助けなかった車の事故が黒歴史
逢坂 純(おうさかあつし)
小学生の時遭遇した車の事故が黒歴史
何故、あんなことしてしまったんだろう。そう思うことが多かった半生半ばの人生でした。
それは人の命を左右するような出来事もありました。
あれは、僕は小学校中学年の頃のことだったような気がします。それは明け方のことでした。僕が自分の部屋で寝ていると、突然、つんざくような車のクラクションの音が鳴り響いてきました。僕はその音に反応し、何を考えるでもなく起き上がり、階段を下りて、玄関に出て、それでサンダルを引っかけて外に出ました。夏の早朝で、すでに辺りは朝の兆しが見えて明るくなっていました。僕が外へ出ると、家の前の電柱に車がぶつかって、前の車体がひしゃけていました。そして、クラクションがずっと鳴り響いていました。周りには誰も人はいませんでした。
本来ならば、事故した車の乗員を助けなければいけなかったのでしょう。が、僕はそのまま何事もなかったかのように、家の中に入り、再び寝てしまったのです。そう、何もなかったかのように……。
2,3時間後に起きた時には、もう車はありませんでした。リビングでいつものように、いつもと変わらず朝食を食べていると、母が僕に言いました。
「今日、うちの前で車の事故があり、お隣さんが救急に連絡して、車の運転手は一命を取り留めたんだって」と。
あれは、事故だったのか……、僕はその時、初めてあの朝の出来事を理解しました。それまでは、あれが何だったのか、分からずにいたのです。率直に助かって良かった、そう思いました。だけども、僕はあの時、電柱にぶつかった車を見ても、何も感じず、その場を去りました。そうしても子どもだから許されるのでしょうか?僕があの時、連絡しなくても、実際はお隣さんが救急車を呼んでくれたから、車の乗員は助かったのでしょう。だけれども、もしかしたら死んでいたかも……。
そう思うと、僕はあの時、恐らく第一発見者だったろう自分が、救急車を呼ばなかったことが、とんでもないことを招きはしなかったかと、今でも嫌な記憶として心の中に残っています。
嫌な自分が今もいつ顔を出さんとしているかと思うと、そんな自分が嫌になります。
僕の封印したい黒歴史です。
助けなかった車の事故が黒歴史 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808
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