第7話

放課後、人目につかない路地裏で膝を抱え込んでる君が居た。

声も出せず、流れるのは塩っけのある水だけ。

「…大丈夫?」

「だれ…?」

私の顔を見るなり、君は少し驚き、怯えた表情になった。

「なに…バカにでもしに来たの…?」

違う、そんなのじゃない…

私はそんなふうに見られていたのか。

「…私、いじめてた?」

「えっ…」

驚いたのち、君は少し息を整え、話し出す。

「私の事嫌いじゃなかったの…気に食わなかったんじゃないの?」

そんなこと一度も思ってない。ただ君に振り向いて欲しくて…

ずっとエゴだったのか。

ならもういい、元から無かったなら無くなるものもない。

「…ずっと好きだった、山口さんのこと」

「…ごめん…今私よく分かんない、ごめん」

「…そっか」

君はゆっくり立ち上がり、少しよろけながらも帰路を進む。



雨も降っていないのに、傘を差したくなった。

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