【新】僕のシンガポール戦記。※改稿版
崔 梨遙(再)
第1話 公園の惨劇。
40年くらい前のお話。
僕は、3歳半くらいから4歳くらいまで、1年半ほど、当時の父の仕事の都合によりシンガポールで暮らしていた。記憶が無くても不思議ではない幼い頃の話だが、ショッキングだったことなど、ハッキリおぼえていることが多い。それだけ、外国での生活は強烈な印象だったのだろう。
まずは、公園での出来事から。
街に、普通の児童公園があった。ただ、多民族国家だったので、遊ぶ子供達は多様だった。日本人、中国人、インド人、アラビア人等々。僕はその日、兄と姉と3人で、その公園に来ていた。
僕は何もせずにボーッとしていた。当時、僕は1人でいるのが好きだった。空想癖があったのだろうか? 僕は1人でいる時、空想の世界で、正義の味方にでも何にでもなることが出来た。その日も、僕は空想の中で正義の味方だった。
その時、僕はシーソーに座っていた。反対側には誰も乗っていなかった。1人シーソーだった。そこへ、兄(小学5~6年生)くらいの男の子が近寄って来た。彼は僕に話しかけた。
「ジャパニーズ?」
「イエス。チャイニーズ?」
「イエス」
すると、中国人の彼は、歩き去った。なんか変な感じだ。僕は彼の後ろ姿をずっと見ていた。だいぶん歩いてから回れ右してこちらを向いた。
「なんや?なんなん?」
彼は全速力でこちらへ走ってきて跳躍……シーソーの僕の反対側に、
ドーン!
と思い切り強く跳び乗った。その時、僕はシーソーの手すりを持っていなかった!
シーソーの僕の側が
バーン!
と跳ね上がった。跳ね上げられた僕は、文字通り宙を舞った。僕はその時、“うわ!漫画みたい!”と思ったのをおぼえている。そして、そのまま隣の砂場に頭から突っ込んだ。僕くらいの小さな子達が作っていた砂のお城に刺さるように突っ込んだのだ。“これも漫画みたいや……”と思った。
だが、頭から突っ込んだ僕は目眩と吐き気に襲われた。意識朦朧というと大袈裟に聞こえるかもしれないが、頭がフラフラして目がチカチカした。頭痛がした。
そこへ兄と姉が駆けつけた。僕は、兄に、
「仇を討ってくれ」
と言ったが、兄と姉は僕を家まで運んで帰った。兄は仇を討ってくれなかった。僕は少しガッカリした。その時、中国人の彼は笑っていた。あの何とも言えない異様な笑顔は忘れられない。
後日、体調が回復した僕は、バットを持ってリベンジのために公園に行ったが、あの中国人の彼は2度と現れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます