第8話
「た、魂ですか!? でも、確かにそう考えるとセンカ様が闇魔法ではなく、水操作魔法であることに納得が—――」
ステラは顎に手を当てて、ぶつぶつと思考を巡らす。
紡がれるその独り言は、ボクがセンカではないと理解ができているように聞こえた。
自分でも思うけど、なに言ってるかワケ分からないよねー。
魂とか高次元すぎて想像できないよー。
というか、ステラ驚きからの受け入れる順応性高すぎ早すぎー。
ボクだったら、白目剝いちゃうよ。
と、自分にはできないことをやってのけるステラに、感心の眼差しを向ける。
まっ、だけどこれで、ステラに酷いことしてきたセンカじゃなくて、前世の記憶を持ったボクだと認めてもらえるかな?
「ステラどうかな? これでボクがセンカじゃなくて、地球から転生してきた花屋の少年だってわかってくれたかな?」
「いえ、ですから先ほども—――」
言葉の途中、ステラは突然硬直した。
訴えるようなその顔と硬直する姿が不思議で、ボクは小首を傾げて疑問を口にする。
「ん? どうしたの? ステラ」
すると、突然—――
「い、いえ~なんでもありません! そうですよねー! 今、私の目の前にいるセンカ様は以前のセンカ様ではなく、転生してきた優しいセンカ様ですよねー!」
苦笑いを浮かべながら、取り繕うステラ。
「もう~やっとわかってくれた~?」
「あは、あはははっ……はい。……それでセンカ様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
苦笑いをやめて、ステラは真剣な顔つきになる。
「うん、いいよ。何でも聞いて」
「ありがとうございます。魔法と魂の関係性について理解できましたが—――センカ様は魂の入れ替わりと消失、どちらだと考えているのですか?」
ステラの当然の疑問に、ボクは「あー……」と思考の時間稼ぎをしてから、自分の考えを率直に話す。
「うーん、そうだね……ボクは消失したと思ってるんだよ」
「……!! それは……どうして、ですか……?」
「まぁ単純にというかボクの経験上、地球から異世界に来ることはできても、異世界から地球に来るなんてことは見たことも聞いたこともないからね」
ボクの知ってる中で、どのゲームもラノベもそんな感じだった。
地球で何かしらの不慮の事故に合い、死ぬ間際に見る走馬灯から自身の空虚な人生を振り返る。
そして、願う。
来世は前世で叶えられなかったこと全部叶えてやろうと。
好き勝手に生きて自由を謳歌する人生を歩んでやろうと……切実に。
そしたら、あっという間に異世界転生の出来上がりってな感じ。逆バージョンは見たことがない。
単純にボクが知らないだけかもしれないけど、この世界においても多分、同じだと思うな。
「そ、そうですか……。ですが私は……まだ生きているような気がして、その……不安、です……」
ステラはアネモネを胸の前に抱きしめながら、そう呟いた。
「ステラ……」
確かにセンカが消失してるとは思ってるけど、それは確定していない。
入れ替わっている可能性も当然考えられる。
だけど—――
「ステラ、大丈夫だよ……」
「センカ様……」
その華奢な肩に両手を置くと、うるうるとした不安げな瞳にボクが映る。
しかし、不安はすぐに無くなることになる。
—――今からボクが、あることを言ったことによって。
「もし入れ替わったとしても、地球にいるボクの母さんは—――」
ステラの耳元に顔を寄せる。
「………めっちゃ、おっかないから」
〜あとがき〜
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