第1話ー①

 「ユーラフ。何か作ってくれないか?」


 俺はユーラフに食事を作ってもらうよう声をかけ、目を覚ました魔族に食事を与えることにする。

生物の魔力を吸収する魔族が調理されたものを食べるのかはわからないが、かなり弱っているのはわかる。


「わかったわ」


 ユーラフが魔族を抱えて立たせてから手をつないで部屋からでて行き、それに続いてグリも部屋をでて行き一階に降りていく。

 俺も部屋をでてドアを締めようとノブに手をかける、部屋の中に残った魔族の強い魔力を感じて、今は敵意を感じないが子供だからといって油断はできない、しばらくは警戒しながら様子を見るしかないと思った。

 

 気づけば強く拳を握っていた。


 捨てられた魔族と同じ境遇のユーラフに気を使ったが、正直俺の家族や友人を殺した魔族に対しては憎しみしかない。


 だが魔族にとっても魔族を殺している俺は憎しみの対象のはずであり同じことを思われてもしかたない、かといって簡単に割り切れる事でもないがこれを期に魔族への考え方を改めるいい機会なのかもしれない。


 殺しあわなくてもいいならそれに越したことはない、俺の知らない奴が死ぬぶんにはなんとも思わないが、俺が大切思っている人の死ぬリスクが下がることはいい事だ。


 魔族については知らないが同じ風に考えてくれるならいいなと思う。


 ドアを閉め下に降りるとユーラフはダイニング内のキッチンで調理をはじめていて、グリと魔族はテーブルに付き、グリが話しかけているが魔族は頷いたりするだけで会話が成り立っていなかった、もしかして人類語は理解できるが、しゃべることができないのか。


挿絵1

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093074583228953


 まあ、それでも仲良くしようとすることはいいことだ、俺は一階にある自室に戻り肩と腰につけているブロンズアーマーを外し防具立てにかける。


 窓から外をみるとグリの張った結界と、その先にある隣の拠点の結界が見える。

 

 襲撃に備えて結界を張るのが珍しい事じゃなく日常的な事なのが助かる。


 だが、あの魔族をかくまいながらこの家で生活するのは難しいな、結界も一週間程で効力を失ってしまうし今回と同規模の結界を毎回張るわけにもいかないだろう、結界に使った石の金もグリの負担も小さくはない、そうなると引っ越しをするしかないが、周りに人がいなくて4人で住める物件が必要だ。


 この街ヘイレンにそんな物件あったかな、ユーラフに相談しようと思ったが俺よりこの街にいる期間が短いユーラフに聞いても仕方ない、グリの方が知ってそうだが空き家があるかどうか気にしながら街で過ごしてる可能性は低いだろう、後で街に出かけるたびに空き家を気にしてくれと言ってもいいが、みつかるまで時間がかかりそうだ、それなら素直にギルドの運営に聞くか探してもらった方が早いか。

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