第三話
ラテリーたちが引っ越しをしてから三日が経った。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
昼食を済ませユーラフとアンデルシアに見送られ、ラテリーは仕事を探しにギルドに出かける。
グリュンは昨晩からギルドの要請で外出してから帰ってきていない。
「さて、洗濯でもしようかな」
「てつだう」
「ありがとう、アン」
ユーラフは着ている服の袖をめくり洗濯をするため水場に向かい、オーバーオールを着たアンデルシアも後を追う。
一時間かけて洗濯を済ませたユーラフはリビングで紅茶を飲んでくつろいでいた。
「ユーラフ」
「どうしたの?」
本を抱えたアンデルシアがユーラフの前にやってくる。
「どうして、グリとユーラフはアンデルシアをアンってよぶの?」
「それは愛称っていうのよ」
「あいしょう?」
「そう、アンデルシアともっと仲良くなりたくてアンと呼ぶのよ。ラテリーがグリュンをグリって呼ぶのと一緒なの」
「なら、ラテリーはわたしとユーラフとはなかよくしたくないの?」
「それはちょっと違うかな、私をユーラフって言うのはまだラテリーと私の距離感がつかめていないだけ、でも仲が悪いわけじゃないのよそれに私の名前事態愛称をつけづらいっていうのもあるしね。アンに関してはラテリーの中で色々考えることがあってまだ整理がついていないだけなのよ、アンの事を嫌いなわけじゃないから気にしないでね」
「ユーラフのおはなしは、むずかしい」
ユーラフは困った表情をしているアンデルシアの頭を優しくなでる。
「そのうち、わかるようになるわ」
「わかった」
アンデルシアはユーラフの横に座り本を読み始める。
本は絵本で簡単な文字と絵がバランスよく書かれており、アンデルシアが言葉を覚えるのに役に経っていた。
この本はグリュンが引っ越しした次の日にアンデルシアにプレゼントしたものでアンデルシアのお気に入りでもあった。
ユーラフ達が家でくつろいでる頃、ギルドではちょっとした騒ぎが起こっていた。
全種連合の第三兵団が魔獣と大規模戦闘を行い、負傷した兵士数十人が傭兵として雇われた守護者の手によってギルドに運ばれてきており、昨晩から数人のプリースト達による治療が行われていた。
グリュンはプリーストとしてその中におり、昨晩から休みなしに治療魔法を唱え続けていた。
ギルド運営者のアイビーや他の職員もギルドの正規業務と並行して手伝っており、ギルドの受付には行列ができていた。
ギルド長で元プリーストのイグラスは、運ばれてきた負傷兵の状態を見て4つに分類しており、その内訳は、無詠唱、短詠唱、長詠唱、治療不可となっており、グリュンは昨晩は長詠唱に配置され魔力が尽き始めた今は無詠唱の方に配置換えをしている。
「グリ大丈夫か?」
戦の話を市壁の門番に聞いたラテリーがギルドを訪れグリを見つけ声をかける。
「ラテリー。なんとか大丈夫だけど。戦闘が続いてるらしくて、次から次へと負傷した兵士が運ばれてくるんだ」
大丈夫だといいつつも疲れた表情を浮かべている、昨晩から働いているグリュンを気遣い、ラテリーは魔力回復薬とガイガーで食事を買ってきておりグリュンに手渡す。
「ありがとう」
食事を摂っている時間がないのか、グリュンは回復薬だけ一気に飲み干し、すぐに治療を始める。
信仰している神に祈り、手の平から現れた柔らかい光が負傷した兵士の傷を塞いでいく。
「すまないな坊主」
傷の治療を終えた兵士はギルドを出ていく、この兵士は全種連合の兵士ですぐに戦場に戻らないといけない、治療魔法で傷は癒えても破損した衣類や防具は直らないのでグリュンは心配そうに兵士を見送る。
そしてすぐに次の兵士の治療を始める。
「転移魔法で戦場を行き来しているのか?」
「そうみたい。転移魔法の魔法陣は、ギルドの横の広場に描かれているよ」
「わかった」
ラテリーはグリュンの頭をなでてから、ギルドを後にし広場に向かう。
広場に書かれた転移の魔法陣は五つあり、魔法陣のそばには、全種連合の紋章が入ったローブを着たラミアとゴブリンの魔法使いが6人待機している。
「すまない、転移先に行きたいのだが」
一番手前の魔法陣の横にいラミアに話しかける。
「戦いにいかれるのですか?」
「そうだ」
「わかりました。今この魔法陣はあちらからの転移待ちなので、少々お待ちください」
「わかった。助かる」
転移できるまでどれくらいかかるかわからないが、気を落ち着かせるためにラテリーは地面に腰をおろし静かに待つ。
数分後、負傷した兵士を抱えたオーク三人と杖を持ったゴブリン1名が転移してきて、オーク達はギルドに向かっていく。
魔法陣から出たゴブリンは、魔法回復薬を鞄から取り出し飲み始める。
「お待たせしました」
ラミアと共に魔法陣に乗り、すぐに転移が始まり。
一瞬で違う景色が視界に広がる。
最初に目にしたのは、負傷した兵士とそれを抱えるオークやゴーレム達、そして指揮官がいるであろう全種連合の紋章が入ったテントだった。
ラテリーはテントを守る兵士を押しのけ中に入る。
テント内にはテーブルを囲むように高価そうな鎧を着た者が数人おり、そのテーブルの上には戦場の地形図や兵や敵を模したオブジェクトが置かれている。
「誰だね君は?」
「俺はラテリー・ロンド。ヘイレンのギルドからやってきた上級守護者だ。戦況を変えるためにやってきた、魔人はどこにいる?」
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