《夢の終わり》

 長い夢を見ていた。

 走馬灯というやつかもしれない。

 まだ死んでいないけれど。



「……そんなことも、あったなあ……」



 懐かしい思い出は昨日のように覚えている。


 在りし日、もう届かない日々。

 リリィにマリー、プロテアや姉上。

 他にも色んな人たちと過ごした日々。


 しかし、戻れないんだと嘆いていたって、何も始まらない。


 手足に巻き付く薔薇。

 血のように真っ赤に染まった花弁が、辺りに舞っている。

 本当に、どこからどう見ても魔王ラスボスの風格だ。


 今思えば、リリィがあの時『ある意味、悪役令嬢だ』と言っていたのはこういうことなのだろう。

 言葉通り、『悪役を演じる令嬢』。倒されるべき巨悪。


 そして、彼らは勇者。

 魔王を倒す、勇気ある者たち。


 これは避けられない運命。

 彼らが、ローズを殺し、世界を平和に導くという。


 魔王が生きていれば、世界は平和になんてならない。

 

 だから、俺は決めたんだ。

 彼ら彼女らが幸せになるならば、断頭台にだって立ってやる。

 悪役を羽織って立ってみせる。

 喩え、皆が望んでいなかろうと。



「……行こうか、ファヴニール」



 背後にいた金色の竜は、咆哮する。

 それはまるで、旅立ちのファンファーレのようだった。

 


「……俺達の使命を果たそう。そして────」



 この狂った夢の世界をねむりひめを終わらせるんだめざめさせるんだ






 これより始まりますは、『邪竜と茨の魔王を打ち取りし勇者たちの物語』その最終章。さあさあご照覧あれ。


 幸福な結末ハッピーエンドは直ぐそこに!

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