引きこもり」

「ついでに言いますと学校への愛着もあんま無いです」

「ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった」


 確かに、あんな一体上から乗っかっただけで一瞬にして木造建築なら灰燼に変える事が出来そうなやつなら、この体育館もお手頃な時間で燃やせるだろう。


「てか、あんな奴どっから湧いて出て来た?うちの学校には魔導書とか鳥籠は無いはずなんだがなー」

「ーーーえ?無かったの?」

「ここをホグワーツだと勘違いしてるなお前」

「え?ホグワーツじゃ無かったの?」

「ダメだ…学校に興味すらねぇ」


 ともかく、あのデカ火鳥の正体だが、一つだけ心当たりがある。十三年以上会って来なかったから、まぁ会わないだろうと思っていたが、どうやら数少ない可能性を僕は引き当ててしまったようだ。


「夢中症候群じゃね?」


 夢中症候群。強い憧れや思いを抱いている夢が、何らかの形で現れたもの。そのものに、言うならば憑りつかれている人を、人はそう呼ぶ。


 別に、僕はあのドでかい火の鳥が生まれて、堂々と大量虐殺を企んだ経緯なんぞ別に知りたくもないわけなんだが、そろそろ動かないと死ぬんじゃないだろうか。

 教師の皆さんお願いします。今こそ道徳心が役に立つ時!


「!?間宮君!なぜ、君はここを燃やそうとするんだ!いったん落ち着いて、事情を話してごらん!君を傷つける人は一人もいないんだから!」

「…ハハッ。冗談キツイよ。早く燃やされて消えろ」


 ――――あ゛ぁああああああ


 あの人、さっきの開会式の人だったんだ。


 そう思い、瞬き一つした次の瞬間。思っていたよりも全然鳥っぽくない声と共に、鳥の口から火の玉が放たれた。鳥なのに、ブレスなんだ。なんで夢なら何でも出来たはずなのに竜にしなかったんだろ。

 まあ、他人の考え方なんて興味ないけど。


 じゅわぁあああああああああ、という音と共に白煙が立ち上り、その中から腰が抜けて座り込んでいる教師が見えた。

 その片手に握られている消火器から見るに、どうやら火球に真正面から消火器を吹きかけ、九死に一生を得たのだろう。

 あの先生、ただの数学の先生じゃなかったっけ…?


「あれ…?なんで、燃えて消えてない?邪魔だから消えろよ、早く」

「間宮君!これ以上度を越してしまえば、それはもう犯罪だ!学校では手に負えなくなる!やってしまった事は、全て自分に戻ってくるんだぞ!」

「ほぉ…いいこと言うじゃん。先生。やっぱ、やった事は全部自分の基に戻るのが道理だよねぇ!」


 今まで静止して動かなかった火の鳥が、初めて動きを見せた。しかし、最悪に近い方の動きを。

 首を下に向けると、間宮さんの周りの生徒に手当たり次第火球を吐きまくった。不幸中の幸いとでも言うべきか、僕ら中二の方には飛んできてないが、すぐ後ろの中三の方は文字通り火が付いたような騒ぎになった。


「おい、何処に居んだよぉ!飯沼いいぬま、鹿島、大島ァ!逃げんじゃねぇぞぉおお!」


 遂に大きすぎる力を得て、頭のタガでもぶっ飛んでしまったのか、間宮さんの意志の代行者である火の鳥は体育館中に火を放ち、もはや四面楚歌だ。やはり、人災って恐ろしい。悪意があるから。

 もう、この体育館の中にいる生徒も教師も関係なく運命共同体だ。全員が力を合わせて間宮さんを止めない限り、生き残れる確率はほぼあり得ない。


「てめぇらがしてきた事のよぉ、落とし前を付けさせてもらおうじゃねえか!」

「ごめんなざい!頭なら何度でも下げるし、俺の殆どをお前にやるから、命は!命だけは許してくれ!」

「俺もだ!後悔してるし、反省もするから!頼む!」

「お前が、多少バカみたいな力を手に入れた程度で調子に乗んな!お前は大人しく、俺らのオモチャになってりゃ良いんだよ!」

「ま、期待はしてなかったが、根はクズだよな、大島。じゃあ死ねよ」


 ――――ぎぃゃああああああああ


 火の鳥の最高に耳障りな絶叫と共に、この期に及んでこの場の絶対的強者である間宮さんを思いっきり下に見た発言を出来た、大島さんという勇者は、ラスボス間宮さんを前に敗れた。

 正しくは、喰われた。


「あづぃいいいいいいいい!やめろ゛ぉ!やめてくれぇ゛!!ぎゃあああああああああああ!」

「っハハハハハハハハハ!気持ちいい!気持ちィイイイイイナァアアアア!」


 体は全く燃えていないが、絶叫を上げながら踠く大島さんを前に狂笑が止まない。


「あぁ大島。お前がなんでずっと俺をいじめ続けてたのか分かったよ。こんな快楽、他じゃあ手に入らねぇよな」

「わ、分かってくれるんなら!」

「だからさ、よりお前らがバカに見えるわけよ。復讐も出来ないくらい僕の事をボコボコにしなかった、お前らが」

「それは!俺らにも一線があって、それは越さないようーーーギィいい?!」

「口だけはよく回るな。燃やされながら喰われて死ね」


 間宮さん、大島さんに念願の復讐を果たすのは良いんですけど、この体育館そう遠く無いうちに焼け落ちますよ?

 ついさっき、先生が決死の表情で電話をかけて、その後死んだ魚みたいな目になっていたから、ほぼ確実に消防車は間に合わないだろう。


「おい夢咲!俺らも早く逃げ始めた方がいいだろ。二年で冷静なの俺らくらいだが、同時に逃げ始めて無いのも俺らくらいだぜ?体育館が燃える心配はもう時すでに遅しだし、一周回って冷静になったが、動かないと流石に死ぬぞ?」

「確かに。でも、体力と根性ないから脱出出来っかねー?ま、燃えてるあの非難出口なんか、もう扉が燃え尽きてるから、そこに消火器二刀流して行けば何とかなるんじゃないか?」

「ようそんな事思いつきはんな」

「舐めんな戦略系ゲーマー(笑)を」

「自虐ネタで傷つくのは自分だけやで?」


 とりあえず、今次の瞬間を生き残る方針としては、消火器をかき集めて避難出口から出る事だ。

 しかしながら、体育館には大量の人間が大混乱して走り回ったり、座り込んだりしてる。この中から、果たして消火器を見つけられるかどうか…


「あった!消火器一個ゲッツ!お前は体育館の倉庫の中に一つあるから、それを取って来てくれ!その間俺は火を消す!」


 流石運動部(何気なく新情報。ちなみにバスケ部だ)。見つけ出せるか考えてる内に見つけやがった。これだから運動部はッ!(体育館普段使いしてるだけだから運動部関係ないですbyバスケ部の1人)


 さて、憎めない我が親友(友達1人なので)の言う通りに、僕は体育館倉庫の中にあると言う消火器を取りに行こうとするが、狂乱している生徒のせいで前に進めない。

 ええい!首を垂れてついでに退け愚民が!


 よっしゃ!ようやく体育館倉庫の前までたどり着いた。ここまで何人引き潰して殴って来ただろう・・・(流石にやってません)


「あちっ!?そういえば、金属製なのかこの取っ手…」


 今体育館が燃やされていて、そのせいで熱されている事に、僕はようやく気づいた。これじゃ、熱すぎて握る事もままならない。誰だよこの中に消火器置こうとか考えたやつ!


 どうしようかと途方に暮れて周りを見回すと、倉庫の隣に備え付けられているガラスケースの中に、僕の腕程の長さの柄を持つハンマーが収められていた。なんでハンマーなんて置いたんだよ。ハンマーじゃなくて消火器置けよ。


 しょうがないので火事場のバカ力的に湧き出ていた力でガラスを叩き割る、なんてことは出来なかったので、普通にボタンを長押ししてケースを開き、結構重かったハンマーを何とか担ぎ上げて扉をぶん殴った。


 べきべきべきべきべき


 僕は別にヴィヴァンのラスボスが出てきてほしいんじゃなくて、この扉の先にある消火器が欲しいだけなんだよっ!

 二度三度と再度ぶん殴りまくると、鉄製の取っ手がついに壊れ、人一人がギリギリ入れるぐらいの穴が開いた。しかし、人というのは中学二年生の平均的な体格を持っている者を指すので、僕は割かし余裕で出入りが出来そうだ。痩せやすい体質なので。


 中には、乱雑な感じで仕舞われている体育の道具が放り出されており、その奥に、赤く光る消火器が見えた。火を消すというのに真っ赤に光るというのは如何に。


 消火器の配色についてごちゃごちゃ言っていても何も進まないので、そのまま穴から出ようとした次の瞬間。


 僕がいる倉庫の入り口は、焼け落ちてしまった。


 あ、やばいなこれは多分と言うか絶対的に生き残れる気がしないというかこんな考えもフラグな気がしてきた僕ヤバい終わったか?!


 思考の混乱はともかく、僕は閉じ込められてしまった。どうやら、生存の可能性は一%に届くかどうかレベルっぽいが、生き残れるだろうか。

 このまま、酸素が尽きないという事を願ってここにいるのもアレだが、だからと言って出来ることがあるわけではない。消防も流石に呼んでいるだろうが、混乱ここに極まれりという現状を直ぐに打破し、消火活動までしてその上、「夢中症候群」までも殺さずに無事に確保しなければならないのだ。…夢中症候群?


 どっかで、対策組織を聞いたことがあるような?あ、警察の特殊部隊(?)の「夢喰い」だ。その噂は小耳にはさんだ程度だが、夢中症候群を殲滅できるような圧倒的力の持ち主たちで構成されている化け物集団という事は聞いている。


 だが、僕はなによりも自分の命が大事だから、化け物集団と言って周りが差別していても、僕は間違いなく縋らせてもらうだろう。

 と言う今までのノリで考えられるルートはただ一つ。

 無事だった携帯でホームページから電話かけるんだよ!

 それ以外あると思ったか!


 ぴろろろろろろーぴろろろろろー


 倉庫の扉がバチバチと焼け落ちていく音と、この携帯のコール音はすっごいミスマッチだなと思いながら、刻々と迫ってくる命の危機で妙に長く感じられる時間を過ごす事何分か。

 ようやく応答が来た


「こちら特務課・夢食いです。何がありましたか?」

「火の鳥みたいなのが現れて、体育館が丸ごと燃やされてます!マジで助けてください!僕は今体育倉庫に閉じ込められています!なるべく早めにお願いします!死んじゃうので!」

「分かりました。30分以内には到着するので安心して待っていてください」


 出て来たのは、低い声で人をどこか安心させるような力を持っている、予想イケおじだった。いやぁ、間に合ったら顔を拝み見たい。予想大当たりだったら写真撮っただけで千円以上で売ってやる。

 しかし、30とはどう言う事だ?ここから、僕だと貧弱すぎて比較対象にならないから友田で例えるけど、運動部の友田が走って30分以内のところにそんな変な事務所なんかは無かったはずだ。


 おかしいなと思っていると、目の前にあった設置型のバスケットボールコートが天井にやたら大きな破砕音を立てながら押し壊された。


 どうやら僕の命運は、後30分以内に何も起こらないと言うことにかかっているらしい。

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