第1話 ②
考えがまとまらないまま俺はグリ達のいるダイニングに向かう、テーブルには料理が並べられておりグリと魔族は食事を始めている。
使った調理器具を洗っているユーラフの横に行き、洗われた食器を乾いた布で拭き定位置に置いていく。
「ラテリー。冷める前に食べたら?」
ユーラフは手を止めず俺に食事を進めてくるが。
「一緒に食おう」
と、声をかける。
食事を作ってもらって一人だけ遅れて食べてもらうのは気が引ける。
それに対しユーラフは。
「うん」
と、返答し片づけを続ける。
そんなに量も無いので片付けはすぐに終わりユーラフと共に席に着く、そして腰の袋から1レルク取り出しユーラフに手渡す。
「いつもありがとうな」
俺達のルールで家事をやってくれた者に1レルク渡すことになっている。
「うん」
グリとグリの前に魔族、その横に俺、俺の向かいにユーラフが座っている。
空席が無く、四人で座るとこんな感じなんだなと横でもくもくと食事をしている魔族をみながら思った。
「ユーラフとグリ、引っ越しを考えているんだが、二人の意見を聞きたい」
食べながらで良かったのだが、二人とも手を止め俺を見る。
「そうね。この家じゃこの子を外に出すわけにはいかないものね」
「俺の結界も一週間持つかわからないよ」
「どこかにいい物件があればいいんだが」
スープをひと匙分口に入れる、相変わらずユーラフの作る料理は美味い。
「市壁外の森に空き家があったはず」
「あった! けっこういい家だったよ」
その空き家が誰が所有なのかわからないが、一度見に行ってみるか。
「その空き家、一度見に行ってみる。よさそうならギルドに所有者を調べてもらって引っ越しをしよう」
「ええ。いいと思うわ。市壁からそんなに離れていないし、周りに住んでいる人もいないし」
「よし。決まりだな、明日の朝一で行ってくる」
「お願いね。私はこの子の服を買いに行ってくるわ」
そうだな、俺もぼろぼろの布切れ一枚をまとった恰好は可哀想だと思う。
10レルク取り出しユーラフに渡す、安い服なら二着は買えるはず。
「俺も出すよ!」
グリも10レルク取り出し手渡す。
「私も10レルクだして全部で30レルクね。そこそこいい服が買えそうね」
話し合いも終わり俺とユーラフで食器を片付け始める。
「俺は、グリュン・エルゴ。君の名前は?」
グリが魔族に自己紹介をしているが、たどたどしい言葉づかいで魔族は名前が無いと言った。
食器の片づけを終え、白い皿を一枚持ちグリと魔族と共にリビングへと移動する。
ユーラフが紅茶を入れてくれているので、俺はリビングにあるチェストの中からチーズとクッキーを取り出し皿に乗せ、ソファーに囲まれた丸いテーブルに置く、ティーカップとポットを木のトレイに乗せてユーラフがリビングに入ってくる。
ポットを受け取り、置かれたティーカップに注いでいきその時にいい匂いがする。
魔族がテーブルの縁から顔を覗かせ見ている。
「紅茶が気になるのか?」
視線をティーカップからそらさずに、小さくうなずく。
「熱いからゆっくり飲めよ」
ティーカップを魔族の前に置くとゆっくりとカップを持ち口に入れる。
特に表情は変わらないがゆっくりと紅茶と飲み続けている。
空になったカップを俺に差し出してくる。
「飲むか?」
魔族は小さくうなずく。
差し出されたカップに紅茶を注ぐとさっきと同じようにゆっくりと飲み始める、どうやら気にったらしい。
挿絵1
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます