眼鏡越しの真実【KAC20248】
藤澤勇樹
第1話 静寂の中の異変
小さな町、杉並村に春の訪れを告げる陽光が差し込んでいた。
桜の花びらが舞い散る中、いつもと変わらない平和な日常が広がっているように見えた。
しかし、その平穏の裏に潜む違和感を感じ取ったのは、地元紙の記者、早瀬拓也だった。
早瀬は28歳。好奇心旺盛で正義感の強い性格で、記者としてのバイタリティに溢れている。
彼は町で起きた些細な出来事の裏に隠された真実を追い求めることに情熱を注いでいた。
「また、あの男だ…」
早瀬が目を凝らすと、町の広場に1人の男の姿があった。
男は黒縁の眼鏡をかけ、長い黒髪を風になびかせながら、ゆっくりと歩いていた。
その姿はどこか神秘的で、周囲の人々は彼に視線を送りながらも、直視することを避けているようだった。
早瀬は思わず足を止め、眼鏡男を観察した。
男の正体は分からないが、彼が町に現れてから何かが変わったのは確かだった。
早瀬の記者としての勘が、眼鏡男の存在に重大な意味があることを告げていた。
◇◇◇
眼鏡男が杉並村に現れてから数日が経過した。
当初は彼の存在に興味を示していた町の人々も、次第に彼を避けるようになっていった。
それと同時に、町では不可解な事件が相次いで発生し始めた。
「また、誰かが行方不明になったらしい…」
「夜中に奇妙な音が聞こえたっていう話もあるよ」
町の人々の間に不安と恐怖が広がる中、早瀬は事件の調査に乗り出した。
彼は事件の詳細を知るために、行方不明になった人物の家族や友人に話を聞いた。
「息子は夜中に外出したきり、帰ってこないんです…」
行方不明者の母親は涙を浮かべながら話した。
早瀬は母親を前に、力強く言葉をかける。
「必ず、息子さんを見つけ出しますから。諦めないでください」
調査を進める中で、早瀬は事件の裏に潜む不穏な空気を感じ取っていた。
真相を解明するためには、眼鏡男の存在が鍵を握っているのではないかと直感した。
◇◇◇
早瀬が町を歩いていると、ふと視界の隅に見覚えのある姿を捉えた。
黒縁の眼鏡に黒髪、それは紛れもなく例の眼鏡男だった。
「すみません、ちょっとお話できませんか?」
思わず声をかける早瀬。
眼鏡男は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「私に何か用ですか?」
低く響く声に、早瀬は一瞬、眼鏡の奥の瞳に引き込まれそうになった。
「あなたが町に来てから、不可解な事件が起きているんです。何か知っていることがあれば教えてください」
食い下がる早瀬に、眼鏡男は小さく微笑んだ。
「君には、真実を知る資格があるのかな?」
そう言い残すと、眼鏡男は再び歩き出した。
早瀬が追いかけようとした時、突然、目の前の景色が歪み始めた。
「な、なんだ…これは…!?」
激しい眩暈に襲われ、早瀬は地面に膝をつく。
意識が遠のく中で、眼鏡男の言葉が脳裏に響いた。
「真実を知りたければ、私を追ってきなさい」
早瀬は奇妙な現象に巻き込まれながらも、眼鏡男の真意を知ろうとする決意を胸に秘めたのだった。
(続く)
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