第13話 going' against your mind/built to spill

ビルスピが大好きだ。非常に音響的な効果を意識した、ひしゃげながらもストレートなロックソング。

先史的なフォーマットに近未来的なアイデアが相反せず共存してお互いを拡張する。

こういう先に、ロック全体の進化があるんじゃないか?

だから凄く「耳」「脳」「全身」てプロセスを体感出来る名曲をたくさん残している。

なかでも一聴して地味なgoing' against your mindはその真骨頂であり、人の一生を8分に纏めて見せてくれる様な、得難い体験をさせてくれる。

アルバムyou in reverseの冒頭を飾ってるんだけど、このアルバムの輸入盤に歌詞は記載されていない。だから、やたら呟き繰り返されるタイトルしか僕には聴き取れない。

だけど、ちょっとふらついたドラムビートで始まり執拗とも言えるくらい繰り返される前奏、やっと始まる歌からまた長いイントロダクションの間に消えるドラム。そしてまた不安定に脈打ち出すビートに被さる二番の歌。そのまま激しくなってぷつん、と切れる。

一貫して強調される音、抜ける音、消えて尚存在する音、それらはオーヴァーダヴのギターの位相単体でも表現されているけど、イントロでいきなり顔出すあらぬギターとベースのユニゾンとか、ドラムのフロア打ちとか、もう、普通やらないから脳髄に来るやつと、ドストレートなやつがぐちゃぐちゃに波状攻撃を仕掛けてくる。

中盤のドラムの消え方がアレで、この静けさは永遠にも感じ、そこに優しい歌声に先導されてしれっと戻って来るドラム。

しかし、うたはひとくさりだけ、狂おしい喧騒にシンバルで加担しながら今度は消え入りそうに続くドラム、それからまた長いイントロダクションは二番の歌を迎えに一体になってボルテージを上げる。

あのギターとベースのユニゾンは、二度と来ない。

いつもこの「音による文学、もしくは映画」のなか主人公になる僕は、今どこにいるのか探す。

あなたも探してごらんよ。

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